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安定狭心症におけるカテーテル治療の有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
安定狭心症に対するPCIの有効性.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2023年12月21日付で掲載された、
安定狭心症に対するカテーテル治療の有効性についての論文です。

安定狭心症というのは、
労作性狭心症とほぼ同じ意味の医学用語で、
心臓を栄養する血管に狭い場所があって、
安静にしている時には特に症状は見られないものの、
一定の負荷を超えた運動をすると、
その時だけ胸の痛みが発作として生じる、
という状態を示しています。

症状から安定狭心症が疑われると、
負荷を掛けてその変化をみる運動負荷心電図検査や、
造影剤を入れて心臓を栄養する血管に、
狭い場所がないかどうかを確認する、
心臓CTなどの検査を行い、
その診断を確定します。

その治療方針としては、
亜硝酸製剤や血管拡張剤、
βブロッカーなどの薬物治療を施行して、
まず症状のコントロールを行います。

安定狭心症は心筋梗塞に短期間では移行しない状態、
というように考えられているので、
薬物治療で経過をみることは可能ですが、
心臓を栄養する血管の狭い場所を元に戻す訳ではないので、
徐々に病気が進行する可能性があります。
そのため薬物治療で症状のコントロールが困難であったり、
心筋梗塞などに移行するリスクが高いと考えられる場合には、
カテーテルで血管の狭窄を解消するような治療が検討されます。

しかし、
薬物治療でコントロールが困難な場合にカテーテル治療を行っても、
症状が本当に改善するかどうかは、
それほど実証されている訳ではありません。
2018年にLancet誌に発表された臨床試験の結果では、
安定狭心症に対して薬物治療を施行している患者さんで、
カテーテル治療を施行しても、
症状の明確な改善は認められませんでした。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29103656/

ただ、この試験では薬物治療に上乗せした、
カテーテル治療の効果を見ているので、
薬物治療を行わなかった場合には、
カテーテル治療のみで症状が改善したという可能性が、
否定はされていません。

そこで今回の臨床研究においては、
安定狭心症の患者さんトータル301例に、
2週間薬物治療を全て中止した上で、
患者本人にも主治医にも分からないように、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方はカテーテル治療で狭窄した血管の血流を改善し、
もう一方は偽の治療を行って、
その後の症状経過を12週間観察しています。

その結果、カテーテル治療群は偽治療と比較して、
心臓の血流状態は改善し、
狭心症の症状スコアも有意な改善を示しました。

つまり、
安定狭心症におけるカテーテル治療は、
その症状への効果という点では、
コントロールされた薬物治療と同等と考えられ、
今後こうしたデータを元にして、
安定狭心症の患者さんの治療の選択肢が、
より明確となることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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