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大麻吸引の肺への影響 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
大麻吸引の肺への影響.jpg
Radiology誌に2022年11月5日ウェブ掲載された、
大麻吸引の呼吸器への影響についての論文です。

大麻は知覚変容作用や鎮静作用のある麻薬の一種で、
通常タバコのように、
その葉に火を点けて吸引することにより使用されます。

ただ、身体依存はほぼなく、
その有害性は他の麻薬と比較して低いことから、
国や地域によっては個人使用が認められています。

日本では現状その所持は禁止されていますが、
医療用大麻の合法化などに向けて、
議論が進められているところです。

大麻の有害性については、
その成分の身体への影響が主に議論されていますが、
もう1つの問題は大麻が主にタバコと同じように、
煙を肺に吸引するという方法で摂取されているところにあります。

要するに草に火を点けてその煙を吸引するとすれば、
それは草の種類が違うだけでタバコと違いはありません。

それでは、
タバコのような健康への悪影響が、
大麻の吸引によっても起こるのではないでしょうか?

今回の研究は、
個人使用の大麻が合法化されているカナダにおいて、
大麻の使用習慣のある56名を、
タバコも大麻も使用経験のない57名と、
大麻は吸わないけれど喫煙はしている33名とマッチングさせて、
その胸部CTによる肺の変化を比較検証しています。

その結果、
タバコも大麻も使用していない人では、
肺気腫の所見は5%に認められたのに対して、
大麻の使用者は75%に肺気腫の所見が認められました。
喫煙者では67%に肺気腫の所見が認められました。
つまり、喫煙に肺気腫のリスクのあることは勿論ですが、
むしろそれを上回るようなリスクが、
大麻の吸引にもあるという知見です。
慢性気管支炎や気道の炎症の指標である、
気管支壁肥厚や気管支拡張症、粘液栓の貯留などの所見についても、
同様に非使用者と比較して、
大麻の使用者ではその頻度が高くなっていました。

今回のデータは少数例の検討に過ぎませんが、
大麻の吸引に喫煙と同等の健康リスクがある、
という知見は非常に興味深く、
今後大麻の合法化が議論される際には、
こうした点の検証も重要であると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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