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新型インフルエンザAの現況その17 [新型インフルエンザA]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日も新型インフルエンザ関連の話です。

ニュースが今日は見付からなくて、
はっきりしないのですが、
2万人の医療従事者に、
新型インフルエンザワクチンの、
接種後の副反応調査を行なう、
との報道がありました。

これはおそらく、行政も新型インフルエンザワクチンが、
国産のものでも従来の季節性のワクチンより、
副反応が強いことを認識しているからで、
一番文句を言わない従順な羊の群れである、
医療従事者を実験台として、
その副反応を検証し、
「もしヤバそうなら早期に撤退する」ための、
伏線として利用しているのではないかと思われます。

海外では医療従事者が新型ワクチンの接種に反対したり、
自分は打ちたくないと抵抗したりしている、
という報道がありますが、
これはおそらく、新型ワクチンの実験台になることに、
権利意識の強い人達が、反発しているためではないか、
と僕には思えます。

2万人という数字には結構意味合いがあって、
1976年の豚インフルエンザワクチンの時、
ギラン・バレー症候群の生じた比率が、
概ね1万人に1人だったのです。
要するに過去の事例でも、
ワクチンの重篤な副反応は、
数千人から1万人に1人程度で発症しており、
それが自然の発生率より明らかに高率であれば、
そのワクチンは接種するべきではない、
という結論になるのです。

これが、決して臨床試験では、
ワクチンの副反応を予測することは出来ない所以です。
数百人レベルの試験では、
重篤な副反応は把握出来ないのです。

おそらく26日頃から、渋谷区でも、
国産新型インフルエンザワクチンの接種が開始されそうです。
ニュースでは今日から開始とのことですが、
現時点でそうした連絡は全くありません。

当面診療所では、副反応の対応を慎重に考え、
打った後も30分は経過を観察することと、
エピネフリン(商品名ボスミン)とステロイド剤は、
すぐに使用出来るように準備の上、
接種を行なう予定にしています。
これは接種後のショックに対応するためです。

本来は副反応情報を、
些細なものでも迅速に提供して欲しいものです。
今回の新型インフルエンザワクチンは、
診療所を始めとする、末端の医療機関で主に接種されるのですから、
僕達の手元に一番初めに情報が届いてしかるべきです。
しかし、現実には臨床試験の中間報告も、
マスメディアの情報を見るしか手がないのが、
現実の姿です。
末端の医療機関を都合の良い実験台か、
道具のようにしか感じていない、
行政と一部の専門家には、
本当にはらわたの煮えくり返る思いです。

また、新型ワクチンは10mlバイアルという、
非常に使い難いサイズのものが、
多く含まれている点にも腹が立ちます。

通常の季節性インフルエンザワクチンは、
1mlのバイアルに入っています。
1回の接種の量は大人で0.5mlですから、
大人の2回分が1セットになっていることになります。
ただ、実際にはバイアルに針を刺して、
注射液を注射器に吸い取る作業が必要になるため、
その場合にどうしても、
若干の注射液のロスが生じます。
そのため、注射液の用量は、
予め少し多めに設定されています。
要するに1mlのバイアルには、1.2ml程度の注射液が入っていて、
その余分で、ロスを調整するようになっているのです。

ところが、10mlのバイアルには、きっかり10mlしか入っていません。
このバイアルがなんと20人分ですから、
20回の針の抜き刺しをして、
その薬液を吸う作業が必要となるのに、
そのロスは計算されていないのです。
何故こんな、実地の医療機関に煩わしさだけを、
押し付けるようなことをしたのでしょうか?

その理由には呆れてしまいます。

仮に100mlの注射液があるとしましょう。
これを従来のように1mlのアンプルに小分けすれば、
1本に1.2mlの薬液が必要となります。
従って、83本しか造ることが出来ず、
その用量は166人分となります。
しかし、これを10mlのアンプルに詰めて、
余分を入れなければ、
きっかり200人分のワクチンが出来ることになるのです。

皆さんも以前の報道で、
国産のワクチンの量が数百万人分、
上方修正された、との報告を読まれた方があるかと思います。
行政やワクチン会社が頑張って、
ワクチンの数を増やしたのだ、と思われた方もいるかと思います。

そんなことは嘘っぱちなのです。

数百万人分のワクチンが、魔法のように現われたのは、
上に挙げた数字のマジックによるものです。
1mlのアンプルを、10mlのアンプルに変えたので、
見掛け上人数が増えたのです。

でも、これは実際には絵に描いた餅なのです。
実際にワクチンを注射器に吸うのは、
僕や診療所の看護師だからです。
1本吸えば、必ずロスが出ます。
従って、10mlのアンプルから、
20人分のワクチンを吸うことは不可能なのです。
しかし、ワクチンの値段は10mlが1mlの10倍で、
それだけロスの分は診療所が損をするからくりになっています。

これはちょっとあまりに酷くはないですか?

酷いですよね。

これが専門家の会議で、
ワクチンの量を上方修正するための方法として、
議論された結果なのです。
誰とは言いませんが、提案した偉い先生の名前も、
議事録にはしっかり残っています。

こんな馬鹿な議論が必要でしょうか?

こうした議論をした先生は、
僕はウイルスの研究などしているより、
お菓子メーカーで、ポッキーの用量と、
その利益率の研究でもして頂いた方が、
よっぽど適任ではないか、という気がします。

それとも、微量のロスもなく、
10mlのアンプルから20人分のワクチンを吸い取る、
「神の手」をお持ちなのでしたら、
是非診療所でも実演をして頂きたいと思います。

以上、しっちゃかめっちゃかの新型インフルエンザの現場から、
ちょっと脱力しつつお送りしました。

本当に誰か何とかして下さい。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 4

けろきち

 『厚生労働省は15日までに、新型インフルエンザの国産ワクチン接種を19日から最優先で受ける医療従事者を対象に、副作用の発生頻度などを調べる方針を固めた。』というニュースを、私はm3.comで読みました。20mlアンプルのお話は初めて知りました。
 今回の新型インフルエンザでの厚労省の対応は、ひどいことばかりですよね。何事も決定が遅いですし・・・(あっ、それはいつものコトか)。
 ワクチンを1回接種にするか2回にするかも、いろいろな情報が飛び交い、よくわかりません。
 おそらく、医療現場を支えている皆さんが困惑していらっしゃるのでしょうね。
by けろきち (2009-10-19 09:08) 

fujiki

けろきちさんへ
コメントありがとうございます。
僕は今回のデータを見る限りは、
当初のプラン通り、2回接種を原則とするべきだと思います。
開始の前日に添付文書を書き換える決定をするなど、
今回のドタバタはあまりに酷過ぎます。
by fujiki (2009-10-19 13:22) 

popo

現在予定されている優先的なワクチン接種者だけではなく、小さな乳幼児をお持ちの親も接種できるようになれば良いのですが。。。親から子供にうつったら大変。ワクチン量が少ないから仕方ないのでしょうか。
by popo (2009-10-19 17:24) 

fujiki

popo さんへ
コメントありがとうございます。
1歳未満のお子さんをお持ちのご両親は、
優先接種の対象になっています。
ただ、実際には就学前のお子さんも、
ワクチンの効果は弱いと考えられるので、
むしろご家族への接種を優先させるべきではないか、
と僕は思います。
by fujiki (2009-10-19 20:18) 

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