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認知症の初期症状と経過との関連性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
認知症の初期症状と進行経過.jpg
Alzheimer's & Dementia誌に2022年12月20日ウェブ掲載された、
認知症の初期症状とその後の経過との関連についての論文です。

これは科学系の報道記事で見つけたのですが、
元の論文と称する物を見てみると、
学会のポスター発表の採録でした。
興味深い内容なのでご紹介しますが、
査読のある論文のようなものとは基本的に違いますので、
その点はご理解の上お読みください。

アルツハイマー型認知症の初期症状は、
多くは物忘れから始まります。

ただ、物忘れ自体は認知症ではない、
生理的な老化においても見られる症状です。

たとえば、言葉が出なくなる失語や、
知っている道で迷子になってしまう実行機能障害、
物の真ん中や左右が分からなくなる視空間認知障害、
などの病的な症状とはその質において違いがあります。

それでは、物忘れから始まる認知症と、
他の症状から始まる認知症とでは、
その経過において違いがあるのでしょうか?

今回の研究はアメリカにおいて、
死体の解剖を行って確定診断された、
認知症の事例2422例を対象として、
その初期症状と症状経過との関連を比較検証しています。

認知症は、
アルツハイマー型認知症と、レビー小体型認知症、両者の混合型認知症の、
3種類が診断されています。
物忘れが初期症状であると、
言語機能障害が初期症状であった場合と比較して、
3種類いずれの認知症においても、
有意にその進行速度が遅くなっていました。
また、初期症状が実行機能障害である場合には、
アルツハイマー型認知症と混合型認知症において、
初期症状が視空間認知機能障害である場合には、
混合型認知症において、
初期症状が物忘れである場合より、
その進行が速くなっていました。

つまり、物忘れが初期症状である場合は、
それが生理的なものではなく認知症によるものであっても、
その進行は緩やかである可能性が高く、
その一方で失語など別の症状で始まる認知症は、
より進行が早い可能性が高いという結果です。

このデータは診断が解剖所見である点で信頼性が高く、
今後正式の査読のある論文の形で、
発表されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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