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歯磨きの院内肺炎予防効果(2023年メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は大晦日でクリニックは休診です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
歯磨きの肺炎予防効果.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2023年12月18日付で掲載された、
歯磨きの肺炎予防効果についての論文です。

肺炎は高齢者の死因としても、
上位にランクされている感染症です。

院内感染としてもその頻度が高く、
入院の原因となった病気の治療には成功したものの、
入院中に肺炎を合併して、
そのために状態が悪化する、
というような事態も稀ではありません。

院内感染で重要なことは、
何よりその予防です。

ただ、現状明確な院内肺炎の予防策は確立していません。

口腔内の検出菌と肺炎の起因菌とが、
同一であることが多いことが報告されていて、
このことからは、
口腔内を清浄に保つことが、
肺炎予防に重要であることが示唆されます。

そのため、主にクロルヘキシジンという消毒剤を用いた、
口腔ケアが試みられ、
一定の院内肺炎予防効果が報告されていますが、
その一方で生命予後を悪化させたとする報告もあって、
その結果は一致しているとは言えません。

よりシンプルな口腔ケアとして、
歯磨きの活用があります。

ただ、その有効性はまだ院内肺炎予防としては、
確立されたものではありません。

そこで今回の研究では、
これまでの15の臨床研究に含まれる、
トータルで10742名の臨床データをまとめて解析することで、
この問題の検証を行っています。

その結果、
毎日複数回の歯磨きの施行は、
入院中の患者の院内肺炎発症のリスクを、
33%(95%CI:0.56から0.81)有意に低下させ、
集中治療室での死亡リスクも、
19%(95%: 0.69から0.95)有意に低下させていました。

この院内肺炎罹患率の低下は、
人工呼吸器を装着中の患者では、
32%(95%:0.57から0.82)有意に認められたものの、
人工呼吸器を装着していない患者のみの解析では、
有意には認められませんでした。
毎日の歯磨き回数については、
1日2回とそれを超える回数での比較においては、
有意な違いが認められませんでした。

このように、
1日複数回の歯磨きを施行することにより、
院内肺炎の予防に一定の有効性が確認されました。
この予防効果は人工呼吸器を装着している患者において専ら認められ、
1日の歯磨き回数は2回が妥当と考えられました。

歯磨きによる口腔ケアは、
特に肺炎リスクの高い入院中の患者においては、
有効な予防法と考えて良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い年の瀬をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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