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夜間食事制限の肥満予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
夜に食べると太るは本当か?.jpg
2018年のCell Metabolism誌に掲載された、
「夜食べると太る」という現象のメカニズムを、
ネズミの実験で検証した論文です。

人間の身体にはほぼ24時間のリズムで周期的に時を刻む、
体内時計があることが知られています。

個々の細胞には時計遺伝子と言われる複数の遺伝子があって、
それが日内リズムに同期して時を刻んでいます。

その一方で細胞が集合した組織により構成された人体にも、
体内時計の司令塔があり、
脳の視交叉上核という部分にあることが分かっています。
この脳の時計は太陽などの光刺激に反応して、
身体が光を感知した時間で時計を合わせ、
朝と認識して1日を開始するのです。

要するに身体全体としても時計があり、
それを構成する個々の細胞も、
それぞれの体内時計を持っている、
ということになります。

この体内時計によって、
人間の身体の代謝がコントロールされています。
昼と夜とでは主に肝臓において、
活性化される酵素に違いがあり、
それによって代謝の違いが生じているのです。

夜食事をすると太るのは、
体内時計によって夜は眠るための時間と認識されているので、
食事をしてもそれをエネルギーとして活用する力が弱く、
結果として脂肪の蓄積が起こりやすい、
というのが大きな理由となっています。

これまでの研究により、
時計遺伝子が働かないようにしたネズミを作り、
体内時計を壊してしまうと、
そのネズミは肥満になり、
脂質異常症や糖尿病などの代謝性疾患を、
高率に発症することが分かっています。

それでは、
代謝を正常に維持するには、
体内時計は必須のものなのでしょうか?

これはまだ結論が出ていません。

時計遺伝子により誘導される肝臓の代謝酵素の多くは、
別の刺激によっても誘導されることが分かっているからです。

それは空腹による刺激です。

今回のネズミの研究では、
まず体内時計が正常に働いているネズミを、
総カロリーの60%が脂質という高脂肪食で飼育し、
自由な時間に食べさせた場合と、
夜の9から10時間は一切食事を与えない場合とを、
比較しています。

その結果、
自由な時間に食べさせたネズミは、
高率に肥満になり糖尿病や脂質異常症を発症しましたが、
夜の食事を制限したネズミは、
健康で肥満にもなりませんでした。

次に時計遺伝子が働かないようにして、
体内時計のないネズミを作って同じ実験をすると、
矢張り夜の食事を制限した場合には、
ネズミは健康で肥満にもなりませんでした。

もし体内時計が代謝をコントロールしていて、
それは変えられないとすると、
食事制限をしても結果は変わらない筈ですが、
実際には体内時計がない状態であっても、
夜間に食事を摂らない時間を充分に取ることによって、
肥満や代謝障害は起こらなかったのです。

これはまだネズミの実験ですから、
人間でもこの通りの現象があるかどうかは、
まだ明らかではありませんが、
仮に人間でも成り立つとすると、
肥満や代謝疾患の予防のために重要なことは、
夜の時間帯に充分な絶食の時間を取ることで、
それが正常な代謝状態を保つために、
必要にして充分な習慣であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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