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唐十郎「さすらいのジェニー」(唐組・第65回公演) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
さすらいのジェニー.jpg
唐組の第65回公演として、
1988年に下町唐座で初演された「さすらいのジェニー」が、
唐組版として上演されました。

元々は2020年春に上演の予定でチケットも買っていたのですが、
新型コロナの影響で延期となり、
日程も縮小して秋の下北沢での上演となりました。
チケットは振り替えです。

初演は2回観ています。
上演期間は結構長かったのですが、
急遽追加公演があって、
柄本明さんが演じたベロ丸を、
麿赤児さんが演じるという趣向でした。
状況劇場の退団後に、
麿さんが唐先生と一緒に舞台に立つことは、
それまで一度もなかったので、
これは絶対行かないと、と思い、
二度目の観劇となったのです。

ただ、舞台成果はそれほど充実したものではありませんでした。

端的に言えば、
下町唐座という安藤忠雄さんによる仮設大劇場が、
唐先生のお芝居には、
あまり合っていなかったのですね。
何より大きすぎて、客席から舞台を見下ろすような、
普通の劇場だったので、
劇の雰囲気との間に大きな乖離がありました。

舞台設定もね、
保健所の前の道路が水没している、
というト書きなのですが、
初演の舞台は大きなプールになっていて、
とてもそんなイメージじゃないのですね。
3幕で本の巨大化した背表紙が書き割りのように出て来るのですが、
舞台の高さが埋まらないので、
とても間抜けに感じました。

その点今回の久保井研さん演出の舞台は、
とても等身大に作られていて、
ラストなどはもう少しスケール感が欲しいな、
というようには思うのですが、
初演より作品世界は遙かに明確になっていて、
とてもとても分かり易い、
唐先生の下町大冒険の世界観が体現されていました。

天井は初代の状況劇場の紅テントがそのまま使われていて、
両サイドは換気のためにふさがず、
周囲をボードで仕切っていました。
いつものテントより野外に近い雰囲気が、
またミニマルでとても良い感じです
雨天は最悪であったようですが、
幸い観劇当日は雨は降らず、
唐先生の世界にどっぷりと浸ることが出来ました。

音効は一部初演のものが使われていました。
初演は五輪真弓の「恋人よ」の前奏が、
何度も流れるのですが、
それは使われていませんでした。

そんな訳でいつもながらとても充実した、
今ではもうアングラ文化財として、
未来永劫守りたいような素敵な世界で、
勿論そうした保守的な観点は、
アングラの本来とは相容れないものなのですが、
唐先生と共に青春を過ごしたかつての演劇青年としては、
この甘美な郷愁に抗いがたいものを感じているのです。

素敵でした。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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