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「スイート・マイホーム」(斎藤工監督映画版) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
スイート・マイホーム.jpg
神津凛子さんのサイコホラーを原作にした、
斎藤工さん監督の新作映画が今公開されています。

家を舞台にして禍々しい存在のために、
家族が崩壊してしまうというような話は、
昔からホラーの定番ですが、
今回の作品は住宅展示場で契約した、
ありふれた注文住宅で暮らし始めた家族に、
幽霊の仕業のような奇怪な事件と、
身近な人が殺される殺人事件や脅迫などの、
人間によるとしか思えない事件の、
双方が振るかかるという点が面白いポイントです。

ミステリーとして考えるとすぐに底が割れてしまうプロットに、
超常現象(らしきもの)を組み合わせることで、
真相を読みづらくしているんですね。

映画版では家に苦しめられる主人公を、
当代きっての曲者役者、窪田正孝さんが演じていて、
いつもの癖の強い演技を全開で演じています。
最初はこんなに癖のある芝居だと、
主役に感情移入するのが難しいなあ、と思っていたのですが、
後半はそれがむしろ活きて来るというのか、
異様な世界への窪田さんが道案内的に見えるので不思議でした。
物語では窪田さんのお兄さんが、
窪塚洋介さんですから、
何とも癖の強い兄弟だと思いました。

結果として、窪田さんが主人公を演じているので、
結末がより見えにくくなった、
というように思います。
これが狙いであれば冴えていますね。

斎藤工さんは俳優の中でも、
映画の見識が高いことで知られていますから、
どうしても作品の期待は高くなります。

たとえば黒沢清監督のような、
どんな平凡な話であっても、
誰が観ても黒沢監督だと分かる個性的な絵作りを、
期待してしまったのですが、
結果的にはあまりそうした感じではなく、
原作を丁寧に分かり易く映像化する、
というスタイルで一貫していました。

全体に画面にチープな感じが漂うのと、
窪田さんの演技のせいか、
場面のお尻が常に長いのが残念な感じで、
獲物を狙う蜘蛛のカットとか、
役者の正面の象徴的アップなどを、
場面の間に挟む演出も、
何か自主映画的であまり乗れませんでした。

何処か一か所でも、
「あっ、ここ凄い」と言えるような絵が、
あれば印象はかなり変わるのではないでしょうか?

少し残念に感じました。

総じて悪くはないのですが、
映画館に足を運ぶほどのことはなく、
配信で充分かな、という感じの映画ではありました。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「アステロイド・シティ」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
アステロイド・シティ.jpg
映画作家としては、
当代アメリカを代表する1人である、
ウェス・アンダーソン監督の新作が、
今ロードショー公開されています。

初日に観たのですが、
映画館はほぼ満席の盛況でした。
ただ、大きないびきをかいて寝ている方もいて、
それを聴いて怒っているような人もいました。

これは1950年代のアメリカを舞台に、
「アステロイド・シティ」という3幕の戯曲の上演のドキュメンタリーを、
テレビで放映しているというモノクロパートと、
その戯曲自体が「映画」として上映されるカラーパートが、
交互に差し挟まれるという複雑な入れ子構造になっていて、
物語自体は西部の町を舞台に、
天才の少年少女が集まって表彰される、
科学賞の集まりに、
色々な背景を持つ家族が集まるという、
所謂グランドホテルスタイルの群像劇となっています。

物語をわざわざ「舞台劇」としているのは、
極彩色のポスターみたいな非現実的な映像を、
多分成立させるための仕掛けなんですね。
コーエン兄弟の映画に近いようなスタイルで、
こうした仕掛けをスムースに受け入れられるかどうかが、
この映画が好きになるかどうかの分かれ目、
という気がします。

かなりもってまわった感じの作劇なので、
個人的にはもっとストレートな映画の方が好きなのですが、
途中で衝撃的かつユーモラスに描かれる「未知との遭遇」が、
とても魅力的で素晴らしく、
大袈裟に言えば、
映画の新しい可能性を感じさせる場面に仕上がっていました。

それぞれの役柄を余裕を持って楽しそうに演じている、
豪華な出演者の競演も楽しく、
詩的でポップで美しい、
映画そのものの魅力に浸れる作品だと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「リボルバー・リリー」(行定勲監督映画版) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
リボルバー・リリー.jpg
長浦京さんの同題のミステリー小説を映画化した、
綾瀬はるかさん主演の話題作が、
今ロードショー公開されています。

これは大正時代を舞台にして、
伝説の女殺し屋が帝国陸軍の陰謀から、
少年を守って戦うという荒唐無稽なお話で、
「グロリア」や「レオン」みたいな感じもありますし、
「るろうに剣心」の女主人公版を狙った、
というような感じもあります。

この映画は評判は散々で、
お客さんも入っていないようですが、
個人的な感想としては、
かなり頑張って作っているな、と思いましたし、
確かにアクションはかなりトホホの感じで、
どのような映画にしたいのかも、
絞り切れていない感じはありましたが、
日本の大作娯楽映画というジャンルとしては、
水準以上の仕上がりにはなっていたと思います。

鈴木清順監督みたいな馬鹿馬鹿しさがあるでしょ。
女殺し屋というジャンル物を、
徹底した様式美で撮ろう、という趣旨ですよね。
だから、拳銃をぶっ放すと敵だけがバタバタ倒れて、
敵の弾は一切当たらない、というのは、
それはそれでいいんですよね。
ただ、敵の弾なんて当たらなくていい筈なのに、
最後は主人公は血まみれになって、
それでいて全然死にそうではないので、
ちょっと、どうしたかったのか分からないな、
というような気はするのです。

ストーリーは決して悪くないんですよね。
見せ場の構成も悪くない感じだし。
最初に列車の活劇があって、
脱出すると草原でまた活劇、というのはいいですよね。
ラストは霧の中での撃ち合いから、
段々霧が晴れて集団戦に持ち込む、
というのも、行定監督らしい様式美だったと思います。

ただ、アクションがねえ…
最初の列車の場面から、
何かとても間抜けでセンスがないんですよね。
そこは「るろうに剣心」との致命的な違いですね。
それから悪役が弱いんですね。
そこも「るろうに剣心」との違いで、
もっとアクの強い、怪物みたいな敵が欲しかったですね。

キャストは皆好演と言って良いのですが、
綾瀬さんがね、何と言うのか、
こうしたどシリアスは、
ちょっと厳しい感じなんですね。
何処か真面目にやっていても、
それがかくし芸の演技、みたいな感じがあるのです。

総じて、美術にしても映像にしても、
相当頑張った映画なのですが、
監督がアクションに不慣れな感じが、
ちょっと致命的になってしまったかな、
という感じの映画でした。

でも、映画館ではガッカリですが、
ちょっとカルト的な雰囲気はあって、
配信で観直すと、
結構何度も見てしまうような、
そんな中毒性はある作品だと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「キングダム 運命の炎」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
キングダム 運命の炎.jpg
漫画の「キングダム」を実写映画化した、
シリーズの第3弾が、
今ロードショー公開されています。

これは多分今漫画の実写映画を監督したら、
当代随一と言って良い、
佐藤信介監督のもと豪華キャストが集結した、
日本映画としては破格の娯楽連続活劇映画で、
勿論海外の同種の作品や娯楽大作と比較すれば、
予算は多分10分の1かそれ以下くらいでしょうから、
画格として見劣りがするのは仕方がないのですが、
「安っぽさ上等」と割り切って、
その中で最善の娯楽を観客に提供しよう、
という姿勢が素直に好感が持てます。

その分を弁えた演出が、
おそらく佐藤監督の最も優れた資質のように、
個人的には思います。

1作目は続編があるかどうかは不明ですから、
その中で完結する、という姿勢で作られていましたが、
2作目からは完全に連続活劇というパターンで、
マーベルのシリーズ辺りをお手本として、
ラストには続編に繋がるカットを入れています。

作品の流れで見る限り、
おそらく次作の4作目で一区切り、
ということになりそうです。

今回はほぼほぼ2部作の前半、という感じの作りになっていて、
それを知らないで観ると、
「えっ、これで終わりなの…」という感じにはなると思います。
本来は○○編パート1のようにするべきだったと思いますが、
集客を気にしてそこに触れていないのが、
やや姑息な感じはします。

ただ、それを別にすれば、
前半と後半を分けた構成にしても、
10万単位の兵が激突する戦場を描くという大風呂敷を、
曲りなりにも絵として成立させた力業にしても、
これまでのシリーズで培われた経験が、
良く活きているという気がします。

かなりカリカチュアされたキャラクターが登場する原作で、
それを活かしてリアルにし過ぎない、
という実写化の工夫がいいですよね。
これ、リアルにしたら、
とてもハリウッド製や中国製にはかなわない素材でしょ。
そこに少し遊びを入れることで、
チープさを受け入れやすくして、
バランスを取っているんですね。
これはかなり高度な綱渡り的な演出で、
佐藤監督のこれぞ真骨頂という感じがしました。

いずれにしても、いつになるのか分かりませんが、
次作の公開も心待ちにしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」(2023年映画版) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
岸部露伴.jpg
少し前ですが、
NHKで放映された「岸辺露伴」のドラマの映画版が公開されました。

これは実際にルーヴル美術館の依頼で創作された、
彩色の特別版単行本が原作で、
長編映画にするにはやや淡泊な内容のために、
人物を増やすなど少し改変して映像化されています。

テレビから続投の、
高橋一生さんと飯豊まりえさんのコンビがとても良く、
原作とは雰囲気は全く違うのですが、
別個のリアリティを獲得しています。
ただ、原作の「スタンド」の可視化が、
ドラマでも映画でも省略されているので、
主人公の持つ能力の意味合いが、
不明瞭になってしまっているきらいがあります。

実際のルーヴル美術館で撮影されている点は、
とても贅沢で良いのですが、
映画としてはもう少し、
映画ならではの見せ場が欲しいと思いました。

基本的にイメージ重視の作品なので、
元のドラマのファンの方以外には、
あまりお勧めは出来ませんが、
ドラマや原作の予備知識のある方には、
まずまず楽しめる仕上がりにはなっていたように思います。
映像は美しいです。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「イノセンツ」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診ですが、
産業医の研修会などの予定です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
イノセンツ.jpg
公開されることは珍しい、
ノルウェー製のサイキックホラーで、
大友克洋さんの名作「童夢」にインスパイアされた作品です。

観てみると、
「悪役」の造形には違いがあるものの、
全体のコンセプトやラストなどは、
ほぼほぼ「童夢」と同一の部分があります。

団地に住む子供同士のサイキックバトルで、
大人は子供の超能力で操られるのが主な役割という感じで、
あまり重要な役割を果たしていません。

子供の個々の個性や人物描写、
破滅に至る段取りがなかなか巧みに出来ていて、
スリリングで見ごたえがあります。

ハリウッド製や韓国製、邦画とは明らかに肌合いが違い、
倫理観にも違いが感じられます。
日本で作るのは絶対無理、という感じの作品です。

緊張感の出し方や全体のトーンは、
クローネンバーグの傑作サイキックバトル映画、
「スキャナーズ」を彷彿とさせます。

しかし、「スキャナーズ」的な対決を期待してしまうと、
全ては抑制的で、
超能力と言っても、
水面の波紋や砂の動きなどで表現されるだけなので、
ちょっと物足りない感じは正直あります。

個人的には前半にかなり期待をしてしまったので、
後半は「これで終わり…?」という、
虚脱感を味わいました。

それでも、北欧映画の雰囲気はなかなか新鮮で、
子役の演技も見事なものなので、
あまり過度の期待を持たずに観るのであれば吉だと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「Pearl パール」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
パール.jpg
新しい感覚で過去のホラーをリクリエートした、
シリーズの第2弾として、
1918年を舞台とした「パール」が公開されています。

前作の「X」は「悪魔のいけにえ」のトリビュートだったのですが、
今回は1960年代から70年代の、
H.Gルイスやアンディ・ミリガンなどによる、
悪趣味な残酷シーンを見せ場とするスプラッター映画が、
そのベースになっているように思います。

その元祖とされるH.G.ルイスの「血の祝祭日」の製作が1963年。

今観てもかなり異様な凄味のある映画ですが、
当時としては尋常ではないくらい突飛な映画ではありました。
ただ、勿論悪趣味の極みのような作品で、
まともに評価される性質のものではありません。

ただ、意外にその設定などの部分は、
サイコスリラー的な深みもあって、
人間ドラマとして無視出来ない切実さもあったのです。

今回の映画はスペイン風邪が流行した1918年に舞台を取り、
強権的な母親と障害のある父親の介護で疲弊した少女が、
シリアルキラーに変貌する姿を描き、
即物的な残酷描写はルイスやミリガンに倣いつつ、
「オズの魔法使い」などのミュージカル映画の要素も取り込んで、
60年代スプラッターをリクリエーションしています。

悪趣味のツボは抑えつつ、
なかなか工夫された作品だと思います。
主役のミア・ゴスはもう、
新世代のホラークイーンの貫禄充分で、
過不足のない怪演を見せてくれます。
基本ラインはかつてのスプラッターですが、
ゴスの長回しで内面描写を入れたり、
アートっぽい趣向も取り入れて作品の底上げをしています。

ただ、鑑賞後の感想としては、
正直もう少し突き抜けたところ、
観客の予想を超えるような展開や場面が、
あっても良いのに、というようには感じました。

全体に予定調和的な物足りなさがあって、
「血の祝祭日」を最初に観た時のようなショックは、
この映画からは感じられません。
「オズの魔法使い」のトリビュートにしても、
たとえば松尾スズキさんの「マシーン日記」で、
最後にヒロインが見ていたドロシーになるという夢が、
非常に残酷な形で適う、という趣向があるのですが、
ああした、一見凡庸なモチーフが予想外のショックに繋がる、
というような仕掛けが欲しいですよね。
この作品にはそうしたところは全くなくて、
「ただ好きなものを並べてみただけ」という感じに見えるのが、
正直残念に感じました。

それから、1918年という設定なのに、
街の映画館で掛かっている映画がトーキーなんですね。
これは時代的にあり得ない、という気がするのですが、
あり得たのでしょうか?
その点は疑問でした。

そんな訳でやや趣向倒れに感じた作品でしたが、
非常に意欲的であることは確かなので、
次回作には是非期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ミッションインポッシブル.jpg
トム・クルーズの人気シリーズの最新作が、
今ロードショー公開されています。
今回は前後編の前編の公開ですが、
それでも2時間半を超える長尺です。

これはかなり面白かったですよ。

まあ、おバカにも分かるように作られた、
典型的なおバカ映画の超大作なのですが、
良い意味でのその能天気さ、おバカ加減がとても良い感じで、
殆どルパン三世のアニメを実写化したような世界観なのですが、
全体を統一した作品として見せるのではなく、
充実したアクションの見せ場を、
串団子のように次々と繰り出して、
その途中にはちょっとした休憩を挟む、
というような作りです。
それが観客の生理にも合っていて、なかなかいいんですよね。
2時間半を超えるとさすがに長い、と感じることが多いのですが、
今回はあまりそうした印象は持ちませんでした。

最初からスリリングなシーンをてんこ盛りで繰り出して、
まず空港の複雑な逃走劇に爆弾解除が絡むでしょ、
クロスワードのような複雑な構成が凄いですよね。
それから一呼吸おいて、
今度はローマのカーチェイスでしょ。
それからベニスに場所を変えて、
キャラが総登場して格闘の連鎖劇、
更にオリエント急行とアルプスを配して、
列車の密室と天空からの滑空が絡むという、
ダイナミズムも見ごたえがありました。

マクガフィンは、
合わさると十字架になる2本の鍵と、
世界を支配出来るAIのコードでしょ。
まあ極めて通俗的でおバカ対応ですよね。
「トップガン・マーヴェリック」のヒットが分かっているので、
もう若くないトムが、
敵にデジタルは支配されてしまっているので、
アナログで戦うという趣向で、
中高年の心も掴んでいます。
さすがですね。

別に新味はないのですがキャストも魅力的ですし、
映像のクオリティも高いので、
ちょっと贅沢な気分に浸ることが出来ます。
この点は最近同じ層をターゲットにしたと思われる、
「インディジョーンズ」より、
数段ワクワクする出来栄えになっていました。

唯一大好きなレベッカ・ファーガソン姉さんが、
あまり活躍しなかったのが残念でした。

この夏おそらく一番何も考えずに楽しめる娯楽作で、
夏休み映画としては、
ほぼ完璧と言っても言い過ぎではないのではないでしょうか?

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「1秒先の彼」(「1秒先の彼女」の日本版) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
1 秒先の彼.jpg
日本でも2021年に公開された台湾映画「1秒先の彼女」が、
男女を入れ替えるという奇策のクドカンの台本により、
「1秒先の彼」としてリメイクされました。

オリジナルは映画館で観ています。
ノスタルジックで心に残る良い映画でした。
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2021-08-07

あれを翻案するのか、芸がないな、
というのが企画を聞いた時の第一印象でした。
クドカンなら充分オリジナルに匹敵するラブストーリーを、
オリジナルで描ける筈だと思ったからです。

ただ、実際に観てみると、
これはこれでありかな、というように感じました。

原作のふんわりしてノスタルジックな雰囲気を、
結構上手く再現しているな、と感じましたし、
オリジナルを日本で鑑賞した場合の違和感を、
結構キレイに掬い取っているな、という感じがしたからです。

原作は女性に男性が運命的に執着する、
というお話なので、
ちょっとストーカー的なんですね。
それが原作の特徴でもあるので、
決して悪い訳ではないのですが、
日本公開時は拒否感を持った人も少なくなかったようです。

それが、男女を反転させることで、
ストーカー色がほぼなくなっているんですね。
なるほど巧みだと感心しました。
またオリジナルでは擬人化したヤモリとの対話があり、
このコメディ的な部分も違和感があったのですが、
今回それをラジオのDJとの対話にして、
日本ドラマ定番の趣向で違和感を消したのもさすがでした。

その一方でおかしくなってしまった部分もあって、
原作では男性がバス運転手なので、
彼だけに時間が止まるという奇跡が起こる、
ということで整合性があるのですが、
その設定を女性でカメラマンにしてしまったので、
バス運転手も止まった時間の外にいる、
ということになってしまい、
あまり意味もなく複数の人間が時間の外にいる、
というおかしなことになってしまいました。

これ、時間の外にいる、というのは、
要するに死んでいる、ということなんですね。
原作のニュアンスはそうしたことだと思うのです。
でも、クドカンの今回の台本では、
そうなってはおらず、
主人公の失踪した父親も、
生きている、という設定になっているので、
原作の生死の狭間を彷徨うような気分が、
消滅してしまったという残念さがありました。

総じて、かなり良い気分で観ることの出来た映画で、
こうした翻案もありだな、というように感じたのですが、
原作の独特の死生観のようなものが失われてしまったことは、
ちょっと残念でもあり、
その意味でオリジナルとは別物として、
楽しむ必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「君たちはどう生きるか」(宮崎駿監督新作) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
君たちはどう生きるか.jpg
宮崎駿監督の新作が7月14日公開されました。
余分な情報がないうちに観たかったので、
その初日に足を運びました。

徹底した秘密主義で製作され、
奇妙な鳥の絵と題名以外、
公開まで全ての情報が公開されない、
という稀有の公開方法で、
こうした映画は滅多にないので、
ご興味のある方は、
是非是非予備知識なく映画館に足を運んで頂くのが吉です。

ただ、多くの方が内容には失望されたと思いますし、
なかなか褒めることが難しいタイプの作品であることは確かです。

一番似ていると思ったのは、
最近の村上春樹さんの小説で、
次に似ていると思ったのは、
黒澤明監督の晩年の映画です。

要するに高齢者の特質が強く出ているタイプの創作です。

この幻想と現実と過去の記憶とが不分明に混ざり合う感じ、
そこに統一感を持たせられない感じ、
これが多分の老人の頭の中なのですね。
僕もほぼ老人なので大きなことは言えませんし、
僕の頭の中もそうなりつつあるのは実感しているのですが、
自分が自分であることの実感のようなものは、
徐々に後退していって、
感情の繊細な動きのようなものも、
枯渇してゆくのですね。

老人の感情というのは平淡で、
高齢者は怒りっぽく、
激高するようなところがしばしばあるのですが、
あれはおそらく「感情」ではないのですね。
意味もなく感情の連鎖とも関連のない「怒り」が、
急にマグマのように沸いて出るだけのものなのです。

この作品を観る人は、
主人公の心理の平淡さのようなものに、
当惑とイライラを覚えると思うのですが、
多分監督自身は主人公の心と一体化して、
その熱情のようなものを情熱的に描いているつもりなのですね。
でもそれがそうはならず、
何かボンヤリして単調なものになってしまうのが、
老人の哀しさというものなのだと思うのです。

ただ、そうした退屈さは承知の上で、
技巧的には青鷺の動きの1つ1つにしても、
油彩画のような背景の表現にしても、
まさに天才の筆致が息づいていることは強く感じます。
その意味で監督の集大成という表現は、
映像表現に限って見れば嘘ではありません。

それでいて残念ながら、
致命的に面白くない、というのは、
黒澤監督の晩年の映画や、
村上春樹さんの最近の小説と同じように、
それはもう仕方のないことなのだと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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