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抗うつ剤の慢性疼痛への有効性は? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
抗うつ剤の慢性疼痛への有効性は?.jpg
British Medical Journal誌に、
2023年2月1日ウェブ掲載された、
抗うつ剤の慢性疼痛への有効性を再検証した論文です。

腰痛や頭痛など身体を苦しめる痛みの多くは、
原因を特定することが出来ない慢性疼痛です。

こうした痛みは従来、
アセトアミノフェンや、
非ステロイド系消炎鎮痛剤などの、
所謂「痛み止め」で治療することが多かったのですが、
近年鎮痛剤の臓器障害などの有害事象や、
依存性などが問題となるようになり、
それに代わって使用頻度が増しているのが、
三環系抗うつ剤やSSRI、SNRIなどの抗うつ剤です。

慢性疼痛では中枢での痛みへの感受性の亢進があり、
それが痛みを強く感じさせている、
という側面があります。
抗うつ剤には脳内ホルモンを調整して、
その感受性の亢進を抑制し、
痛みを緩和させる働きがあると想定されているのです。

ただ、慢性疼痛と一括りに言っても、
その内容は千差万別ですが、
その性質に関わらず抗うつ剤は、
やや漫然と使用されているという側面があります。

実際に慢性疼痛に対する抗うつ剤の有効性は、
どの程度実証されているものなのでしょうか?

今回の研究は、
この分野におけるこれまでの主だった臨床データを、
俯瞰的に検証するシステマティックレビューの解析という手法で、
この問題の再検証を行っているものです。

これまでの156の個別の臨床研究に含まれる、
25000人以上の患者データに基づいて、
26のシステマティックレビューが発表されています。
そこにおいては、
8種類の系統の抗うつ剤の、
22種類の慢性疼痛に対する有効性が、
42種類の偽薬との比較において検証されています。

このうち11種類の比較試験において、
抗うつ剤の疼痛への有効性が示されていて、
そのうちの4試験は中等度の信頼性のあるデータです。
これはいずれもSNRIによるもので、
腰痛、術後疼痛、神経障害性疼痛、線維筋痛症に対する有効性です。
それ以外の31種類の比較試験では、
5種類で有効性は確認されず、
26種類では有効性は明確なものとは言えませんでした。

このように、
これまでに多くの臨床試験が施行されていますが、
精度の高い臨床試験で有効性が確認された研究は、
それほど多くある訳ではなく、
一部の疼痛に対する、
1系統の抗うつ剤(SNRI)以外の有効性は、
明確になっているとは言えません。

従って、現状のデータに基づいて考える上では、
慢性疼痛への抗うつ剤の使用は、
原則SNRI(商品名でイフェクサー、サインバルタ、トレドミンなど)に限って、
その有害事象にも留意しつつ慎重に行うことが、
適切と考える必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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madaraoppo

いつも興味深い記事をありがとうございます。
ちょうど心療内科でサインバルタを貰ってきたところです。鬱でアモキサンが出荷停止になったため、サインバルタに変更となりました。
整形外科で肩と腰の痛みでジクトルテープを処方してもらっていましたが、サインバルタを飲むようになって、何故か痛みが消えています!
しかし、疼痛のためにSNRIを処方するのは大変危険だと思います。
私は色々な抗うつ剤を飲んで来ましたが、疼痛のために抗うつ剤を使うなんて理解できません。眠気、自動車運転への影響、もの忘れ、その他副作用、断薬した時の離脱症状の厳しさなどを考えると、抗うつ剤を外科的症状に使うべきではないと考えます。
by madaraoppo (2023-02-04 11:28) 

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