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SPAC「夢と錯乱」(2022年東京芸術祭上演版) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
夢と錯乱.jpg
少し前になりますが、
静岡を拠点に活動しているSPACが、
東京芸術祭の一貫として、
美加理さんの1人パフォーマンス「夢と錯乱」を上演しました。

これはオーストリアの詩人トラークルの同題の詩を、
パフォーマンスとして構成したもので、
上演時間は1時間ほど。
多くの場面は濃厚な闇の中で展開され、
成熟して荒廃したヨーロッパの死の匂いが、
時空を超えて池袋に再現されます。

美加理さんはかつての月食歌劇団の頃を彷彿とさせる、
作者を模した美少年の装いで、
取り巻く死者や精霊を同時に闇の中に召喚します。

舞踏的な舞台で、
演出の宮城聰さんも以前は、
こうした創作ダンスを得意にしていましたから、
原点回帰という感じもあります。

ただ、舞踏はよくこうした詩を題材にしますが、
今どの場面を演じているのか、
というような詳細を示すことは普通はありません。
一方で今回の舞台では、
美加理さんは自ら詞章を語り、
同時にその場面を再現してゆきますから、
舞踏と比べれば素人にも親切な、
予備知識なく楽しめる作品になっています。
途中で美加理さんの比較的長いソロがあるのですが、
その場面では美加理さんは同時に詞章を語れないので、
ホリゾントに詞章そのものが
字幕として提示される、
という念の入りようです。

気になって鑑賞後にトラークル全集を購入しましたが、
翻訳は今回使用されたものと同一でした。
非常に明晰で分かり易い訳文で、
そのため聞くのは全く初めての言葉でしたが、
比較的すんなりと耳に馴染みました。

トータルには宮城聰さんの他の演出作品と同じような感じ、
設定は如何にもかつての小劇場藝術という雰囲気で、
とてもワクワクするのですが、
比較的小さくまとまってしまう、という感じがあって、
僕は以前はこうした世界に耽溺していたので、
「ええっ、ここまでやるならもっとやって欲しいな。
こちらの予想を超えて欲しいな」というように思ってしまって、
ラストはやや小さく落胆するような気分になるのです。

ただ、それは僕がどうしても、
こうした作品に別個の物を求めてしまうので、
それが宮城さんの表現する世界のゴールとは、
異質のものであるというだけのことかも知れません。

SPACは一度静岡まで遠征したことはあって、
もうその元気はないのですが、
東京で公演の機会があれば、
また出掛けたいとは思っています。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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