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禁煙治療薬シチシンとバレニクリンの有効性比較 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
シチシンとバレニクリリンの比較.jpg
JAMA誌に2023年7月6日付で掲載された、
新規の禁煙治療薬の有効性を検証した論文です。

禁煙治療にはバレニクリン(チャンピックス)という飲み薬が、
世界的に広く使用されています。

この薬剤は脳でニコチン様の作用をすることにより、
禁煙を補助する薬です。
この薬は現状認可されている禁煙治療薬の中では、
最もその有効性が高いことが、
複数の臨床データにより確認されています。
その一方でイライラや不眠などの精神作用や、
めまいや吐き気、眠気などの有害事象が報告されています。
またその成分に発癌作用のある物質が混入していたという指摘から、
日本では長期間その使用が中止されています。

それでは、もっと安全性が高く、
有効性が同等な治療薬はないのでしょうか?

その候補として注目されているのが、
シチシン(cytisine)という薬です。

シチシンは植物由来のアルカロイドで、
化学的に合成された物質ではありません。
バレニクリンと同様に、
脳でニコチン様作用を持つことが確認されています。

これまでに偽薬やニコチンパッチと比較した臨床試験が施行され、
ニコチンパッチや偽薬よりも、
禁煙成功率が高いことが確認されています。

それでは、バレニクリンと比較して、
シチシンは同等の有効性があるのでしょうか?

今回の臨床試験はオーストラリアにおいて、
禁煙希望の喫煙者トータル1452名をくじ引きで2つの群に分けると、
本人にも試験実施者にも分からないように、
一方はバレニクリンを12週まで使用し、
もう一方はシチシンを25日間使用して、
その後の禁煙成功率を比較検証しています。

その結果、治療開始6か月の時点での禁煙成功率は、
バレニクリン群が13.3%であったの対して、
シチシン群は11.7%で、
この差は試験の設定上有意なもので、
シチシンの有効性はバレニクリンと同等とはなりませんでした。

このように、
現状のシチシンの禁煙補助効果は、
ニコチンパッチよりは高いものの、
バレニクリンと比較すると少し見劣りがする、
という結果になっていて、
今後その安全性を含めた評価として、
禁煙治療のガイドラインが整備されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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