2型糖尿病における時間制限食の有効性 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
JAMA Network Open誌に、
2023年10月27日付で掲載された、
2型糖尿病の患者さんにおける食事制限の方法についての論文です。
過食や運動不足がその経過に大きく影響する、
2型糖尿病においては、
適切な食事療法がそのコントロールに重要と考えられています。
私が大学や医局で学んだ食事療法は、
全体のカロリーを制限しつつ、栄養素を過不足なく摂り、
毎日3食をきちんと食べるという方法です。
そうした食事療法の有効性は確認されていますが、
実際には個々の患者さんがそれを実践することは、
それほど容易いことではありません。
食事内容や量などを詳細に毎日記録し、
それを元に指導を重ねる必要があるからです。
近年特にカロリー制限は指導せず、
食事時間を昼間の6から10時間くらいのみに制限することにより、
1日の摂取カロリーは200から500カロリー抑制され、
体重減少効果のあることが報告され、
注目を集めています。
これは元々民間のダイエット法から、
始まった試みだと思いますが、
食事の時間を制限するだけで、
特に食事内容には制限を加えないので、
非常に続けやすいという利点があります。
これまでに成人糖尿病患者を対象として、
時間制限食の有効性を検証した臨床研究は2つあり、
この方法によって体重は1から4%、
HbA1cが1.5%低下したという結果が得られています。
ただ、研究はいずれも3から12週間という比較的短期間のもので、
通常の食事指導とは比較されていない、
という限界が指摘されています。
https://link.springer.com/article/10.1007/s00125-022-05752-z
https://nutritionandmetabolism.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12986-021-00613-9
そこで今回の研究では、
アメリカの単独施設において、
年齢が18から80歳で糖尿病があり、
BMIが30から50という肥満の患者、
トータル75名をくじ引きで3つの群に分けると、
それまでの生活をそのまま続けるコントロール群、
食事量をカロリーで25%制限するカロリー制限指導群、
カロリー制限はせず食事時間を午後0時から午後8時の、
8時間に制限する時間制限食群の3群に分けて、
その経過を半年間観察しています。
その結果、6か月後における摂取カロリーは、
時間制限食では平均313キロカロリー低下し、
カロリー制限指導群では197キロカロリー低下していましたが、
コントロール群では16キロカロリーの低下に留まっていました。
6か月後における体重は、
時間制限食では-3.56キログラム(95%CI:-5.92から-1.20)、
コントロール群と比較して有意に低下が認められましたが、
カロリー制限指導群では有意な低下は確認されませんでした。
HbA1cの低下は、
時間制限食では-0.91%(95%CI:-1.61から-0.20)、
カロリー制限指導群では-0.94%(95%CI:-1.59から-0.30)と、
コントロール群と比較して、
どちらも有意に低下していました。
今回の検証では、
カロリー制限よりもむしろ時間制限のみの方が、
体重減少効果は高く、
血糖コントロールの改善効果も同等に認められました。
これはカロリー制限の指導を行っても、
実際には患者さんはそれほど指導を継続的に守ることは出来ず、
むしろ食事の時間のみを制限した方が、
結果としてカロリー制限に繋がっている、
という点が影響しているものと考えられます。
今後介入試験など、より厳密な方法による検証を行うことで、
糖尿病の一般臨床における食事指導はどうあるべきなのか、
その具体的な改善に繋がることを期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
JAMA Network Open誌に、
2023年10月27日付で掲載された、
2型糖尿病の患者さんにおける食事制限の方法についての論文です。
過食や運動不足がその経過に大きく影響する、
2型糖尿病においては、
適切な食事療法がそのコントロールに重要と考えられています。
私が大学や医局で学んだ食事療法は、
全体のカロリーを制限しつつ、栄養素を過不足なく摂り、
毎日3食をきちんと食べるという方法です。
そうした食事療法の有効性は確認されていますが、
実際には個々の患者さんがそれを実践することは、
それほど容易いことではありません。
食事内容や量などを詳細に毎日記録し、
それを元に指導を重ねる必要があるからです。
近年特にカロリー制限は指導せず、
食事時間を昼間の6から10時間くらいのみに制限することにより、
1日の摂取カロリーは200から500カロリー抑制され、
体重減少効果のあることが報告され、
注目を集めています。
これは元々民間のダイエット法から、
始まった試みだと思いますが、
食事の時間を制限するだけで、
特に食事内容には制限を加えないので、
非常に続けやすいという利点があります。
これまでに成人糖尿病患者を対象として、
時間制限食の有効性を検証した臨床研究は2つあり、
この方法によって体重は1から4%、
HbA1cが1.5%低下したという結果が得られています。
ただ、研究はいずれも3から12週間という比較的短期間のもので、
通常の食事指導とは比較されていない、
という限界が指摘されています。
https://link.springer.com/article/10.1007/s00125-022-05752-z
https://nutritionandmetabolism.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12986-021-00613-9
そこで今回の研究では、
アメリカの単独施設において、
年齢が18から80歳で糖尿病があり、
BMIが30から50という肥満の患者、
トータル75名をくじ引きで3つの群に分けると、
それまでの生活をそのまま続けるコントロール群、
食事量をカロリーで25%制限するカロリー制限指導群、
カロリー制限はせず食事時間を午後0時から午後8時の、
8時間に制限する時間制限食群の3群に分けて、
その経過を半年間観察しています。
その結果、6か月後における摂取カロリーは、
時間制限食では平均313キロカロリー低下し、
カロリー制限指導群では197キロカロリー低下していましたが、
コントロール群では16キロカロリーの低下に留まっていました。
6か月後における体重は、
時間制限食では-3.56キログラム(95%CI:-5.92から-1.20)、
コントロール群と比較して有意に低下が認められましたが、
カロリー制限指導群では有意な低下は確認されませんでした。
HbA1cの低下は、
時間制限食では-0.91%(95%CI:-1.61から-0.20)、
カロリー制限指導群では-0.94%(95%CI:-1.59から-0.30)と、
コントロール群と比較して、
どちらも有意に低下していました。
今回の検証では、
カロリー制限よりもむしろ時間制限のみの方が、
体重減少効果は高く、
血糖コントロールの改善効果も同等に認められました。
これはカロリー制限の指導を行っても、
実際には患者さんはそれほど指導を継続的に守ることは出来ず、
むしろ食事の時間のみを制限した方が、
結果としてカロリー制限に繋がっている、
という点が影響しているものと考えられます。
今後介入試験など、より厳密な方法による検証を行うことで、
糖尿病の一般臨床における食事指導はどうあるべきなのか、
その具体的な改善に繋がることを期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2023-11-20 06:35
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