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妊娠中の新型コロナワクチン接種の新生児感染予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
妊娠中のコロナワクチンの胎児への効果.jpg
British Medical Journal誌に、
2023年2月8日ウェブ掲載された、
妊娠中の新型コロナmRNAワクチン接種の、
新生児への効果についての論文です。

新型コロナウイルス感染症に対するワクチンの有効性は、
ファイザー・ビオンテック社とモデルナ社の、
2種類のmRNAワクチンに関する限り、
その短期的な有効性はほぼ確認されています。
ただ当初の想定よりワクチンによって誘導された抗体が、
感染防御に必要なレベルに維持される期間は短く、
特にオミクロン株の感染に関しては、
オミクロン株にマッチングした抗原を含まないワクチンでは、
その有効性はかなり低くなることも分かっています。

自然感染とワクチンによる免疫の両者において、
臍帯血や母乳、胎児血液に、
新型コロナに対する抗体が検出されることが報告されています。

ただ、それでは妊娠中の母体のワクチン接種により、
どの程度乳児感染が予防されているのかについては、
まだそれほどまとまったデータが報告されていません。

今回の研究はカナダにおいて、
デルタ株とオミクロン株の流行時期に誕生した新生児の、
母親の妊娠中に施行されたmRNAワクチン接種の、
生後6か月までの有効性を検証しているものです。

一定期間に生後6か月以内の時点で、
新型コロナの検査を施行された8809名を、
陽性であった1600件と陰性コントロールの7209件に分け、
母親が妊娠中のワクチン接種と、
感染との関係を検証しています。

その結果、
母親が妊娠中に2回のワクチン接種を施行した場合、
誕生したお子さんの生後6か月以内における、
デルタ株の感染予防効果は、
未接種と比較して95%(95%CI:88から98)、
入院の予防効果は97%(95%CI:73から100)、
と算出されました。

一方で同様の計算をオミクロン株のみで施行すると、
感染予防効果は45%(95%CI:37から53)、
入院の予防効果は53%(95%CI:39から64)と、
デルタ株と比較してかなり有効率は低くなっていました。

ここで母親が妊娠中に3回のワクチン接種を施行すると、
お子さんの生後6か月以内の感染予防効果は、
オミクロン株に対しても73%(95%CI:61から80)、
入院の予防効果も80%(95%CI:64から89)とより高くなっていました。

オミクロン株に対する予防効果は、
2回目のワクチン接種を妊娠後期に施行した方が、
初期や中期に施行するよりも高くなっていました。

以上は出生後6か月以内の感染をまとめて解析したものですが、
母体の妊娠中のワクチン2回接種の、
オミクロン株による感染の予防効果は、
出生後8週間以内では57%(95%CI:44から66)であったものが、
16週以降では40%(95%CI:21から54)と低下していました。

このように、
母親が妊娠中に複数回のmRNAワクチンを接種することにより、
母体のみならず、
出生後6か月以内の乳児感染についても、
一定の予防効果のあることが確認されました。
有効率はデルタ株に対しては非常に高いものの、
オミクロン株については、
専用ワクチンが使用されていないこともあって、
かなり低くなり、
その予防効果の持続期間も短くなっていました。
ワクチン接種のタイミングとしては、
妊娠後期に2回目接種を行うことが、
それ以外時期に行うより効果の高いことが示唆されました。

今後の新型コロナワクチン接種が、
どのように行われることになるのかは、
まだ見通しが立っていませんが、
今回のようなデータの蓄積を元にして、
今後の同様なパンデミックに対する科学的指針が、
より厳密な形で作成されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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