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GLP-1アナログ各種の個別比較(2024年ネットワークメタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
GLP-1アナログの個別比較データ.jpg
British Medical Journal誌に、
2024年1月29日付で掲載された、
糖尿病の治療薬を直接比較した論文です。

GLP-1アナログは、
人間の消化管から分泌されるホルモンである、
GLP-1と同じ作用を持つ薬剤で、
その膵臓を刺激してインスリン分泌を促し、
血糖を降下させる作用から、
糖尿病の治療薬として開発されて使用され、
その臨床データで体重減少効果が認められたことより、
最近では肥満症の治療薬としても注目されている薬剤です。

もともとは注射の製剤しかなかったのですが、
最近になって内服薬も開発され、
その使用のハードルはグッと下がりました。

最近ではまた、
GLP-1アナログを他のインクレチンなどのホルモンと配合して、
よりその効果を高めたような薬剤も、
次々と開発されています。
その中には既に日本でも発売されているものもありますし、
まだ未発売のものもあります。

そのうちGLP-1を別のインクレチンであるGIPと配合した薬剤が、
チルゼパチド(マンジャロ)で、
GLP-1アナログの代表的な薬剤であるセマグルチド(オゼンピック)を、
膵臓から分泌されるホルモンであるアミリンの作動薬と、
配合した薬がカグリセマです。

GLP-1アナログが2型糖尿病の治療薬として、
有用な薬であることは間違いがありませんが、
複数あるGLP-1アナログおよびその関連薬の中で、
どの薬剤が最も有効性が高いのか、
というような点を直接比較したデータは、
殆ど存在していません。

今回の研究はネットワークメタ解析という手法により、
個別のGLP-1アナログ及びその配合剤の臨床データを、
比較検証しているものです。

これまでの76の介入試験のデータに含まれる、
15種類のGLP-1アナログとその配合剤を使用した、
トータル39246名の臨床データをまとめて解析し比較したところ、
全てのGLP-1アナログが空腹時血糖と、
糖尿病コントロールの指標であるHbA1cの低下作用を示しました。

15種類の中で、
最もHbA1cと空腹時血糖の低下作用が強力であったのは、
GIP/GLP1アナログのチルゼパチドで、
HbA1cは平均で2.1%(95%CI-2.47から-1.74)の低下を示していました。

GLP-1アナログはまた、
いずれも体重の減少効果が認められ、
最も体重減少作用が強かったのは、
GLP-1とアミリンアナログの合剤でカグリセマで、
平均で14.03キロ(95%CI -17.05から11.00)の体重減少が認められています。
それに次ぐ体重減少効果が認められたのはチルゼパチドで、
平均8.47キロ(95%CI-9.68から-7.26)の体重減少が認められています。

コレステロールの低下効果については、
セマグルチドが有効性が最も高く、
使用の有害事象としては、腹痛や吐き気などの消化器症状が多く、
特に高用量での頻度が高くなっていました。

このように、
GLP-1アナログは血糖コントロール改善と、
体重減少についての有効性が確認されていて、
特に合剤においてその効果が高いことが確認されました。
一方で吐き気などの消化器症状で、
継続が困難となった事例も多く、
今後効果と有害事象とのバランスなどの観点から、
その個別の使用の選択肢が、
整理されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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