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加藤拓也「いつぞやは」(シス・カンパニー公演) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
いつぞやは.jpg
新進気鋭の劇作家加藤拓也さんの新作が、
今シス・カンパニー公演として上演されています。

加藤さんのことは大好きなので、
これはもう見逃せないと駆けつけました。

今回の公演は窪田正孝さんが主演の予定であったのですが、
病気のために急遽降板となり、
加藤作品ではお馴染みの平原テツさんが代役となりました。

内容は「ドードーが落下する」に非常に良く似ていて、
劇団を主宰している、
加藤さん自身の分身のような橋本淳さん演じる人物の視点から、
先輩の役者で引退していた、
平原さん演じる男の人生の最後が描かれます。

「ドードーが落下する」では、
平原さんの演じる役柄は、統合失調症であったのですが、
今回の作品では末期癌で薬物依存症、
ということになっています。

ただ、おそらくは同じ1人の人物が、
モデルになっているように思われ、
同じ平原さんが演じていることもあって、
両者は違う作品というより、
同じ1つの作品の変奏曲のように思われます。

構成も同じ場面を複雑に反復しつつ展開するのは、
「ドードーが落下する」と同じなのですが、
今回は末期癌の平原さんから、
橋本さんは「自分の人生を芝居にして欲しい」と頼まれる、
という設定になっていて、
その劇作に向けての試行錯誤が、
そのまま舞台上に表現され、
ラストは実際の戯曲が書かれる場面で終わります。

個人的には「もはやしずか」が素晴らしくて、
加藤さんのファンになったので、
もっと古典的でガッチリした構成のお芝居が観たいな、
というような思いはあります。

あの作品はイプセンみたいだったですし、
イプセンを超えるような台詞劇の傑作を、
加藤さんは日本を舞台に描いてくれる人だと思っています。

その意味では「ドードーが落下する」や今回の作品は、
悪い意味で小劇場演劇的で、
作者の意識の流れをそのまま舞台に載せた、
というような感があり、
個人的にはあまり納得がいきませんでした。

友人から自分の人生を芝居にして欲しい、
と依頼されたとして、
矢張その経緯を芝居にするのではなくて、
最終的に仕上がった作品をこそ、
上演するべきではないでしょうか?

勿論こうした変化球の舞台作りも、
小劇場では当たり前のようにあるものですが、
僕は加藤さんは古典的な台詞劇を書ける人だと思っているので、
こうした変化球はあまり見せて欲しくないな、
というが正直な思いなのです。

今回の舞台はただ、
窪田正孝さんが予定通り出ていれば、
かなり印象の変わるものになっただろうな、
ということは予想が出来ます。
彼の独特の執着的お芝居が中央にあると、
作品世界そのものがその様相を変えたと思いますし、
内容は同じでも鑑賞後の感想は違うものになったと思います。
その点は不可抗力で仕方のないことなのですが、
観客としては非常に残念ではありました。

それから鈴木杏さんと夏帆さんという、
今女優さんとして絶好調と言って良い2人が、
出演されているのですが、
特に夏帆さんは非常に勿体ない使い方で、
何か役柄が小さいことは理由があったのかも知れませんが、
彼女の魅力が発揮されているとは言い難いという点も残念でした。

そんな訳でちょっとモヤモヤする観劇ではあったのですが、
加藤拓也さんが今最も注目すべき劇作家の1人であることは間違いがなく、
これからもその舞台を期待して待ちたいと思います。

頑張って下さい。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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