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大腸癌検診二次検査の受診率は? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
便潜血の二次検査比率.jpg
JAMA Network Open誌に、
2023年1月18日付で掲載された、
大腸癌検二次検査の受診率についての論文です。

大腸癌の検診としては、
その簡便性やコストの安さから、
市町村の検診でも、
もっぱら便潜血検査が行われています。
これは便を通常2回以上別の日に採取して、
人間の血液由来のヘモグロビンが検出されるかを見るもので、
検出された場合には、
微量な出血が大腸の粘膜から生じていると判断して、
大腸の内視鏡検査(もしくは直腸鏡や3次元CTなど代替検査)に、
進むことが通常です。

便を採るだけの古い検査で、
こんなもので何が分かるのかと、
馬鹿にされる方もあるかも知れませんが、
30年に渡る長期間において、
大腸癌のよる死亡のリスクを、
最大で3割程度減少させる効果が確認されています。

これだけ明確に癌による死亡のリスクを低下させるような癌検診は、
他には殆どなく、
あってもどの検査をどのような対象者に行うべきかについては、
多くの議論がありますから、
便潜血検査による大腸癌検診のように、
その有効性が科学的に確認され実証されている検診は、
他にはないと言って良いと思います。

しかし、
この検査の大きな問題は、
便潜血検査単独では診断的な意味はなく、
陽性であった対象者が、
大腸内視鏡などの二次検査をして初めて、
大腸癌かどうかが診断される、
と言う点にあります。

そのために陽性であってもその結果を軽視して、
二次検査を受けずにスルーしてしまったり、
受けても何か月も経ってから、
というようなことも稀ではありません。

僕がとても印象に残っているケースでは、
集団検診である年に便潜血が陽性になったのですが、
その年度は二次検査は受けずに放置していて、
その翌年の検診で再度陽性となったので、
初めて大腸内視鏡検査を受けたところ、
もう進行癌の状態で手術はしたものの、
その半年後に亡くなった、という実例がありました。

そのために検診の説明会などでは、
早期発見のために、
必ず陽性の結果が出たらすぐに二次検査を受けるように、
という説明をしています。

以前ご紹介したことのある2017年のJAMA誌の論文
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2620087
では、
便潜血の陽性から二次検査の大腸内視鏡検査までの期間が、
9か月以内であれば、すぐに施行した場合と明確な差はなかったものの、
10か月以降で施行された場合には、
大腸癌発見のリスクが48%、進行癌で発見されるリスクが97%、
有意に増加するという結果が得られています。

つまり、遅くとも9か月以内には、
二次検査を施行する必要がある訳です。

しかし、実際に便潜血が陽性の事例での二次検査は、
どのくらいの頻度で実施されているのでしょうか?

今回の研究はアメリカにおいて、
2017年1月から2020年6月までの間に、
便潜血検査を受けて陽性であった50から75歳の32769名のうち、
1年以内に大腸内視鏡検査による二次検査を受けた比率を分析したものです。
それによると、便潜血陽性の結果が出てから、
90日以内に内視鏡検査を受けたのは全体の43.3%で、
180日以内では51.4%、
1年以内に検査を受けたのは56.1%でした。

二次検査率の低さは、
人種や健康保険の種類、経済状況などと関連があり、
また新型コロナの流行時期においては、
その影響と思われる検査率の低下が認められました。

このように、
便潜血検査が陽性と判定されても、
その後の二次検査の施行率は、
決して高いものではなく、
今後どのような介入を行って、
二次検査を適切に受診してもらうべきか、
検証が必要であると思われます。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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