「バビロン」 [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ディミアン・チャゼル監督の新作が今ロードショー公開されています。
3時間を超える大作で、
しかもかなり批評や感想は悪いものが多いので、
どうしようかと迷っていたのですが、
感想としては観て良かったと思いました。
ハリウッドのサイレント映画の最盛期である、
1920年代から物語は始まり、
最後は1952年で終わるのですが、
同じサイレントからトーキーの移行の時代を描いた、
「雨に唄えば」が公開されるのが1952年で、
主人公が映画館でその映画を観ることにより、
「雨に唄えば」と映画のストーリーが融合することで、
ラストが締め括られます。
こうした構成だけを見ると、
如何にも真面目な「映画愛」の映画のように思えてしまいますし、
実際にそうした要素もない訳ではないのですが、
見世物としての映画の側面というのか、
出鱈目で好い加減で下品でエッチで煽情的な映画の部分を、
徹底して追及したような内容になっていて、
全編チープで悪ふざけな展開が連続するという作品です。
この馬鹿馬鹿しさの質は、
石井輝男監督のアクション映画や、
大林宜彦監督の映画、
もっと不真面目だった頃のタランティーノや、
ホドロフスキー監督にも近い味わいのものです。
僕はこの4人の監督は大好物なので、
この映画もそうした気分で鑑賞することが出来ました。
チャゼル監督は、
おそらくこうした世界が嫌いではなくて、
一度はこうした狂騒的な出鱈目映画を、
撮ってみたかったのだと思うのですね。
だから、この映画は監督が行き詰まったのではなくて、
次回作は全然趣向の変わった、
おそらくドシリアスなものになるのではないかと思います。
ただ、その方向性に、
それほど徹底はしていないのですね。
おそらく製作上の縛りもあったのだと推測しますが、
映画で有名になる黒人トランペット奏者のパートなどは、
そのまま「良いお話」に仕上がっています。
オープニングから象の糞便を盛大に浴びるという場面があるので、
これはもう「下品で出鱈目ですよ」という意思表示なのですが、
それでいて結構音楽のセンスも良く、
狂乱のパーティーの描写にも、
一定の品格と美意識があるので、
僕も前半はフェリーニみたいにしたいのかしらと、
ちょっと迷いながら観ていたのですが、
途中で繰り返しのギャグで延々と撮影風景を描く辺りから、
これはもう悪ふざけなのだと理解したので、
例のゲロ噴出シーンも、
「ああ、大人計画の『愛の罰』だよね」
というくらいで観ていました。
こういう映画は99%出鱈目とチープさの中に、
1点の戦慄するような藝術と真実の煌きがある、
というのがその本質で、
今回の映画の場合その真実は、
マーゴット・ロビーの演技にあって、
車を石像に激突させながらの登場から、
ポランスキーの「チャイナタウン」のように、
彼方の闇に消えて行く退場まで、
途中のゲロ攻撃などの大暴れを含めて、
彼女の魅力が全編に爆発し、
全ての女優の存在感を一手に引き受けたような、
その存在感は抜群でした。
これはまあ、
真面目な映画と思って観ると、
お怒りになる方のお気持ちも分かるのですが、
B級カルトに挑戦した愛すべき大作で、
個人的には後半のギャングの魔宮のような地下迷宮を逃げる辺りは、
ここまでやってくれるのかと、
ワクワクする思いで観ていたのです。
こうしたものがお好きな方だけにお勧めです。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ディミアン・チャゼル監督の新作が今ロードショー公開されています。
3時間を超える大作で、
しかもかなり批評や感想は悪いものが多いので、
どうしようかと迷っていたのですが、
感想としては観て良かったと思いました。
ハリウッドのサイレント映画の最盛期である、
1920年代から物語は始まり、
最後は1952年で終わるのですが、
同じサイレントからトーキーの移行の時代を描いた、
「雨に唄えば」が公開されるのが1952年で、
主人公が映画館でその映画を観ることにより、
「雨に唄えば」と映画のストーリーが融合することで、
ラストが締め括られます。
こうした構成だけを見ると、
如何にも真面目な「映画愛」の映画のように思えてしまいますし、
実際にそうした要素もない訳ではないのですが、
見世物としての映画の側面というのか、
出鱈目で好い加減で下品でエッチで煽情的な映画の部分を、
徹底して追及したような内容になっていて、
全編チープで悪ふざけな展開が連続するという作品です。
この馬鹿馬鹿しさの質は、
石井輝男監督のアクション映画や、
大林宜彦監督の映画、
もっと不真面目だった頃のタランティーノや、
ホドロフスキー監督にも近い味わいのものです。
僕はこの4人の監督は大好物なので、
この映画もそうした気分で鑑賞することが出来ました。
チャゼル監督は、
おそらくこうした世界が嫌いではなくて、
一度はこうした狂騒的な出鱈目映画を、
撮ってみたかったのだと思うのですね。
だから、この映画は監督が行き詰まったのではなくて、
次回作は全然趣向の変わった、
おそらくドシリアスなものになるのではないかと思います。
ただ、その方向性に、
それほど徹底はしていないのですね。
おそらく製作上の縛りもあったのだと推測しますが、
映画で有名になる黒人トランペット奏者のパートなどは、
そのまま「良いお話」に仕上がっています。
オープニングから象の糞便を盛大に浴びるという場面があるので、
これはもう「下品で出鱈目ですよ」という意思表示なのですが、
それでいて結構音楽のセンスも良く、
狂乱のパーティーの描写にも、
一定の品格と美意識があるので、
僕も前半はフェリーニみたいにしたいのかしらと、
ちょっと迷いながら観ていたのですが、
途中で繰り返しのギャグで延々と撮影風景を描く辺りから、
これはもう悪ふざけなのだと理解したので、
例のゲロ噴出シーンも、
「ああ、大人計画の『愛の罰』だよね」
というくらいで観ていました。
こういう映画は99%出鱈目とチープさの中に、
1点の戦慄するような藝術と真実の煌きがある、
というのがその本質で、
今回の映画の場合その真実は、
マーゴット・ロビーの演技にあって、
車を石像に激突させながらの登場から、
ポランスキーの「チャイナタウン」のように、
彼方の闇に消えて行く退場まで、
途中のゲロ攻撃などの大暴れを含めて、
彼女の魅力が全編に爆発し、
全ての女優の存在感を一手に引き受けたような、
その存在感は抜群でした。
これはまあ、
真面目な映画と思って観ると、
お怒りになる方のお気持ちも分かるのですが、
B級カルトに挑戦した愛すべき大作で、
個人的には後半のギャングの魔宮のような地下迷宮を逃げる辺りは、
ここまでやってくれるのかと、
ワクワクする思いで観ていたのです。
こうしたものがお好きな方だけにお勧めです。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
2023-02-26 17:31
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