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早産児へのDHA補充療法の有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療です。
石田医師の代診となりますのでご注意下さい。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
DHAの新生児投与.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2022年10月27日掲載された、
早産児にDHAの補充を行う大規模な臨床研究についての論文です。

DHAはサプリメントでお馴染みの必須脂肪酸の一種で、
特に脳の神経細胞の構成成分であることが知られています。
脳の脂肪酸の約30%はDHA由来であるとされています。

DHAは脳神経の発達においても必須の成分で、
その必要性は特に妊娠後期において高まります。
従って、早産、特に妊娠29週以前で出産した場合には、
通常のミルクなどの栄養補給では、
その必要量を満たさない可能性があるのです。
早産児の認知機能の発達は、
正期産と比較して低いというデータがあり、
その原因としてDHAの不足を指摘する意見があります。

今回の研究では、
早産児に多い気管支肺異形成症の予防のため、
DHAの補充療法を施行した臨床試験のデータを活用して、
早産児におけるDHAの出産後の補充が、
5歳の時点での認知機能に、
与える影響を検証しています。

妊娠29週以前に出生した早産児を、
くじ引きで2つの群に分けると、
その一方は体重1キロ当たり20㎎のDHAを含む、
通常の栄養投与を行い、
もう一方は体重1キロ当たり60㎎のDHAを補充して、
それを正期産と同じ38種までか、
退院までの期間継続し、
その後5歳の時点でWPPSIという認知機能検査を施行。
トータルの合算スコアである、
FSIQという指標を比較しています。

この体重1キロ当たり60㎎のDHAというのは、
妊娠後期に胎盤から胎児に移行する、
DHA量とほぼ同等と考えられるのです。

対象となった胎児は1273名ですが、
この解析対象となったのは、
最終的には480名です。

その結果、
通常栄養群ではFSIQは91.9±19.1であったのに対して、
DHA補充群では95.4±17.3で、
その差は3.45(95%CI:0.38から6.53)で有意な差と判断されました。
この数値は平均が100で、
高いほど認知機能が高いことを示しています。

このように、
早産児における出産後のDHAの補充は、
その後の脳の発達に一定の有効性が期待され、
今後の臨床応用に向けた検証にも期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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