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COPDの2型炎症に対する抗体製剤の有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2 型炎症とCOPD.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2023年5月21日ウェブ掲載された、
喘息やアトピー性皮膚炎の治療薬を、
COPDの重症化予防に使用した臨床試験についての論文です。

COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、
主に喫煙による慢性気管支炎や肺気腫などの、
肺の変化を総称したもので、
その進行により呼吸困難が生じると、
歩行時の息切れや咳痰などのために、
日常生活は大きく制限されますし、
患者さんの生命予後にも大きな影響を与える、
深刻な病気でもあります。

COPDの進行において、
感染などをきっかけとして、
呼吸機能を含めた病状が急激に悪化することがあり、
これを急性増悪と呼んでいます。

肺炎から呼吸不全となって亡くなることもありますし、
回復しても、
呼吸機能は急性増悪以前より、
悪化してしまうことも多いのです。

従って、急性増悪を予防することが、
COPDの管理においては極めて重要です。

現状その主な予防としては、
誘因となる感染症を予防することに力点が置かれていて、
今でしたら、インフルエンザや新型コロナのワクチン接種を施行。
基本的な手洗いなどの感染対策が主体となります。

それでは、COPDの急性増悪を有効に抑制するような、
薬物治療はないのでしょうか?

2型炎症という考え方があります。

これはもともとは特定の働きをするTh2という種類のリンパ球が、
関連する炎症として考えられていましたが、
今ではもう少し広い概念として、
インターロイキン4、5、13といったサイトカインが、
関連する炎症の形態として定義されています。

この2型炎症は気管支喘息やアトピー性皮膚炎などの、
アレルギー性の病気の炎症の主体となっていて、
こうしたインターロイキンを抑制する生物学的製剤が、
その治療として使用されています。

COPDは基本的には2型炎症主体の病気ではありませんが、
その20から40%には2型炎症の関与があり、
急性増悪の引き金にもなっている、
という報告があります。
ステロイド(糖質コルチコイド)が有効なケースがあり、
それが2型炎症を抑制しているためではないかと推測されています。

それでは、喘息と同じように、
2型炎症の関与が疑われるCOPDの患者においては、
そのサイトカインを抑制する薬が、
急性増悪の予防にも有効となるのでしょうか?

今回の研究では、
通常の気管支喘息の治療を継続しても急性増悪のリスクが高く、
2型炎症の関与が疑われるCOPDの患者トータル939名を、
患者にも主治医にも分からないように、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方では2型炎症のサイトカインを抑制する効果を持つ生物学的製剤である、
デュピルマブ(ヒト型抗ヒトIL4/13受容体モノクローナル抗体)を、
2週に一度皮下注射で使用し、
もう一方は偽注射を施行して、
52週間の治療を継続しています。

2型炎症の関与があるかどうかは、
血液の好酸球数が300/μL以上と増加が認められたかどうかで、
簡易的に判定されています。

その結果、
偽注射と比較してデュピルマブ群では、
急性増悪のリスクが30%(95%CI:0.58から0.86)
有意に抑制されていました。
また呼吸機能の指標も改善が認められました。

このように、
一定の2型炎症を抑制する治療により、
COPDの急性増悪が一定レベル予防された、
という結果が得られました。

こうした薬は非常に高額なので、
今後どのような対象者に、
こうした治療を行うべきかは議論のあるところですが、
これまであまり有効な治療法のなかった、
COPDの急性増悪予防に、
一定の有効性が見られたという結果は非常に興味深く、
今後の検証にも期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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