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ワクチン接種と新型コロナの予後との関連(デルタ株とオミクロン株流行期の解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
産業医面談などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
COVID-19の予後とワクチンとの関連2023.jpg
British Medical Journal誌に、
2023年5月23日ウェブ掲載された、
デルタ株以降の流行期における、
新型コロナ感染の重症化に対する、
ワクチン接種の有効性についての論文です。

新型コロナウイルス感染症は、
日本では2023年5月以降、
季節性インフルエンザなどと同じ5類相当の感染症となり、
日常生活もコロナを意識しないものに、
徐々にシフトしています。

ただ、実際にはその流行は継続していて、
クリニックでも発熱などの症状があって、
検査希望の患者さんには発熱外来で検査を行っていますが、
成人の所謂感冒症状の原因として、
圧倒的に多いのは新型コロナです。

それでも、健康成人であれば、
その症状は軽症で「風邪」として治癒する事例が殆どなので、
予防の主体は高齢者など、
重症化リスクのある対象に限って検討されることが、
妥当であることは間違いがありません。

新型コロナワクチンのうち、
ファイザー・ビオンテック社とモデルナ社の、
2種類のmRNAワクチンについては、
特にパンデミック初期の感染についての、
強い感染予防効果が確認されています。
ただ、デルタ株以降においては、
ワクチンを接種していても感染が起こる、
所謂ブレイクスルー感染も多く報告され、
感染自体を予防する効果は、
減弱していることが指摘されています。

オミクロン株の時期においては、
症状自体が軽症化する一方、
ワクチンの感染予防効果は、
より低いものとなっています。
そこで力点が置かれるようになったのは、
感染予防ではなく重症化予防効果で、
そのため現行のワクチンの接種対象は、
重症化リスクの高い人に限定されています。

それでは、デルタ株以降の時期において、
実際にワクチンの重症化予防効果は、
どの程度のものなのでしょうか?

今回の研究では、
アメリカの退役軍人の医療保険データを活用して、
デルタ株流行以降の時期における、
ワクチンの有効性を、
ワクチン毎に比較検証しています。

対象となっているワクチンは、
ファイザー・ビオンテック社とモデルナ社のmRNAワクチンと、
ジョンソンエンドジョンソン社のウイルスベクターワクチンです。

デルタ株の流行期に新型コロナに感染した95336名と、
オミクロン株の流行期に感染した184653名が解析対象となっています。

解析の結果、
デルタ株の流行期においては、
mRNAワクチンの2回接種により、未接種と比較して、
新型コロナで入院するリスクは59%(95%CI:0.39から0.43)、
集中治療室に入室するリスクは67%(95%CI:0.31から0.36)、
人工呼吸器を装着するリスクは73%(95%CI:0.24から0.30)、
死亡するリスクは79%(95%CI:0.19から0.23)と、
それぞれ有意に低下していました。

オミクロン株の流行期においての同様の検証では、
入院のリスクは40%(95%CI:0.57から0.63)、
集中治療室に入室するリスクは43%(95%CI:0.53から0.62)、
人工呼吸器を装着するリスクは41%(95%CI:0.51から0.67)、
死亡するリスクは57%(95%CI:0.39から0.48)と、
デルタ株の時期と比較すると見劣りはするものの、
それぞれ有意に低下していました。

オミクロン株流行期における、
mRNAワクチンの3回接種は、
2回接種と比較して、
入院のリスクを35%(95%CI:0.63から0.69)、
集中治療室に入室するリスクを35%(95%CI:0.59から0.70)、
人工呼吸器を装着するリスクを30%(95%CI:0.61から0.80)、
死亡するリスを49%(95%CI:0.46から0.57)、
それぞれ有意に低下させていました。

ジョンソンエンドジョンソン社のウイルスベクターワクチンは、
未接種と比較して重症化リスクを概ね低下させましたが、
mRNAワクチンと比較して入院期間は長く、
集中治療室への入室のリスクは高くなっていました。

mRNAワクチン同士の比較においては、
重症化リスクの抑制効果は、
ファイザー・ビオンテック社ワクチンと比較して、
モデルナ社ワクチンの方が優れていました。

このように、
オミクロン株の流行時期においても、
mRNAワクチンの重症化予防効果は一定レベル認められ、
3回接種の有効性も確認されています。
ワクチン同士の比較においては、
mRNAワクチンと比較すると、
ジョンソンエンドジョンソン社のウイルスベクターワクチンの有効性は劣り、
mRNAワクチン同士の比較では、
ファイザー・ビオンテック社ワクチンより、
モデルナ社ワクチンの方が優れていました。

今後の追加接種の方向性はまだ未定ですが、
これまでの有効性データや流行状況、
変異株の性質などを総合的に判断して、
決定される必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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