「スイート・マイホーム」(斎藤工監督映画版) [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
神津凛子さんのサイコホラーを原作にした、
斎藤工さん監督の新作映画が今公開されています。
家を舞台にして禍々しい存在のために、
家族が崩壊してしまうというような話は、
昔からホラーの定番ですが、
今回の作品は住宅展示場で契約した、
ありふれた注文住宅で暮らし始めた家族に、
幽霊の仕業のような奇怪な事件と、
身近な人が殺される殺人事件や脅迫などの、
人間によるとしか思えない事件の、
双方が振るかかるという点が面白いポイントです。
ミステリーとして考えるとすぐに底が割れてしまうプロットに、
超常現象(らしきもの)を組み合わせることで、
真相を読みづらくしているんですね。
映画版では家に苦しめられる主人公を、
当代きっての曲者役者、窪田正孝さんが演じていて、
いつもの癖の強い演技を全開で演じています。
最初はこんなに癖のある芝居だと、
主役に感情移入するのが難しいなあ、と思っていたのですが、
後半はそれがむしろ活きて来るというのか、
異様な世界への窪田さんが道案内的に見えるので不思議でした。
物語では窪田さんのお兄さんが、
窪塚洋介さんですから、
何とも癖の強い兄弟だと思いました。
結果として、窪田さんが主人公を演じているので、
結末がより見えにくくなった、
というように思います。
これが狙いであれば冴えていますね。
斎藤工さんは俳優の中でも、
映画の見識が高いことで知られていますから、
どうしても作品の期待は高くなります。
たとえば黒沢清監督のような、
どんな平凡な話であっても、
誰が観ても黒沢監督だと分かる個性的な絵作りを、
期待してしまったのですが、
結果的にはあまりそうした感じではなく、
原作を丁寧に分かり易く映像化する、
というスタイルで一貫していました。
全体に画面にチープな感じが漂うのと、
窪田さんの演技のせいか、
場面のお尻が常に長いのが残念な感じで、
獲物を狙う蜘蛛のカットとか、
役者の正面の象徴的アップなどを、
場面の間に挟む演出も、
何か自主映画的であまり乗れませんでした。
何処か一か所でも、
「あっ、ここ凄い」と言えるような絵が、
あれば印象はかなり変わるのではないでしょうか?
少し残念に感じました。
総じて悪くはないのですが、
映画館に足を運ぶほどのことはなく、
配信で充分かな、という感じの映画ではありました。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
神津凛子さんのサイコホラーを原作にした、
斎藤工さん監督の新作映画が今公開されています。
家を舞台にして禍々しい存在のために、
家族が崩壊してしまうというような話は、
昔からホラーの定番ですが、
今回の作品は住宅展示場で契約した、
ありふれた注文住宅で暮らし始めた家族に、
幽霊の仕業のような奇怪な事件と、
身近な人が殺される殺人事件や脅迫などの、
人間によるとしか思えない事件の、
双方が振るかかるという点が面白いポイントです。
ミステリーとして考えるとすぐに底が割れてしまうプロットに、
超常現象(らしきもの)を組み合わせることで、
真相を読みづらくしているんですね。
映画版では家に苦しめられる主人公を、
当代きっての曲者役者、窪田正孝さんが演じていて、
いつもの癖の強い演技を全開で演じています。
最初はこんなに癖のある芝居だと、
主役に感情移入するのが難しいなあ、と思っていたのですが、
後半はそれがむしろ活きて来るというのか、
異様な世界への窪田さんが道案内的に見えるので不思議でした。
物語では窪田さんのお兄さんが、
窪塚洋介さんですから、
何とも癖の強い兄弟だと思いました。
結果として、窪田さんが主人公を演じているので、
結末がより見えにくくなった、
というように思います。
これが狙いであれば冴えていますね。
斎藤工さんは俳優の中でも、
映画の見識が高いことで知られていますから、
どうしても作品の期待は高くなります。
たとえば黒沢清監督のような、
どんな平凡な話であっても、
誰が観ても黒沢監督だと分かる個性的な絵作りを、
期待してしまったのですが、
結果的にはあまりそうした感じではなく、
原作を丁寧に分かり易く映像化する、
というスタイルで一貫していました。
全体に画面にチープな感じが漂うのと、
窪田さんの演技のせいか、
場面のお尻が常に長いのが残念な感じで、
獲物を狙う蜘蛛のカットとか、
役者の正面の象徴的アップなどを、
場面の間に挟む演出も、
何か自主映画的であまり乗れませんでした。
何処か一か所でも、
「あっ、ここ凄い」と言えるような絵が、
あれば印象はかなり変わるのではないでしょうか?
少し残念に感じました。
総じて悪くはないのですが、
映画館に足を運ぶほどのことはなく、
配信で充分かな、という感じの映画ではありました。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
「アステロイド・シティ」 [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。
土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
映画作家としては、
当代アメリカを代表する1人である、
ウェス・アンダーソン監督の新作が、
今ロードショー公開されています。
初日に観たのですが、
映画館はほぼ満席の盛況でした。
ただ、大きないびきをかいて寝ている方もいて、
それを聴いて怒っているような人もいました。
これは1950年代のアメリカを舞台に、
「アステロイド・シティ」という3幕の戯曲の上演のドキュメンタリーを、
テレビで放映しているというモノクロパートと、
その戯曲自体が「映画」として上映されるカラーパートが、
交互に差し挟まれるという複雑な入れ子構造になっていて、
物語自体は西部の町を舞台に、
天才の少年少女が集まって表彰される、
科学賞の集まりに、
色々な背景を持つ家族が集まるという、
所謂グランドホテルスタイルの群像劇となっています。
物語をわざわざ「舞台劇」としているのは、
極彩色のポスターみたいな非現実的な映像を、
多分成立させるための仕掛けなんですね。
コーエン兄弟の映画に近いようなスタイルで、
こうした仕掛けをスムースに受け入れられるかどうかが、
この映画が好きになるかどうかの分かれ目、
という気がします。
かなりもってまわった感じの作劇なので、
個人的にはもっとストレートな映画の方が好きなのですが、
途中で衝撃的かつユーモラスに描かれる「未知との遭遇」が、
とても魅力的で素晴らしく、
大袈裟に言えば、
映画の新しい可能性を感じさせる場面に仕上がっていました。
それぞれの役柄を余裕を持って楽しそうに演じている、
豪華な出演者の競演も楽しく、
詩的でポップで美しい、
映画そのものの魅力に浸れる作品だと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。
土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
映画作家としては、
当代アメリカを代表する1人である、
ウェス・アンダーソン監督の新作が、
今ロードショー公開されています。
初日に観たのですが、
映画館はほぼ満席の盛況でした。
ただ、大きないびきをかいて寝ている方もいて、
それを聴いて怒っているような人もいました。
これは1950年代のアメリカを舞台に、
「アステロイド・シティ」という3幕の戯曲の上演のドキュメンタリーを、
テレビで放映しているというモノクロパートと、
その戯曲自体が「映画」として上映されるカラーパートが、
交互に差し挟まれるという複雑な入れ子構造になっていて、
物語自体は西部の町を舞台に、
天才の少年少女が集まって表彰される、
科学賞の集まりに、
色々な背景を持つ家族が集まるという、
所謂グランドホテルスタイルの群像劇となっています。
物語をわざわざ「舞台劇」としているのは、
極彩色のポスターみたいな非現実的な映像を、
多分成立させるための仕掛けなんですね。
コーエン兄弟の映画に近いようなスタイルで、
こうした仕掛けをスムースに受け入れられるかどうかが、
この映画が好きになるかどうかの分かれ目、
という気がします。
かなりもってまわった感じの作劇なので、
個人的にはもっとストレートな映画の方が好きなのですが、
途中で衝撃的かつユーモラスに描かれる「未知との遭遇」が、
とても魅力的で素晴らしく、
大袈裟に言えば、
映画の新しい可能性を感じさせる場面に仕上がっていました。
それぞれの役柄を余裕を持って楽しそうに演じている、
豪華な出演者の競演も楽しく、
詩的でポップで美しい、
映画そのものの魅力に浸れる作品だと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
「リボルバー・リリー」(行定勲監督映画版) [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。
土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
長浦京さんの同題のミステリー小説を映画化した、
綾瀬はるかさん主演の話題作が、
今ロードショー公開されています。
これは大正時代を舞台にして、
伝説の女殺し屋が帝国陸軍の陰謀から、
少年を守って戦うという荒唐無稽なお話で、
「グロリア」や「レオン」みたいな感じもありますし、
「るろうに剣心」の女主人公版を狙った、
というような感じもあります。
この映画は評判は散々で、
お客さんも入っていないようですが、
個人的な感想としては、
かなり頑張って作っているな、と思いましたし、
確かにアクションはかなりトホホの感じで、
どのような映画にしたいのかも、
絞り切れていない感じはありましたが、
日本の大作娯楽映画というジャンルとしては、
水準以上の仕上がりにはなっていたと思います。
鈴木清順監督みたいな馬鹿馬鹿しさがあるでしょ。
女殺し屋というジャンル物を、
徹底した様式美で撮ろう、という趣旨ですよね。
だから、拳銃をぶっ放すと敵だけがバタバタ倒れて、
敵の弾は一切当たらない、というのは、
それはそれでいいんですよね。
ただ、敵の弾なんて当たらなくていい筈なのに、
最後は主人公は血まみれになって、
それでいて全然死にそうではないので、
ちょっと、どうしたかったのか分からないな、
というような気はするのです。
ストーリーは決して悪くないんですよね。
見せ場の構成も悪くない感じだし。
最初に列車の活劇があって、
脱出すると草原でまた活劇、というのはいいですよね。
ラストは霧の中での撃ち合いから、
段々霧が晴れて集団戦に持ち込む、
というのも、行定監督らしい様式美だったと思います。
ただ、アクションがねえ…
最初の列車の場面から、
何かとても間抜けでセンスがないんですよね。
そこは「るろうに剣心」との致命的な違いですね。
それから悪役が弱いんですね。
そこも「るろうに剣心」との違いで、
もっとアクの強い、怪物みたいな敵が欲しかったですね。
キャストは皆好演と言って良いのですが、
綾瀬さんがね、何と言うのか、
こうしたどシリアスは、
ちょっと厳しい感じなんですね。
何処か真面目にやっていても、
それがかくし芸の演技、みたいな感じがあるのです。
総じて、美術にしても映像にしても、
相当頑張った映画なのですが、
監督がアクションに不慣れな感じが、
ちょっと致命的になってしまったかな、
という感じの映画でした。
でも、映画館ではガッカリですが、
ちょっとカルト的な雰囲気はあって、
配信で観直すと、
結構何度も見てしまうような、
そんな中毒性はある作品だと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。
土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
長浦京さんの同題のミステリー小説を映画化した、
綾瀬はるかさん主演の話題作が、
今ロードショー公開されています。
これは大正時代を舞台にして、
伝説の女殺し屋が帝国陸軍の陰謀から、
少年を守って戦うという荒唐無稽なお話で、
「グロリア」や「レオン」みたいな感じもありますし、
「るろうに剣心」の女主人公版を狙った、
というような感じもあります。
この映画は評判は散々で、
お客さんも入っていないようですが、
個人的な感想としては、
かなり頑張って作っているな、と思いましたし、
確かにアクションはかなりトホホの感じで、
どのような映画にしたいのかも、
絞り切れていない感じはありましたが、
日本の大作娯楽映画というジャンルとしては、
水準以上の仕上がりにはなっていたと思います。
鈴木清順監督みたいな馬鹿馬鹿しさがあるでしょ。
女殺し屋というジャンル物を、
徹底した様式美で撮ろう、という趣旨ですよね。
だから、拳銃をぶっ放すと敵だけがバタバタ倒れて、
敵の弾は一切当たらない、というのは、
それはそれでいいんですよね。
ただ、敵の弾なんて当たらなくていい筈なのに、
最後は主人公は血まみれになって、
それでいて全然死にそうではないので、
ちょっと、どうしたかったのか分からないな、
というような気はするのです。
ストーリーは決して悪くないんですよね。
見せ場の構成も悪くない感じだし。
最初に列車の活劇があって、
脱出すると草原でまた活劇、というのはいいですよね。
ラストは霧の中での撃ち合いから、
段々霧が晴れて集団戦に持ち込む、
というのも、行定監督らしい様式美だったと思います。
ただ、アクションがねえ…
最初の列車の場面から、
何かとても間抜けでセンスがないんですよね。
そこは「るろうに剣心」との致命的な違いですね。
それから悪役が弱いんですね。
そこも「るろうに剣心」との違いで、
もっとアクの強い、怪物みたいな敵が欲しかったですね。
キャストは皆好演と言って良いのですが、
綾瀬さんがね、何と言うのか、
こうしたどシリアスは、
ちょっと厳しい感じなんですね。
何処か真面目にやっていても、
それがかくし芸の演技、みたいな感じがあるのです。
総じて、美術にしても映像にしても、
相当頑張った映画なのですが、
監督がアクションに不慣れな感じが、
ちょっと致命的になってしまったかな、
という感じの映画でした。
でも、映画館ではガッカリですが、
ちょっとカルト的な雰囲気はあって、
配信で観直すと、
結構何度も見てしまうような、
そんな中毒性はある作品だと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
「キングダム 運命の炎」 [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
漫画の「キングダム」を実写映画化した、
シリーズの第3弾が、
今ロードショー公開されています。
これは多分今漫画の実写映画を監督したら、
当代随一と言って良い、
佐藤信介監督のもと豪華キャストが集結した、
日本映画としては破格の娯楽連続活劇映画で、
勿論海外の同種の作品や娯楽大作と比較すれば、
予算は多分10分の1かそれ以下くらいでしょうから、
画格として見劣りがするのは仕方がないのですが、
「安っぽさ上等」と割り切って、
その中で最善の娯楽を観客に提供しよう、
という姿勢が素直に好感が持てます。
その分を弁えた演出が、
おそらく佐藤監督の最も優れた資質のように、
個人的には思います。
1作目は続編があるかどうかは不明ですから、
その中で完結する、という姿勢で作られていましたが、
2作目からは完全に連続活劇というパターンで、
マーベルのシリーズ辺りをお手本として、
ラストには続編に繋がるカットを入れています。
作品の流れで見る限り、
おそらく次作の4作目で一区切り、
ということになりそうです。
今回はほぼほぼ2部作の前半、という感じの作りになっていて、
それを知らないで観ると、
「えっ、これで終わりなの…」という感じにはなると思います。
本来は○○編パート1のようにするべきだったと思いますが、
集客を気にしてそこに触れていないのが、
やや姑息な感じはします。
ただ、それを別にすれば、
前半と後半を分けた構成にしても、
10万単位の兵が激突する戦場を描くという大風呂敷を、
曲りなりにも絵として成立させた力業にしても、
これまでのシリーズで培われた経験が、
良く活きているという気がします。
かなりカリカチュアされたキャラクターが登場する原作で、
それを活かしてリアルにし過ぎない、
という実写化の工夫がいいですよね。
これ、リアルにしたら、
とてもハリウッド製や中国製にはかなわない素材でしょ。
そこに少し遊びを入れることで、
チープさを受け入れやすくして、
バランスを取っているんですね。
これはかなり高度な綱渡り的な演出で、
佐藤監督のこれぞ真骨頂という感じがしました。
いずれにしても、いつになるのか分かりませんが、
次作の公開も心待ちにしたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
漫画の「キングダム」を実写映画化した、
シリーズの第3弾が、
今ロードショー公開されています。
これは多分今漫画の実写映画を監督したら、
当代随一と言って良い、
佐藤信介監督のもと豪華キャストが集結した、
日本映画としては破格の娯楽連続活劇映画で、
勿論海外の同種の作品や娯楽大作と比較すれば、
予算は多分10分の1かそれ以下くらいでしょうから、
画格として見劣りがするのは仕方がないのですが、
「安っぽさ上等」と割り切って、
その中で最善の娯楽を観客に提供しよう、
という姿勢が素直に好感が持てます。
その分を弁えた演出が、
おそらく佐藤監督の最も優れた資質のように、
個人的には思います。
1作目は続編があるかどうかは不明ですから、
その中で完結する、という姿勢で作られていましたが、
2作目からは完全に連続活劇というパターンで、
マーベルのシリーズ辺りをお手本として、
ラストには続編に繋がるカットを入れています。
作品の流れで見る限り、
おそらく次作の4作目で一区切り、
ということになりそうです。
今回はほぼほぼ2部作の前半、という感じの作りになっていて、
それを知らないで観ると、
「えっ、これで終わりなの…」という感じにはなると思います。
本来は○○編パート1のようにするべきだったと思いますが、
集客を気にしてそこに触れていないのが、
やや姑息な感じはします。
ただ、それを別にすれば、
前半と後半を分けた構成にしても、
10万単位の兵が激突する戦場を描くという大風呂敷を、
曲りなりにも絵として成立させた力業にしても、
これまでのシリーズで培われた経験が、
良く活きているという気がします。
かなりカリカチュアされたキャラクターが登場する原作で、
それを活かしてリアルにし過ぎない、
という実写化の工夫がいいですよね。
これ、リアルにしたら、
とてもハリウッド製や中国製にはかなわない素材でしょ。
そこに少し遊びを入れることで、
チープさを受け入れやすくして、
バランスを取っているんですね。
これはかなり高度な綱渡り的な演出で、
佐藤監督のこれぞ真骨頂という感じがしました。
いずれにしても、いつになるのか分かりませんが、
次作の公開も心待ちにしたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」(2023年映画版) [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
少し前ですが、
NHKで放映された「岸辺露伴」のドラマの映画版が公開されました。
これは実際にルーヴル美術館の依頼で創作された、
彩色の特別版単行本が原作で、
長編映画にするにはやや淡泊な内容のために、
人物を増やすなど少し改変して映像化されています。
テレビから続投の、
高橋一生さんと飯豊まりえさんのコンビがとても良く、
原作とは雰囲気は全く違うのですが、
別個のリアリティを獲得しています。
ただ、原作の「スタンド」の可視化が、
ドラマでも映画でも省略されているので、
主人公の持つ能力の意味合いが、
不明瞭になってしまっているきらいがあります。
実際のルーヴル美術館で撮影されている点は、
とても贅沢で良いのですが、
映画としてはもう少し、
映画ならではの見せ場が欲しいと思いました。
基本的にイメージ重視の作品なので、
元のドラマのファンの方以外には、
あまりお勧めは出来ませんが、
ドラマや原作の予備知識のある方には、
まずまず楽しめる仕上がりにはなっていたように思います。
映像は美しいです。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
少し前ですが、
NHKで放映された「岸辺露伴」のドラマの映画版が公開されました。
これは実際にルーヴル美術館の依頼で創作された、
彩色の特別版単行本が原作で、
長編映画にするにはやや淡泊な内容のために、
人物を増やすなど少し改変して映像化されています。
テレビから続投の、
高橋一生さんと飯豊まりえさんのコンビがとても良く、
原作とは雰囲気は全く違うのですが、
別個のリアリティを獲得しています。
ただ、原作の「スタンド」の可視化が、
ドラマでも映画でも省略されているので、
主人公の持つ能力の意味合いが、
不明瞭になってしまっているきらいがあります。
実際のルーヴル美術館で撮影されている点は、
とても贅沢で良いのですが、
映画としてはもう少し、
映画ならではの見せ場が欲しいと思いました。
基本的にイメージ重視の作品なので、
元のドラマのファンの方以外には、
あまりお勧めは出来ませんが、
ドラマや原作の予備知識のある方には、
まずまず楽しめる仕上がりにはなっていたように思います。
映像は美しいです。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
「イノセンツ」 [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診ですが、
産業医の研修会などの予定です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
公開されることは珍しい、
ノルウェー製のサイキックホラーで、
大友克洋さんの名作「童夢」にインスパイアされた作品です。
観てみると、
「悪役」の造形には違いがあるものの、
全体のコンセプトやラストなどは、
ほぼほぼ「童夢」と同一の部分があります。
団地に住む子供同士のサイキックバトルで、
大人は子供の超能力で操られるのが主な役割という感じで、
あまり重要な役割を果たしていません。
子供の個々の個性や人物描写、
破滅に至る段取りがなかなか巧みに出来ていて、
スリリングで見ごたえがあります。
ハリウッド製や韓国製、邦画とは明らかに肌合いが違い、
倫理観にも違いが感じられます。
日本で作るのは絶対無理、という感じの作品です。
緊張感の出し方や全体のトーンは、
クローネンバーグの傑作サイキックバトル映画、
「スキャナーズ」を彷彿とさせます。
しかし、「スキャナーズ」的な対決を期待してしまうと、
全ては抑制的で、
超能力と言っても、
水面の波紋や砂の動きなどで表現されるだけなので、
ちょっと物足りない感じは正直あります。
個人的には前半にかなり期待をしてしまったので、
後半は「これで終わり…?」という、
虚脱感を味わいました。
それでも、北欧映画の雰囲気はなかなか新鮮で、
子役の演技も見事なものなので、
あまり過度の期待を持たずに観るのであれば吉だと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診ですが、
産業医の研修会などの予定です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
公開されることは珍しい、
ノルウェー製のサイキックホラーで、
大友克洋さんの名作「童夢」にインスパイアされた作品です。
観てみると、
「悪役」の造形には違いがあるものの、
全体のコンセプトやラストなどは、
ほぼほぼ「童夢」と同一の部分があります。
団地に住む子供同士のサイキックバトルで、
大人は子供の超能力で操られるのが主な役割という感じで、
あまり重要な役割を果たしていません。
子供の個々の個性や人物描写、
破滅に至る段取りがなかなか巧みに出来ていて、
スリリングで見ごたえがあります。
ハリウッド製や韓国製、邦画とは明らかに肌合いが違い、
倫理観にも違いが感じられます。
日本で作るのは絶対無理、という感じの作品です。
緊張感の出し方や全体のトーンは、
クローネンバーグの傑作サイキックバトル映画、
「スキャナーズ」を彷彿とさせます。
しかし、「スキャナーズ」的な対決を期待してしまうと、
全ては抑制的で、
超能力と言っても、
水面の波紋や砂の動きなどで表現されるだけなので、
ちょっと物足りない感じは正直あります。
個人的には前半にかなり期待をしてしまったので、
後半は「これで終わり…?」という、
虚脱感を味わいました。
それでも、北欧映画の雰囲気はなかなか新鮮で、
子役の演技も見事なものなので、
あまり過度の期待を持たずに観るのであれば吉だと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
「Pearl パール」 [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
新しい感覚で過去のホラーをリクリエートした、
シリーズの第2弾として、
1918年を舞台とした「パール」が公開されています。
前作の「X」は「悪魔のいけにえ」のトリビュートだったのですが、
今回は1960年代から70年代の、
H.Gルイスやアンディ・ミリガンなどによる、
悪趣味な残酷シーンを見せ場とするスプラッター映画が、
そのベースになっているように思います。
その元祖とされるH.G.ルイスの「血の祝祭日」の製作が1963年。
今観てもかなり異様な凄味のある映画ですが、
当時としては尋常ではないくらい突飛な映画ではありました。
ただ、勿論悪趣味の極みのような作品で、
まともに評価される性質のものではありません。
ただ、意外にその設定などの部分は、
サイコスリラー的な深みもあって、
人間ドラマとして無視出来ない切実さもあったのです。
今回の映画はスペイン風邪が流行した1918年に舞台を取り、
強権的な母親と障害のある父親の介護で疲弊した少女が、
シリアルキラーに変貌する姿を描き、
即物的な残酷描写はルイスやミリガンに倣いつつ、
「オズの魔法使い」などのミュージカル映画の要素も取り込んで、
60年代スプラッターをリクリエーションしています。
悪趣味のツボは抑えつつ、
なかなか工夫された作品だと思います。
主役のミア・ゴスはもう、
新世代のホラークイーンの貫禄充分で、
過不足のない怪演を見せてくれます。
基本ラインはかつてのスプラッターですが、
ゴスの長回しで内面描写を入れたり、
アートっぽい趣向も取り入れて作品の底上げをしています。
ただ、鑑賞後の感想としては、
正直もう少し突き抜けたところ、
観客の予想を超えるような展開や場面が、
あっても良いのに、というようには感じました。
全体に予定調和的な物足りなさがあって、
「血の祝祭日」を最初に観た時のようなショックは、
この映画からは感じられません。
「オズの魔法使い」のトリビュートにしても、
たとえば松尾スズキさんの「マシーン日記」で、
最後にヒロインが見ていたドロシーになるという夢が、
非常に残酷な形で適う、という趣向があるのですが、
ああした、一見凡庸なモチーフが予想外のショックに繋がる、
というような仕掛けが欲しいですよね。
この作品にはそうしたところは全くなくて、
「ただ好きなものを並べてみただけ」という感じに見えるのが、
正直残念に感じました。
それから、1918年という設定なのに、
街の映画館で掛かっている映画がトーキーなんですね。
これは時代的にあり得ない、という気がするのですが、
あり得たのでしょうか?
その点は疑問でした。
そんな訳でやや趣向倒れに感じた作品でしたが、
非常に意欲的であることは確かなので、
次回作には是非期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
新しい感覚で過去のホラーをリクリエートした、
シリーズの第2弾として、
1918年を舞台とした「パール」が公開されています。
前作の「X」は「悪魔のいけにえ」のトリビュートだったのですが、
今回は1960年代から70年代の、
H.Gルイスやアンディ・ミリガンなどによる、
悪趣味な残酷シーンを見せ場とするスプラッター映画が、
そのベースになっているように思います。
その元祖とされるH.G.ルイスの「血の祝祭日」の製作が1963年。
今観てもかなり異様な凄味のある映画ですが、
当時としては尋常ではないくらい突飛な映画ではありました。
ただ、勿論悪趣味の極みのような作品で、
まともに評価される性質のものではありません。
ただ、意外にその設定などの部分は、
サイコスリラー的な深みもあって、
人間ドラマとして無視出来ない切実さもあったのです。
今回の映画はスペイン風邪が流行した1918年に舞台を取り、
強権的な母親と障害のある父親の介護で疲弊した少女が、
シリアルキラーに変貌する姿を描き、
即物的な残酷描写はルイスやミリガンに倣いつつ、
「オズの魔法使い」などのミュージカル映画の要素も取り込んで、
60年代スプラッターをリクリエーションしています。
悪趣味のツボは抑えつつ、
なかなか工夫された作品だと思います。
主役のミア・ゴスはもう、
新世代のホラークイーンの貫禄充分で、
過不足のない怪演を見せてくれます。
基本ラインはかつてのスプラッターですが、
ゴスの長回しで内面描写を入れたり、
アートっぽい趣向も取り入れて作品の底上げをしています。
ただ、鑑賞後の感想としては、
正直もう少し突き抜けたところ、
観客の予想を超えるような展開や場面が、
あっても良いのに、というようには感じました。
全体に予定調和的な物足りなさがあって、
「血の祝祭日」を最初に観た時のようなショックは、
この映画からは感じられません。
「オズの魔法使い」のトリビュートにしても、
たとえば松尾スズキさんの「マシーン日記」で、
最後にヒロインが見ていたドロシーになるという夢が、
非常に残酷な形で適う、という趣向があるのですが、
ああした、一見凡庸なモチーフが予想外のショックに繋がる、
というような仕掛けが欲しいですよね。
この作品にはそうしたところは全くなくて、
「ただ好きなものを並べてみただけ」という感じに見えるのが、
正直残念に感じました。
それから、1918年という設定なのに、
街の映画館で掛かっている映画がトーキーなんですね。
これは時代的にあり得ない、という気がするのですが、
あり得たのでしょうか?
その点は疑問でした。
そんな訳でやや趣向倒れに感じた作品でしたが、
非常に意欲的であることは確かなので、
次回作には是非期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
「ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE」 [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
トム・クルーズの人気シリーズの最新作が、
今ロードショー公開されています。
今回は前後編の前編の公開ですが、
それでも2時間半を超える長尺です。
これはかなり面白かったですよ。
まあ、おバカにも分かるように作られた、
典型的なおバカ映画の超大作なのですが、
良い意味でのその能天気さ、おバカ加減がとても良い感じで、
殆どルパン三世のアニメを実写化したような世界観なのですが、
全体を統一した作品として見せるのではなく、
充実したアクションの見せ場を、
串団子のように次々と繰り出して、
その途中にはちょっとした休憩を挟む、
というような作りです。
それが観客の生理にも合っていて、なかなかいいんですよね。
2時間半を超えるとさすがに長い、と感じることが多いのですが、
今回はあまりそうした印象は持ちませんでした。
最初からスリリングなシーンをてんこ盛りで繰り出して、
まず空港の複雑な逃走劇に爆弾解除が絡むでしょ、
クロスワードのような複雑な構成が凄いですよね。
それから一呼吸おいて、
今度はローマのカーチェイスでしょ。
それからベニスに場所を変えて、
キャラが総登場して格闘の連鎖劇、
更にオリエント急行とアルプスを配して、
列車の密室と天空からの滑空が絡むという、
ダイナミズムも見ごたえがありました。
マクガフィンは、
合わさると十字架になる2本の鍵と、
世界を支配出来るAIのコードでしょ。
まあ極めて通俗的でおバカ対応ですよね。
「トップガン・マーヴェリック」のヒットが分かっているので、
もう若くないトムが、
敵にデジタルは支配されてしまっているので、
アナログで戦うという趣向で、
中高年の心も掴んでいます。
さすがですね。
別に新味はないのですがキャストも魅力的ですし、
映像のクオリティも高いので、
ちょっと贅沢な気分に浸ることが出来ます。
この点は最近同じ層をターゲットにしたと思われる、
「インディジョーンズ」より、
数段ワクワクする出来栄えになっていました。
唯一大好きなレベッカ・ファーガソン姉さんが、
あまり活躍しなかったのが残念でした。
この夏おそらく一番何も考えずに楽しめる娯楽作で、
夏休み映画としては、
ほぼ完璧と言っても言い過ぎではないのではないでしょうか?
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
トム・クルーズの人気シリーズの最新作が、
今ロードショー公開されています。
今回は前後編の前編の公開ですが、
それでも2時間半を超える長尺です。
これはかなり面白かったですよ。
まあ、おバカにも分かるように作られた、
典型的なおバカ映画の超大作なのですが、
良い意味でのその能天気さ、おバカ加減がとても良い感じで、
殆どルパン三世のアニメを実写化したような世界観なのですが、
全体を統一した作品として見せるのではなく、
充実したアクションの見せ場を、
串団子のように次々と繰り出して、
その途中にはちょっとした休憩を挟む、
というような作りです。
それが観客の生理にも合っていて、なかなかいいんですよね。
2時間半を超えるとさすがに長い、と感じることが多いのですが、
今回はあまりそうした印象は持ちませんでした。
最初からスリリングなシーンをてんこ盛りで繰り出して、
まず空港の複雑な逃走劇に爆弾解除が絡むでしょ、
クロスワードのような複雑な構成が凄いですよね。
それから一呼吸おいて、
今度はローマのカーチェイスでしょ。
それからベニスに場所を変えて、
キャラが総登場して格闘の連鎖劇、
更にオリエント急行とアルプスを配して、
列車の密室と天空からの滑空が絡むという、
ダイナミズムも見ごたえがありました。
マクガフィンは、
合わさると十字架になる2本の鍵と、
世界を支配出来るAIのコードでしょ。
まあ極めて通俗的でおバカ対応ですよね。
「トップガン・マーヴェリック」のヒットが分かっているので、
もう若くないトムが、
敵にデジタルは支配されてしまっているので、
アナログで戦うという趣向で、
中高年の心も掴んでいます。
さすがですね。
別に新味はないのですがキャストも魅力的ですし、
映像のクオリティも高いので、
ちょっと贅沢な気分に浸ることが出来ます。
この点は最近同じ層をターゲットにしたと思われる、
「インディジョーンズ」より、
数段ワクワクする出来栄えになっていました。
唯一大好きなレベッカ・ファーガソン姉さんが、
あまり活躍しなかったのが残念でした。
この夏おそらく一番何も考えずに楽しめる娯楽作で、
夏休み映画としては、
ほぼ完璧と言っても言い過ぎではないのではないでしょうか?
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
「1秒先の彼」(「1秒先の彼女」の日本版) [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
日本でも2021年に公開された台湾映画「1秒先の彼女」が、
男女を入れ替えるという奇策のクドカンの台本により、
「1秒先の彼」としてリメイクされました。
オリジナルは映画館で観ています。
ノスタルジックで心に残る良い映画でした。
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2021-08-07
あれを翻案するのか、芸がないな、
というのが企画を聞いた時の第一印象でした。
クドカンなら充分オリジナルに匹敵するラブストーリーを、
オリジナルで描ける筈だと思ったからです。
ただ、実際に観てみると、
これはこれでありかな、というように感じました。
原作のふんわりしてノスタルジックな雰囲気を、
結構上手く再現しているな、と感じましたし、
オリジナルを日本で鑑賞した場合の違和感を、
結構キレイに掬い取っているな、という感じがしたからです。
原作は女性に男性が運命的に執着する、
というお話なので、
ちょっとストーカー的なんですね。
それが原作の特徴でもあるので、
決して悪い訳ではないのですが、
日本公開時は拒否感を持った人も少なくなかったようです。
それが、男女を反転させることで、
ストーカー色がほぼなくなっているんですね。
なるほど巧みだと感心しました。
またオリジナルでは擬人化したヤモリとの対話があり、
このコメディ的な部分も違和感があったのですが、
今回それをラジオのDJとの対話にして、
日本ドラマ定番の趣向で違和感を消したのもさすがでした。
その一方でおかしくなってしまった部分もあって、
原作では男性がバス運転手なので、
彼だけに時間が止まるという奇跡が起こる、
ということで整合性があるのですが、
その設定を女性でカメラマンにしてしまったので、
バス運転手も止まった時間の外にいる、
ということになってしまい、
あまり意味もなく複数の人間が時間の外にいる、
というおかしなことになってしまいました。
これ、時間の外にいる、というのは、
要するに死んでいる、ということなんですね。
原作のニュアンスはそうしたことだと思うのです。
でも、クドカンの今回の台本では、
そうなってはおらず、
主人公の失踪した父親も、
生きている、という設定になっているので、
原作の生死の狭間を彷徨うような気分が、
消滅してしまったという残念さがありました。
総じて、かなり良い気分で観ることの出来た映画で、
こうした翻案もありだな、というように感じたのですが、
原作の独特の死生観のようなものが失われてしまったことは、
ちょっと残念でもあり、
その意味でオリジナルとは別物として、
楽しむ必要がありそうです。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
日本でも2021年に公開された台湾映画「1秒先の彼女」が、
男女を入れ替えるという奇策のクドカンの台本により、
「1秒先の彼」としてリメイクされました。
オリジナルは映画館で観ています。
ノスタルジックで心に残る良い映画でした。
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2021-08-07
あれを翻案するのか、芸がないな、
というのが企画を聞いた時の第一印象でした。
クドカンなら充分オリジナルに匹敵するラブストーリーを、
オリジナルで描ける筈だと思ったからです。
ただ、実際に観てみると、
これはこれでありかな、というように感じました。
原作のふんわりしてノスタルジックな雰囲気を、
結構上手く再現しているな、と感じましたし、
オリジナルを日本で鑑賞した場合の違和感を、
結構キレイに掬い取っているな、という感じがしたからです。
原作は女性に男性が運命的に執着する、
というお話なので、
ちょっとストーカー的なんですね。
それが原作の特徴でもあるので、
決して悪い訳ではないのですが、
日本公開時は拒否感を持った人も少なくなかったようです。
それが、男女を反転させることで、
ストーカー色がほぼなくなっているんですね。
なるほど巧みだと感心しました。
またオリジナルでは擬人化したヤモリとの対話があり、
このコメディ的な部分も違和感があったのですが、
今回それをラジオのDJとの対話にして、
日本ドラマ定番の趣向で違和感を消したのもさすがでした。
その一方でおかしくなってしまった部分もあって、
原作では男性がバス運転手なので、
彼だけに時間が止まるという奇跡が起こる、
ということで整合性があるのですが、
その設定を女性でカメラマンにしてしまったので、
バス運転手も止まった時間の外にいる、
ということになってしまい、
あまり意味もなく複数の人間が時間の外にいる、
というおかしなことになってしまいました。
これ、時間の外にいる、というのは、
要するに死んでいる、ということなんですね。
原作のニュアンスはそうしたことだと思うのです。
でも、クドカンの今回の台本では、
そうなってはおらず、
主人公の失踪した父親も、
生きている、という設定になっているので、
原作の生死の狭間を彷徨うような気分が、
消滅してしまったという残念さがありました。
総じて、かなり良い気分で観ることの出来た映画で、
こうした翻案もありだな、というように感じたのですが、
原作の独特の死生観のようなものが失われてしまったことは、
ちょっと残念でもあり、
その意味でオリジナルとは別物として、
楽しむ必要がありそうです。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
「君たちはどう生きるか」(宮崎駿監督新作) [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。
土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
宮崎駿監督の新作が7月14日公開されました。
余分な情報がないうちに観たかったので、
その初日に足を運びました。
徹底した秘密主義で製作され、
奇妙な鳥の絵と題名以外、
公開まで全ての情報が公開されない、
という稀有の公開方法で、
こうした映画は滅多にないので、
ご興味のある方は、
是非是非予備知識なく映画館に足を運んで頂くのが吉です。
ただ、多くの方が内容には失望されたと思いますし、
なかなか褒めることが難しいタイプの作品であることは確かです。
一番似ていると思ったのは、
最近の村上春樹さんの小説で、
次に似ていると思ったのは、
黒澤明監督の晩年の映画です。
要するに高齢者の特質が強く出ているタイプの創作です。
この幻想と現実と過去の記憶とが不分明に混ざり合う感じ、
そこに統一感を持たせられない感じ、
これが多分の老人の頭の中なのですね。
僕もほぼ老人なので大きなことは言えませんし、
僕の頭の中もそうなりつつあるのは実感しているのですが、
自分が自分であることの実感のようなものは、
徐々に後退していって、
感情の繊細な動きのようなものも、
枯渇してゆくのですね。
老人の感情というのは平淡で、
高齢者は怒りっぽく、
激高するようなところがしばしばあるのですが、
あれはおそらく「感情」ではないのですね。
意味もなく感情の連鎖とも関連のない「怒り」が、
急にマグマのように沸いて出るだけのものなのです。
この作品を観る人は、
主人公の心理の平淡さのようなものに、
当惑とイライラを覚えると思うのですが、
多分監督自身は主人公の心と一体化して、
その熱情のようなものを情熱的に描いているつもりなのですね。
でもそれがそうはならず、
何かボンヤリして単調なものになってしまうのが、
老人の哀しさというものなのだと思うのです。
ただ、そうした退屈さは承知の上で、
技巧的には青鷺の動きの1つ1つにしても、
油彩画のような背景の表現にしても、
まさに天才の筆致が息づいていることは強く感じます。
その意味で監督の集大成という表現は、
映像表現に限って見れば嘘ではありません。
それでいて残念ながら、
致命的に面白くない、というのは、
黒澤監督の晩年の映画や、
村上春樹さんの最近の小説と同じように、
それはもう仕方のないことなのだと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。
土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
宮崎駿監督の新作が7月14日公開されました。
余分な情報がないうちに観たかったので、
その初日に足を運びました。
徹底した秘密主義で製作され、
奇妙な鳥の絵と題名以外、
公開まで全ての情報が公開されない、
という稀有の公開方法で、
こうした映画は滅多にないので、
ご興味のある方は、
是非是非予備知識なく映画館に足を運んで頂くのが吉です。
ただ、多くの方が内容には失望されたと思いますし、
なかなか褒めることが難しいタイプの作品であることは確かです。
一番似ていると思ったのは、
最近の村上春樹さんの小説で、
次に似ていると思ったのは、
黒澤明監督の晩年の映画です。
要するに高齢者の特質が強く出ているタイプの創作です。
この幻想と現実と過去の記憶とが不分明に混ざり合う感じ、
そこに統一感を持たせられない感じ、
これが多分の老人の頭の中なのですね。
僕もほぼ老人なので大きなことは言えませんし、
僕の頭の中もそうなりつつあるのは実感しているのですが、
自分が自分であることの実感のようなものは、
徐々に後退していって、
感情の繊細な動きのようなものも、
枯渇してゆくのですね。
老人の感情というのは平淡で、
高齢者は怒りっぽく、
激高するようなところがしばしばあるのですが、
あれはおそらく「感情」ではないのですね。
意味もなく感情の連鎖とも関連のない「怒り」が、
急にマグマのように沸いて出るだけのものなのです。
この作品を観る人は、
主人公の心理の平淡さのようなものに、
当惑とイライラを覚えると思うのですが、
多分監督自身は主人公の心と一体化して、
その熱情のようなものを情熱的に描いているつもりなのですね。
でもそれがそうはならず、
何かボンヤリして単調なものになってしまうのが、
老人の哀しさというものなのだと思うのです。
ただ、そうした退屈さは承知の上で、
技巧的には青鷺の動きの1つ1つにしても、
油彩画のような背景の表現にしても、
まさに天才の筆致が息づいていることは強く感じます。
その意味で監督の集大成という表現は、
映像表現に限って見れば嘘ではありません。
それでいて残念ながら、
致命的に面白くない、というのは、
黒澤監督の晩年の映画や、
村上春樹さんの最近の小説と同じように、
それはもう仕方のないことなのだと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。