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北野武監督「首」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日ですが、
午前中は区民健診の当番日なので、
健診の診療は行う予定です。

日曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
首.jpg
一時はお蔵入りの可能性もあった、
北野武監督の新作時代劇「首」が、
今ロードショー公開されています。

これはもうとても楽しみで、
公開初日に映画館に出掛けました。

ザックリの感想としては、
思っていたよりも数段良かったです。

これね、黒澤明監督なら「影武者」、
大島渚監督なら「御法度」みたいな作品ですね。
どちらもその監督ならではの個性の横溢したカルトで、
ただ、その監督の代表作という訳ではなくて、
「老いたり」という感じもあるんだけど、
それでも監督でないと絶対に撮れない、
という感じの絵があって、
捨てがたい魅力のある映画です。

「影武者」も物凄い悪口を、
公開の時は言われたんですね。
悪口を言うことが、知識人のたしなみ、というような感じ。
でも、監督の本当のファンなら、
そう悪く言えるような作品ではないですよ。
完成度は確かに低くて、
その点で幾らでも悪くは言えるのですが、
間違いなくカルトの魅力に溢れていました。

「御法度」も同じで、
大島監督老いたり、という感じは勿論あるのですが、
ラストの尋常ならざる感じは、
大島監督作品の中でも白眉の1つと、
そう感じさせるものがありました。

今回の映画は、
予告だけ見ると、
「ああ、戦国時代で『アウトレイジ』をやるだけのことね」
みたいに思いますよね。

でもそうではないんですね。
「座頭市」で、
ちょっとシュールでスタイリッシュな時代劇をやったのですが、
あまり成功ではなかったですよね。
多分ちょっと気負い過ぎたのではないかと思うのですね。
それで今回はもっと肩の力を抜いた感じで、
監督が面白いと思う時代劇の要素を、
ともかく全部叩き込んだような1本になっているんですね。
「アウトレイジ」もあるけれど、それは部分的なもので、
「影武者」と「乱」の黒澤後期時代劇の世界もあるし、
泥の中の殺陣は「七人の侍」のオマージュですね。
「ガルシアの首」のペキンパーも出て来るし、
大島渚監督の切腹描写と男色描写もあるでしょ。
途中で忍びの里の異界が出現すると、
かつての東映時代劇を、
深作監督が再構築した忍者映画みたいなタッチもあるし、
石井輝男監督の残酷時代劇みたいな部分もありますよね。
また石井岳龍さんの大傑作「パンク侍、斬られて候」を、
彷彿とさせる破天荒さもありました。

間違いなく北野映画で一番の大作だと思いますが、
合戦描写もきちんとやっていて、
掛けたお金が無駄になっていないですよね。
特に大抵ナレーションでしか説明されない山崎の戦いが、
しっかりと描写されていたのは感心しました。
その一方で監督悪ノリの不真面目なアドリブ合戦もあって、
それがキチンと作品の流れを邪魔していないのが、
さすがと思います。

かなり出鱈目で、完成度の高い映画ではないのです。
でも、間違いなくカルトとして残る1本だと思います。
VFXの質も高くて、
題名の通り、ワンカットで人間の首が、
ビュンビュンと飛ぶのですが、
不謹慎ですがワクワクするような魅力がありました。

キャストは皆好演ですが、
特に準主役で狂言回し的な役柄を演じた木村祐一さんが、
元忍びで語り芸の新境地を開いた芸人という役柄を、
巧みに描いて作品に1本の筋を通しているのが、
見応えがありました。

そんな訳で北野映画のファンは勿論必見ですが、
かつての娯楽映画の好きな方には、
シネフィルとしての北野監督が、
そうした映画愛をおもちゃ箱的に表現した、
稚気溢れるカルト映画として、
あまり過度な期待はせずに足を運んで頂きたいと思います。

僕は大好きですが、
この映画を絶賛する人も、
罵倒する人も、
おそらく何等かのバイアスからの感想と思って、
それに惑わされずにご覧頂きたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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