SSブログ

新型コロナウイルス後遺症に対するワクチン接種の有効性(スウェーデンの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
COVID-19後遺症に対するワクチン接種の有効性.jpg
British Medical Journal誌に、
2023年11月21日付で掲載された、
新型コロナ後遺症に対するワクチンの予防効果を検証した、
スウェーデンの疫学データについての論文です。

COVID-19後遺症については、
これまでも何度も記事にしています。

新型コロナウイルス感染症の罹患後に、
体調不良が長期間持続することは以前より指摘されていて、
その呼び名も定義も、
必ずしも統一されていませんが、
概ね感染に罹患後3か月以上持続する症状で、
それにより日常生活や仕事などの社会生活に、
一定の制限が必要となったり困難が生じる場合に、
COVID-19後遺症や新型コロナ後遺症、
COVID-19罹患後症候群やロングCOVID、
などの名称が使用されています。
ちなみに今回の論文では「post-covid-19 condition」
という用語が使用されています。
これは新型コロナ発症後3か月以上何等かの体調不良が持続し、
個々の症状自体も2か月以上持続している、
というのがその定義であるようです。

その症状も数多く報告されていますが、
報告の多いものでは大きく3つに分かれるというのが、
今の一般的な考え方です。
その3つというのは、
①咳や痰がらみ、息切れなどの呼吸器症状
②感情の変化や身体の痛みなどを伴う、全身の倦怠感
③物忘れや集中力低下などの認知機能障害
の3種類です。
他に味覚嗅覚障害がありますが、
これは持続することはあるものの、
他のCOVID-19後遺症とは別に考えることが通常です。

その原因には不明の点も多く、
その治療法も現時点で確立されたものはありません。

ワクチン接種をすることで、
感染の重症化予防効果と共に、
後遺症の予防効果もあるとするデータが、
これまでに幾つか報告されていますが、
主に臨床試験のデータなどを解析したもので、
実際に一般の多数の住民を対象としたものは、
あまり公表されていませんでした。

今回の研究は国民総背番号制を敷いているスウェーデンのもので、
ワクチン接種歴があって新型コロナに罹患した、
トータル299692名の一般住民を、
290030名のワクチン接種歴のない感染者と比較して、
その後のCOVID-19後遺症の発症リスクを比較しています。

その結果、
ワクチン接種歴のある感染者の0.4%に当たる1201名と、
ワクチン接種歴のない感染者の1.4%に当たる4118名が、
COVID-19後遺症を発症していて、
1回以上のワクチン接種は、
後遺症のリスクを58%(95%CI:0.38から0.46)有意に低下させていました。

これをワクチン接種回数毎に解析すると、
1回のみの予防効果は21%、
2回接種の予防効果は59%、
3回接種以上の予防効果は73%と計算されました。

このように、
今回の大規模な疫学データにおいて、
ワクチン接種はその回数が多いほど、
新型コロナ罹患後の後遺症の発症を抑制していて、
その全てが予防可能ということでは勿論ありませんが、
ワクチンが後遺症の予防に一定の有効性のあることは、
おそらく間違いがなさそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(4)  コメント(0) 

nice! 4

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。