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生活の中での身体活動が生命予後に与える影響について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニック石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ウェアラブル端末による運動評価.jpg
Nature Medicine誌に、
2022年12月掲載された、
日々の生活の中でのちょっとした運動の積み重ねが、
意外に大きな健康影響を与えている、
という興味深い報告です。

運動の習慣が健康に良い、というのは、
一般にも広く認識されている考え方ですし、
それを裏付けるデータも多く報告されています。

ただ、この場合の運動というのは、
本人が「運動をしよう」という意識を持って、
ある程度のまとまった時間を掛けて行う活動のことです。

しかし、運動しようという意思を持っていなくても、
生活をしたり仕事をしたりする中で、
多くの人が意識はせずとも身体を動かしています。

たとえば、
ちょっと階段を上の階まで登る、とか、
会議まで時間がないので、
ミーティングルームまで少し早足で歩く、
少し歩いて買い物に出掛け、
結構重い荷物を持って、
帰りの道を歩く、
というような活動です。

こうした活動は、
せいぜい数分で終わることも多く、
それが1日に数回あったからと言って、
大したエネルギーの消費に結び付くという訳ではありません。

それでも、
1日中ゴロゴロしていたり、
全く外出もしないという生活と比べれば、
それなりに活動的ではあるとも言えます。

こうしたちょっとした身体活動に、
果たしてどの程度の健康効果があるのでしょうか?

これまであまりそうしたちょっとした身体活動の評価を、
真面目に行ったような研究はありませんでした。

それは、そんなことは些細なことだ、
と思われていた、という側面もありますし、
これまでそうしたちょっとした身体活動を、
定量的に測定するような簡便な方法がなかった、
という点にも理由がありそうです。

近年アップルウォッチのような、
所謂ウェアラブル端末の進歩によって、
日々のちょっとした身体活動を、
簡単に記録することが可能となりました。

今回の研究はそうしたウェアラブル端末に使用可能な
身体活動を記録するソフトを活用して、
運動習慣のない一般住民の身体活動のパターンと、
生命予後との関連を検証しているものです。

対象は有名なイギリスのUKバイオバンクに登録されている、
運動習慣のない中高年の一般住民25241名で、
日常の中でのちょっとした身体活動と、
平均6.9年の観察期間中における、
総死亡や心血管疾患による死亡、
癌による死亡との関連を比較検証しています。

その結果、
日常生活の中での短時間の身体活動の量が多いほど、
運動習慣はなくても、
総死亡のリスクも心血管疾患による死亡のリスクも、
癌による死亡のリスクも、
いずれも低下することが確認されました

平均で1日3回程度、1回1から2分程度の、
階段を上ったり、早足で歩いたりする身体活動により、
何もしない場合と比較して、
総死亡のリスクと癌による死亡のリスクは38から40%、
心血管疾患による死亡のリスクは48から49%も低下が認められました。

これまで、
ある程度まとまった運動習慣であるとか、
1日数千歩を超えるような歩行などで、
達成可能と想定されていた生命予後の改善が、
実はこうしたちょっとした日々の身体活動の積み重ねで、
達成可能であることが示されたのです。

勿論筋力を増進させるためや、
内臓脂肪を減少させるという目的のためには、
より負荷の大きな運動習慣が必要であることは間違いがありませんが、
意外にちょっとした身体活動だけで、
長生きには充分有効というのは、
運動習慣が大切と分かっていても、
なかなか実現できない多くの人にとっては、
非常に勇気づけられる結果で、
意識的にちょっと早足になったり、
荷物を持ったり、階段を上ったりすることが、
健康の秘訣であることは間違いがないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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