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SGLT2阻害剤で飲酒検査が偽陽性になる? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
SGLT2阻害剤による尿中アルコール検査の偽陽性.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2024年2月8日付で掲載されたレターですが、
糖尿病の経口治療薬で、
尿の飲酒検査の偽陽性が検出された、
という興味深い報告です。

アメリカで60代の男性が、
10か月以上お酒を1滴も飲んでいないのに、
行政の検査で尿にアルコールのエタノールの反応が陽性となり、
主治医に連絡があった、という事例がありました。

その男性は糖尿病の治療で、
SGLT2阻害薬を使用していました。

この薬は尿へのブドウ糖の排泄を促進することにより、
糖尿病の病状をトータルに改善する作用を持つ、
経口糖尿病治療薬です。

医療機関で迅速検査を施行したところ、
尿糖は検出されたものの、
尿中のエタノールやその代謝産物を含め陰性の結果でした。

何故このようなことが起こったのでしょうか?

上記レターの著者の分析では、
尿検体に含まれていたブドウ糖が、
細菌の酵素によって発酵し、
エタノールが発生したことが要因ではないかと考えられました。

行政の検査では検体を採取してから、
実際に検査をするまでにかなり時間が経っていて、
その間の検体の管理も悪かったことから、
そうした事態が発生したと推測しています。

それとは別個の事例ですが、
2019年に日本で報告された症例報告では、
57歳のタクシー運転手が、
呼気のアルコール検査で陽性となり、
飲酒運転を疑われたものの、
実際には飲酒はしておらず、
糖尿病で服用していたSGLT2阻害剤の影響ではないか、
と分析されています。

これはSGLT2阻害剤の服用により、
呼気のアセトンが増加するのですが、
アセトンがエタノールと同じ温度帯で燃焼するため、
半導体センサーのアルコール検知器では、
偽陽性となってしまったのではないか、
という説明になっています。

要するに呼気でも尿でも、
アルコールの簡易検出法は、
SGLT2阻害剤の使用時には、
偽陽性となる可能性があり、
その点は充分に理解した上で、
こうした機器による飲酒検査は施行される必要があると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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