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「PERFECT DAYS」 [映画]

あけましておめでとうございます。
北品川藤クリニックの石原です。

クリニックは1月5日(金)まで、
年末年始の休診となっています。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
パーフェクトデイズ.jpg
ヴィム・ヴェンダース監督がメガホンを取り、
役所広司さんが主役を演じた映画が、
今ロードショー公開されています。

これは「THE TOKYO TOILET プロジェクト」から始まった、
特殊な成り立ちによる映画で、
お金を掛けた贅沢公共トイレの宣伝映画と考えると、
少しモヤモヤする感じもあるのですが、
商業映画では成立しなかったであろう企画で、
間違いなく一流の藝術家が顔を揃えて、
自由な創作が行われたと考えると、
ある意味商業主義以前の藝術映画に近いものかも知れません。

これで作品が詰まらなければ意味がないのですが、
出来上がった映画は、
さすがヴェンダース、さすが役所広司という感じがあって、
日本の風景をそのままに切り取りながら、
絶対に日本映画の監督には、
成し得ない映像となっていました。

作品内では明確には説明されない事情があって、
熟年で1人暮らしの生活をしている、
トイレ清掃を生業としている主人公を、
役所広司さんが演じ、
その生活を淡々と綴りながら、
そこに生じた幾つかの揺らぎのようなものを、
もう滅びつつある東京の景色と共に描いています。

ジャームッシュの傑作「パターソン」に近い雰囲気があって、
あちらもバス運転手の日常のルーティンを、
淡々と描いているのですが、
こちらも毎日の生活のルーティンを描きつつ、
相棒の清掃作業員に我儘を言われたり、突然退職されたり、
家出した姪の少女が現れて、
定位置の寝る場所を奪われたり、
毎週行く馴染のスナックのママの、
裏の顔を見てしまったりと、
その生活のルーティンが、
修正を余儀なくされる出来事を描きつつ、
その揺らぎも生活の中に吸い込まれて行く、
人生の不思議を描きます。

「パターソン」ではとても些細なことでありながら、
主人公の人生に大きな影響を与える出来事が、
唐突に起こるのですが、
この作品ではそこまでショッキングな出来事は起こりません。
そこが若干の物足りなさを感じさせるのですが、
その代わり主人公の日々のルーティンは、
より端正で美しく磨かれているという感じがしますし、
そのルーティンを揺らがせる出来事は、
より計算され複層的に構成されています。

そんな訳で勿論違和感や不満はあるのですが、
海外監督による日本映画の力作として、
特にヴェンダース監督のファンであれば、
必見の作品であることは間違いがないと思います。

個人的には嫌だなと思う毎朝のルーティンを、
この映画を観てからは、
映画の主人公のつもりでこなすようになり、
少しだけ嫌だと思わなくて済むようになっています。
結構そうした影響力のある作品なのです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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