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セマグルチドの心血管疾患予防効果(非糖尿病での検証) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
セマグルチドの心血管疾患改善効果.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2023年11月11月付で掲載された、
糖尿病治療薬で肥満症の治療薬としても注目されている、
セマグルチドという薬剤の、
糖尿病のない肥満の患者さんに対する、
心血管疾患予防効果についての論文です。

セマグルチドは、
GLP-1受容体作動薬と呼ばれる糖尿病の治療薬ですが、
その臨床試験において体重減少効果が認められ、
現在では肥満症の治療薬として、
欧米では広く使用され、
日本でも最近になってその肥満症への適応が認められました。

セマグルチドを、
肥満を伴う2型糖尿病の患者さんに使用すると、
血糖値や体重の改善作用のみならず、
心血管疾患のリスクを低下させ、
患者さんの生命予後にも良い影響を与えることが確認されています。

しかし、これは2型糖尿病の患者さんに限った知見です。

それでは、
糖尿病ではない肥満症の患者さんにセマグルチドを使用した場合、
心血管予防効果はどの程度あるのでしょうか?

今回の研究では世界41か国の専門医療機関において、
年齢が45歳以上でBMIが27以上の過体重か肥満があり、
糖尿病の合併はなく、
心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患の既往のある、
17604名の患者を、
本人にも主治医にも分からないように、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方は1週間に1回セマグルチド2.4㎎を皮下注射し、
もう一方は偽の注射を施行して、
平均39.8か月の経過観察を施行しています。

その結果、
心血管疾患による死亡と心筋梗塞、脳卒中の発症を併せたリスクは、
偽注射群と比較してセマグルチド群で、
20%(95%CI:0.72から0.90)有意に低下していました。

これまでのメタ解析のデータでは、
2型糖尿病で心血管疾患を合併している患者さんに対する、
GLP-1受容体作動薬の使用は、
心血管疾患のリスクを14%有意に低下させると報告されています。
https://www.thelancet.com/journals/landia/article/PIIS2213-8587(21)00203-5/fulltext

つまり、糖尿病のない肥満の患者さんに使用した場合にも、
糖尿病の患者さんと同様の予防効果が確認された、
ということになります。

GLP-1受容体拮抗薬は肥満症の患者さんに対しても、
トータルにその予後を改善する可能性が高い薬であることが、
明らかになりつつあるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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