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新型コロナワクチンの教訓 [科学検証]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は保育園の検診や産業医面談で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナワクチンの危険な話.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2023年2月9日掲載された解説記事ですが、
「2価新型コロナワクチンの教訓」と題されていて、
オミクロン株対応2価ワクチンの有効性についての内容です。

新型コロナウイルス感染症の予防のために、
迅速に開発されたワクチンは、
特にファイザー・ビオンテック社とモデルナ社による、
2種類のmRNAワクチンに関しては、
少なくても短期的には高い有効性が確認されています。
ただ、それはデルタ株の流行までの話で、
オミクロン株の感染に対しては、
感染予防効果はそれ以前の変異株と比較すると低く、
重症化予防効果しか期待出来ないのが実際です。

これはそれまで使用されていたワクチンが、
最初に中国の武漢で同定されたウイルス抗原を元にして作られたもので、
オミクロン株のスパイク蛋白とは、
30を超える変異が見つかっていることが、
その原因と考えられています。

そこで、オミクロン株のBA.1に対するワクチンが作られ、
続いて、BA.4とBA.5に対するワクチンが作られました。

しかし…
2022年11月22日に公表されたCDCによる報告によると、
オミクロン株のBA.4とBA.5を含む新型コロナワクチンを、
通常ワクチン接種後2、3か月で追加接種した時の
2か月以内の有症状感染の上乗せの予防効果は、
28から31%と算出されています。
これが通常ワクチン接種後8か月を超えて接種された場合には、
上乗せの予防効果は43から56%となっていました。
これはオミクロン対応のワクチンではなく、
従来型のワクチンを追加接種した場合と、
あまり差のない結果です。
実際従来型のワクチン接種後に、
オミクロン対応の2価ワクチンを追加接種した場合と、
従来のワクチンを追加接種した場合とで、
オミクロン株に対する中和抗体の上昇には、
有意な差はなかった、
という報告もあるのです。

本来は流行株に一致した抗原を含むワクチンを接種すれば、
抗体上昇は数倍から数十倍以上に達すると想定されていました。
それが、結果としては、
従来型のワクチンを追加接種した場合と比較して、
上昇するにしても軽度に留まり、
しかもその持続は数か月以内と、
非常に短いものでした。

何故こうした現象が起こったのでしょうか?

上記解説記事によると、
一番可能性の高い想定は、
従来型ワクチンを複数回接種することにより、
抗体産生の方向性が従来型抗原を主体としたものに規定され、
オミクロン株の抗原刺激が加わっても、
一部がそれにより変化しただけで、
免疫の主体は従来型に対するものから変わらなかったのではないか、
という推測がされています。
これはimprintingと呼ばれる現象です。
今回使用されたオミクロン対応のワクチンは、
トータルな抗原量は従来型のワクチンと同じで、
オミクロン由来の抗原と従来型の抗原に、
半分ずつ分けていたのですが、
オミクロン株由来の抗原のみのワクチンに、
した方が良かったのではないかとも指摘されています。

抗原変異のスピードは速く、
BA4.もBA5.も流行の主体から退場し、
今ではオミクロン株から派生して、
別の変異株が世界的に感染の主体となっています。

現行日本ではインフルエンザの感染の方が、
「感冒症状」の主体となり、
クリニック周辺では、
新型コロナは時々見かけるくらい、
という現状です。

今後のワクチンの開発や修正の方向性は、
今回の知見を教訓として、
感染症毎に別個の対応がなされる必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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