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降圧剤の使用とアルツハイマー型認知症リスク(2022年メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療となります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
降圧剤と認知症リスク.jpg
The Journal of Prevention of Alzheimer's Disease誌に、
2022年掲載された、
アルツハイマー型認知症と降圧剤治療との関係についての論文です。

高血圧は認知症のリスクであることが、
これまでの多くの疫学データで報告されています。
この場合の認知症というのは、
アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症など、
全てのタイプの認知症を含んだものです。

代表的な認知症のうち、
脳血管性認知症については、
脳の動脈硬化や脳梗塞などとの関連が深く、
高血圧は間違いなくそのリスクではありますから、
高血圧と脳血管性認知症との関連は、
理解のしやすいところです。

ただ、頻度的には最も多い認知症である、
アルツハイマー型認知症については、
脳血管性認知症のような強い関係が、
高血圧との間で証明されている、
という訳ではありません。

また、高血圧そのものが認知症のリスクであるとしても、
高血圧の治療との関連は、
それと同一であるとは限りません。

高血圧を治療中の患者さんにおいては、
血圧が低く維持されることが、
脳への血流を低下させるなどして、
むしろ認知症のリスクを高めるという可能性も、
否定は出来ないからです。

それでは、高血圧を薬で治療することは、
アルツハイマー型認知症の発症と、
どのように関係しているのでしょうか?

今回の研究は、
これまでの精度の高い臨床データをまとめて解析した、
メタ解析とシステマティックレビューという手法により、
高血圧の治療とアルツハイマー型認知症のリスクとの関連を検証したものです。

これまでの9つの臨床研究に含まれる、
1527410名のデータをまとめて解析したところ、
降圧剤を使用していない高血圧の患者と比較して、
降圧剤を使用している高血圧の患者では、
アルツハイマー型認知症の発症リスクが、
6%(95%CI: 0.90から0.99)有意に低下していました。

個々の降圧剤での比較を行ったところ、
ARB(アンジオテンシン2受容体拮抗薬)というタイプの降圧剤が、
最もリスクの低下が大きく、
他の降圧剤と比較して、
アルツハイマー型認知症のリスクを、
22%(95%CI:0.68から0.88)有意に低下させていました。

このように、
高血圧の治療により、
アルツハイマー型認知症のリスクは、
若干ながら低下し、
特にレニン・アンジオテンシン系の抑制が、
そのリスク低下に影響を与えている可能性が示唆されました。

そのメカニズムはまだ不明の点がありますが、
脳血管性認知症のみならずアルツハイマー型認知症においても、
高血圧のコントロールは、
その予防に結び付く可能性があると考えて、
大きな誤りはなさそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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