「Pearl パール」 [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
新しい感覚で過去のホラーをリクリエートした、
シリーズの第2弾として、
1918年を舞台とした「パール」が公開されています。
前作の「X」は「悪魔のいけにえ」のトリビュートだったのですが、
今回は1960年代から70年代の、
H.Gルイスやアンディ・ミリガンなどによる、
悪趣味な残酷シーンを見せ場とするスプラッター映画が、
そのベースになっているように思います。
その元祖とされるH.G.ルイスの「血の祝祭日」の製作が1963年。
今観てもかなり異様な凄味のある映画ですが、
当時としては尋常ではないくらい突飛な映画ではありました。
ただ、勿論悪趣味の極みのような作品で、
まともに評価される性質のものではありません。
ただ、意外にその設定などの部分は、
サイコスリラー的な深みもあって、
人間ドラマとして無視出来ない切実さもあったのです。
今回の映画はスペイン風邪が流行した1918年に舞台を取り、
強権的な母親と障害のある父親の介護で疲弊した少女が、
シリアルキラーに変貌する姿を描き、
即物的な残酷描写はルイスやミリガンに倣いつつ、
「オズの魔法使い」などのミュージカル映画の要素も取り込んで、
60年代スプラッターをリクリエーションしています。
悪趣味のツボは抑えつつ、
なかなか工夫された作品だと思います。
主役のミア・ゴスはもう、
新世代のホラークイーンの貫禄充分で、
過不足のない怪演を見せてくれます。
基本ラインはかつてのスプラッターですが、
ゴスの長回しで内面描写を入れたり、
アートっぽい趣向も取り入れて作品の底上げをしています。
ただ、鑑賞後の感想としては、
正直もう少し突き抜けたところ、
観客の予想を超えるような展開や場面が、
あっても良いのに、というようには感じました。
全体に予定調和的な物足りなさがあって、
「血の祝祭日」を最初に観た時のようなショックは、
この映画からは感じられません。
「オズの魔法使い」のトリビュートにしても、
たとえば松尾スズキさんの「マシーン日記」で、
最後にヒロインが見ていたドロシーになるという夢が、
非常に残酷な形で適う、という趣向があるのですが、
ああした、一見凡庸なモチーフが予想外のショックに繋がる、
というような仕掛けが欲しいですよね。
この作品にはそうしたところは全くなくて、
「ただ好きなものを並べてみただけ」という感じに見えるのが、
正直残念に感じました。
それから、1918年という設定なのに、
街の映画館で掛かっている映画がトーキーなんですね。
これは時代的にあり得ない、という気がするのですが、
あり得たのでしょうか?
その点は疑問でした。
そんな訳でやや趣向倒れに感じた作品でしたが、
非常に意欲的であることは確かなので、
次回作には是非期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
新しい感覚で過去のホラーをリクリエートした、
シリーズの第2弾として、
1918年を舞台とした「パール」が公開されています。
前作の「X」は「悪魔のいけにえ」のトリビュートだったのですが、
今回は1960年代から70年代の、
H.Gルイスやアンディ・ミリガンなどによる、
悪趣味な残酷シーンを見せ場とするスプラッター映画が、
そのベースになっているように思います。
その元祖とされるH.G.ルイスの「血の祝祭日」の製作が1963年。
今観てもかなり異様な凄味のある映画ですが、
当時としては尋常ではないくらい突飛な映画ではありました。
ただ、勿論悪趣味の極みのような作品で、
まともに評価される性質のものではありません。
ただ、意外にその設定などの部分は、
サイコスリラー的な深みもあって、
人間ドラマとして無視出来ない切実さもあったのです。
今回の映画はスペイン風邪が流行した1918年に舞台を取り、
強権的な母親と障害のある父親の介護で疲弊した少女が、
シリアルキラーに変貌する姿を描き、
即物的な残酷描写はルイスやミリガンに倣いつつ、
「オズの魔法使い」などのミュージカル映画の要素も取り込んで、
60年代スプラッターをリクリエーションしています。
悪趣味のツボは抑えつつ、
なかなか工夫された作品だと思います。
主役のミア・ゴスはもう、
新世代のホラークイーンの貫禄充分で、
過不足のない怪演を見せてくれます。
基本ラインはかつてのスプラッターですが、
ゴスの長回しで内面描写を入れたり、
アートっぽい趣向も取り入れて作品の底上げをしています。
ただ、鑑賞後の感想としては、
正直もう少し突き抜けたところ、
観客の予想を超えるような展開や場面が、
あっても良いのに、というようには感じました。
全体に予定調和的な物足りなさがあって、
「血の祝祭日」を最初に観た時のようなショックは、
この映画からは感じられません。
「オズの魔法使い」のトリビュートにしても、
たとえば松尾スズキさんの「マシーン日記」で、
最後にヒロインが見ていたドロシーになるという夢が、
非常に残酷な形で適う、という趣向があるのですが、
ああした、一見凡庸なモチーフが予想外のショックに繋がる、
というような仕掛けが欲しいですよね。
この作品にはそうしたところは全くなくて、
「ただ好きなものを並べてみただけ」という感じに見えるのが、
正直残念に感じました。
それから、1918年という設定なのに、
街の映画館で掛かっている映画がトーキーなんですね。
これは時代的にあり得ない、という気がするのですが、
あり得たのでしょうか?
その点は疑問でした。
そんな訳でやや趣向倒れに感じた作品でしたが、
非常に意欲的であることは確かなので、
次回作には是非期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2023-07-29 09:50
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