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オミクロン株対応ワクチン追加接種の有効性(北欧の疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
産業医面談などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナワクチン4回目接種の有効性.jpg
British Medical Journal誌に、
2023年7月25日ウェブ掲載された、
新型コロナワクチンの追加接種の有効性についての論文です。

新型コロナワクチンのうち、
特にファイザー・ビオンテック社とモデルナ社の、
mRNAワクチンについては、
そのパンデミック初期に時期における、
初回接種の高い感染予防効果が確認されています。

その後ブースター接種として追加接種が、
3回目、4回目として施行され、
オミクロン株の流行に伴っては、
オミクロン株に抗原を変更した、
BA.4-5対応とBA.1対応の2種のワクチンが、
新たに開発され追加接種として施行されています。

追加接種のワクチンについては、
感染予防効果はそれほど高くはないものの、
重症化予防や生命予後の改善効果は確認されています。
そのため、高齢者など、
重症化のリスクの高い対象に絞って、
追加接種を施行することが、
世界的に一般的方針となっていて、
日本では今6回目接種が施行されていますが、
概ねその方針に則ったものとなっています。

追加接種、特に4回目以降の接種については、
否定的な意見もあります。
世界の人口の多くが、
既に感染を受けるかワクチンを接種して、
一定の免疫を獲得していると想定され、
それに伴って特にオミクロン株の感染以降は、
症状も概ね軽症化しています。
高齢者でもそれほど重症化リスクが高くないとすれば、
あまりワクチンを追加で接種することの必要性は、
高くないようにも思われるからです。
またオミクロン株対応のワクチンは、
以前のものより理屈の上では有効性が高いと思われますが、
実際の効果が臨床的に確認されている、
という訳ではありません。

今回の疫学データは、
北欧のデンマーク、フィンランド、ノルウェー、スウェーデンの4か国で、
3回目のmRNAワクチン接種後に、
3か月以上の間隔を空けて、
BA.4-5由来のオミクロン株抗原を含む2価mRNAワクチンを接種した、
年齢が50歳以上の1634199名と、
BA.1のオミクロン株由来抗原を含む2価ワクチンを接種した、
同じく年齢が50歳以上の1042124名を対象としたものです。

ワクチンを3回のみ接種した場合と比較して、
BA.4-5対応2価ワクチンの4回目接種は、
その後3か月の新型コロナによる入院のリスクを、
67.8%(95%CI:63.1から72.5)、
死亡のリスクを、
69.8%(95%CI:52.8から86.8)、
それぞれ有意に低下させていました。

同様にBA-1.対応2価ワクチンの4回目接種は、
3回接種のみの場合と比較して、
新型コロナによる入院のリスクを65.8%(95%CI:59.1から72.4)、
死亡のリスクを70.0%(95%CI:50.3から89.7)、
こちらも有意に低下させていました。

オミクロン株対応ワクチン2種の重症化予防効果には、
明確な差は認められず、
オミクロン株対応ワクチンを4回目接種に用いた場合を、
従来のワクチンを4回目接種に用いた場合と比較しても、
その重症化予防効果に、
有意な差は認められませんでした。

このように、
高齢者にターゲットを絞って4回目接種を施行すると、
3回目接種のみと比較して、
一定の重症化予防効果が確認されました。
その効果は半年程度は、
徐々に低下しつつも持続することが確認されています。

オミクロン対応ワクチンを使用しても、
その有効性は臨床的には、
それまでのワクチンの追加接種と差がありませんでした。
また、現行のオミクロン株の流行に対しては、
その重症化率は低いため、
トータルな重症化予防効果のインパクトは、
かなり小さなものとなることは間違いがありません。

こうしたデータを元にして、
今後のワクチン接種の方針が定められると思いますが、
定期接種の必要性については、
流行しているウイルスの性質と、
個々の重症化リスクの高さとを、
総合的に考えないと、
判断するのは難しい事項であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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