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物忘れ予防のための生活習慣の効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は訪問診療などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
健康な生活と認知症予防.jpg
British Medical Journal誌に、
2023年1月25日ウェブ掲載された、
加齢に伴う物忘れに対する、
生活習慣の影響についての論文です。

認知症は多くが物忘れから始まりますが、
加齢に伴う物忘れ自体が、
病気ということではありません。

加齢に伴って徐々に記憶を留めて置く能力が低下し、
新しいことを覚えることが難しくなり、
また短い時間で確認した事項を忘れてしまうことが多くなるのは、
「生理的な範囲の加齢現象」というように考えられています。

そうは言っても、
加齢に伴う物忘れを予防したい、
記憶の働きを若いままで保ちたい、
というのは、
殆どの方が希望していることではないかと思います。

認知症とその前段階である軽度認知機能障害の予防のためには、
食生活や運動、禁煙や節酒などの、
所謂「健康的な生活習慣」が、
重要であることが、
これまでの多くの疫学データから分かっています。

ただ、これは病気としての認知症のリスクについてで、
生理現象としての物忘れは含まれていません。

それでは病的ではない自然の物忘れの予防にも、
生活習慣の改善は有効なのでしょうか?

今回の研究は中国において、
60歳以上の認知機能低下のない一般住民に、
食生活や運動習慣、社会生活などの生活習慣の調査を施行。
またアルツハイマー病の遺伝的リスクとして知られている、
アポE遺伝子のε4という変異の有無を検査し、
その後の物忘れの進行と認知機能低下に対する、
生活習慣の影響を検証しています。

対象は平均年齢が72.23歳の29072名で、
10年を超える長期の経過観察を行っています。

生活習慣としては、
野菜や魚、食物繊維を多く摂り、動物性脂肪を控えるなど、
健康長寿に結びつくと考えられている食生活、
1週間に中等度までの強度であれば150分以上の運動習慣、
地域の活動などへの週2回以上の社会参加、
知的ゲームをするなどの週に2回以上の脳を使う活動、
喫煙や飲酒の有無の6項目が取り上げられ、
悪い状態(健康的な項目が皆無か1項目のみ)に対する、
良い状態(上記項目の4項目以上で健康的)の、
物忘れに対する影響を検証しています。

その結果、
生活習慣が悪い状態と比較して良い状態を維持していると、
物忘れの長期の進行が、
有意に抑制されることが確認されました。
これはアポEの遺伝子変異のあるなしで違いはなく、
アポEε4陽性群でも同様の効果が認められました。

生活習慣が悪い状態に比較して良い状態であると、
軽度認知機能障害のリスクは29%(95%CI:0.68から0.73)、
認知症と診断されるリスクは89%(95%CI:0.10から0.12)、
いずれも有意に低下していました。
個別の生活習慣毎に見ると、
最もその有効性が高かったのが食事で、
次に脳を使う活動の習慣、運動習慣の順になっていました。

このように、
一般的に良い健康習慣とされる、
食事、運動、禁煙などの生活習慣を継続することにより、
認知症のリスクのみならず、
病気ではない物忘れの進行も予防が可能であることが、
今回のデータからは明確に示されていて、
脳の働きの維持のためには、
生活習慣の重要性が大きなものであることは、
ほぼ間違いがないと言って良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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