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急性虫垂炎手術後の抗菌剤使用期間 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
虫垂炎術後の抗菌剤使用期間.jpg
Lancet誌に2023年1月17日ウェブ掲載された、
複雑性虫垂炎の術後抗菌剤治療の治療期間についての論文です。

俗に「盲腸」と呼ばれている急性虫垂炎は、
非常に一般的な腹部感染症で、
その炎症が虫垂内に留まっている、
単純性虫垂炎の場合には、
抗菌剤のみにて保存的治療をすることも多く、
壊死や穿孔、膿瘍などが疑われる所見が認められる、
複雑性虫垂炎では、
通常抗菌剤治療に続いて虫垂切除術が施行されます。

ここで1つの問題は、
術後の抗菌剤治療をどのくらいの期間行うべきか、
という点にあります。

手術に伴い、感染性の合併症が生じるリスクがあり、
それを低減する目的で、
術後に抗菌剤の投与が行われます。
現状一般診療においては、
3から5日程度の経静脈的治療が行われ、
退院時に経口の抗菌剤がまた数日処方されることが多いのですが、
最近では抗菌剤による副作用や有害事象、
また耐性菌の増加といった問題が重視され、
より短期間に留めるべき、
という意見があります。

そこで今回の研究ではオランダの15か所の病院において、
複雑性虫垂炎で手術を施行する患者、
トータル1066例をくじ引きで2つの群に分けると、
一方は通常治療として5日間の抗菌剤の使用を行い、
もう一方はより短期の2日間の抗菌剤治療に留めて、
その後の経過を比較検証しています。
抗菌剤はセフロキシムもしくはセフトリアキソンとメトロニダゾールが、
使用されています。

その結果、
術後90日以内の感染性合併症と死亡を併せたリスクには、
両群で明確な差は認められませんでした。

これは海外のデータで、
日本でそのまま適応されるものではありませんが、
抗菌剤の使用が術後であってもより短期間に制限される流れは、
今後より加速することになりそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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