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キャッチアップ睡眠の心血管疾患予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
終日事務作業などの予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
キャッチアップ睡眠の有効性.jpg
Sleep Health誌に2023年11月23日付で掲載された、
キャッチアップ睡眠(寝だめ)の健康効果についての論文です。

睡眠というのは食事や運動と並んで、
健康に欠かせない生活習慣の1つです。

特に睡眠時間が短いことは、
心臓病や脳卒中などの心血管疾患、認知症、
うつ病など多くの病気のリスクになることが分かっていて、
健康寿命にも悪影響を与える因子です。

そのためアメリカの睡眠関連の専門学会では、
健康のために毎日の睡眠時間を、
7時間以上にすることを推奨しています。
https://academic.oup.com/sleep/article/38/6/843/2416939

しかし、実際には多くの日本人が、
もっと短い睡眠時間で生活をしています。

そしてそうした寝不足の日本人が、
睡眠不足の解消のために、
しばしば行っている習慣が、
週末や休日の「寝だめ」です。

「休みの日は昼までゆっくり寝ていた」という、
休みの日にありがちな習慣が「寝だめ」です。
医学用語としては、キャッチアップ睡眠(catch-up sleep)、
という言い方が一般的で、
上記論文ではウィークデイの睡眠時間の平均より、
週末の睡眠時間が1時間以上長いこと、
として定義されています。

「寝だめ」は体感的には、
睡眠不足の軽減に一定の効果があるように思えます。

それでは、
週末に寝だめをすることで、
睡眠不足のもたらす健康への悪影響を、
抑制するような効果があるのでしょうか?

今回の研究はアメリカにおいて、
20歳以上の3400名の一般住民を対象とした、
健康調査のデータを活用することで、
週末のキャッチアップ睡眠が、
その後の心血管疾患(心筋梗塞や脳卒中など)
のリスクに与える影響を検証しています。

その結果、
週末に1時間を超えるキャッチアップ睡眠を取ると、
取らない場合と比較して、
その後の心血管疾患のリスクが、
63%(95%CI:0.23から0.58)有意に低下していました。

ただ、高血圧など関連する他の因子を考慮して解析すると、
トータルにはキャッチアップ睡眠の心血管疾患予防効果は、
有意なものではなくなりました。
一方でウィークデイの平均睡眠時間が6時間以下と、
明らかな睡眠不足にある人に限定すると、
関連する因子を考慮して解析しても、
心血管疾患のリスクは66%(95%CI:0.17から0.65)
有意に低下していました。

個々の心血管疾患毎で傾向をみると、
狭心症、脳卒中、虚血性心疾患は、
キャッチアップ睡眠の予防効果が認められた一方で、
心不全と心臓発作については有意な予防効果は認められませんでした。

このように、
特に毎日6時間以下と、
明確な睡眠不足にある人では、
1時間以上の寝だめを休日にすることで、
一定の心血管疾患予防効果が認められました。

これはまだ事実とまでは言えない知見ですが、
日頃睡眠不足の人にとっては、
休日に少なくとも1から2時間程度の寝だめをすることが、
健康上の害になることはなく、
睡眠不足を補う1つの方法として有効であると、
そう考えて大きな間違いはなさそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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