SSブログ

スタチンと脳内出血リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後はワクチン接種や事務作業の予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
スタチンと脳出血リスク.jpg
Neurology誌に2022年12月7日掲載された、
脳内出血の発症リスクとスタチンとの関連についての論文です。

スタチンはコレステロールの合成酵素の阻害剤で、
高コレステロール血症の治療薬として広く使用されていますが、
コレステロールを低下させる以外に、
抗炎症作用や動脈硬化の進行予防など、
心血管疾患のリスクを低減する多くの作用を持ち、
心血管疾患の予防薬としてもその有効性が確立しています。

ただ、脳卒中のうち脳梗塞については、
スタチンの使用は脳梗塞のリスクを低下させることが、
ほぼ一致して報告されていますが、
脳内出血については、
特に脳梗塞の既往のある場合の脳内出血のリスクを、
スタチンが増加させるというデータが存在しています。

今回の研究はデンマークにおいて、
脳内出血を脳葉型出血とそれ以外の出血に分けて、
それぞれの新規発症リスクとスタチンの使用との関連を比較検証しています。
対象は脳葉型出血を来した989名と、
それ以外の部位の脳内出血を来した1175名で、
それをマッチングさせたコントロールと比較しています。
脳葉型出血は脳の表面に近い部位に起こる出血で、
それ以外の出血は、
脳の深部の基底核や小脳、脳幹などに起こるものです。

その結果、
スタチンの使用は脳葉型出血のリスクを、
17%(95%CI:0.70から0.98)、
それ以外の基底核などの出血のリスクを、
16%(95%CI: 0.72から0.98)、
それぞれ有意に低下させていました。

このスタチン使用による新規脳出血の発症リスクの低下は、
スタチンの使用継続期間が長いほどより大きくなっていて、
5年以上継続した場合には、
脳葉型出血のリスクを33%(95%CI:0.51から0.89)、
それ以外の出血のリスクを38%(95%CI:0.48から0.80)、
それぞれ有意に低下させていました。

このように今回の検証においては、
スタチンの使用は脳内出血のリスクを低下させていて、
脳梗塞後の出血のリスクにおいては、
まだ未解決の部分を残していますが、
少なくとも新規の脳出血のリスクについては、
スタチンの使用はその抑制に一定の効果があるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(3)  コメント(0) 

nice! 3

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。