アスピリンによる胆管癌予防効果 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今年のHepatology誌に掲載された、
胆管癌に対するアスピリンの予防効果を検証した論文です。
胆管癌というのは、
胆汁の通り道である胆管の上皮から発生する癌で、
その発生した部位によって、
肝内胆管癌、肝門部領域胆管癌、遠位胆管癌の、
3種類に分かれます。
胆管に沿って広がる性質があるため、
早期発見が困難で、
黄疸などが発症してから進行して見付かることが多く、
そのため予後の悪い癌として知られています。
胆管癌のリスクとしては、
胆石症や胆嚢炎、
原発性硬化性胆管炎という原因不明の胆管の炎症、
胆管の先天的な異常、
職業に関連のある化学物質などが知られています。
また、ウイルス性肝炎や炎症性腸疾患、
肝硬変や肥満、糖尿病や喫煙も、
胆管癌のリスクを高めるという報告が存在していますが、
相反する報告もあり、
この辺りはまだ確定的ではありません。
胆管癌の発生する部位により、
そのリスク因子にも差があるという見解がありますが、
精度の高いデータは不足しています。
一部の癌、特に腺癌では、
消炎鎮痛剤で抗血小板剤でもあるアスピリンに、
その進行や転移の予防効果がある、
という報告が複数認められます。
アスピリンにはCOX2という酵素の阻害作用があり、
このCOX2に癌の進行を促進するような作用が、
あることが知られています。
それが癌の予防効果(主に転移などの予防)のメカニズムだと考えられています。
このCCOX2の過剰発現が、
胆管癌細胞の進行を促進する、という報告があり、
このことからはアスピリンの使用により、
胆管癌の発症も予防されるのではないか、
ということが示唆されるのです。
そこで今回の研究においては、
胆管癌の事例に条件をマッチングさせた対照を対比させる、
症例対照研究という手法により、
胆管癌の部位毎のリスクと、
アスピリンによるその予防効果を検証しています。
アメリカのメイヨークリニックで治療をされた、
トータル2395例の胆管癌(肝内胆管癌1169例、肝門部胆管癌995例、遠位胆管癌231例)
の患者さんを、それぞれ2倍の年齢などをマッチさせた対照と比較しました、
その結果、
胆管癌の3つのタイプ全てにおいて、
アスピリンは胆管癌のリスクを低下させていました。
肝内胆管癌のリスクを65%(0.29から0.42)、
肝門部領域胆管癌のリスクを66%(0.27から0.42)、
遠位胆管癌のリスクを71%(0.19から0.44)、
それぞれ有意に抑制していました。
一方で癌のリスク因子との関係には、
タイプによる差が存在していました。
原発性硬化性胆管炎は遠位型や肝内胆管癌より、
肝門部領域胆管癌とより関連が深く、
糖尿病は遠位型胆管癌と最も関連が深い、
という結果が得られました。
原発性硬化性単肝炎を合併していない炎症性腸疾患は、
どのタイプの胆管癌とも関連が認められませんでした。
このように、
胆管癌は出来る部位によっても異なる性質があり、
その一方でアスピリンには、
どのタイプの胆管癌に対しても、
一定の発症予防効果が存在している可能性があるようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍予約受付中です。
よろしくお願いします。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今年のHepatology誌に掲載された、
胆管癌に対するアスピリンの予防効果を検証した論文です。
胆管癌というのは、
胆汁の通り道である胆管の上皮から発生する癌で、
その発生した部位によって、
肝内胆管癌、肝門部領域胆管癌、遠位胆管癌の、
3種類に分かれます。
胆管に沿って広がる性質があるため、
早期発見が困難で、
黄疸などが発症してから進行して見付かることが多く、
そのため予後の悪い癌として知られています。
胆管癌のリスクとしては、
胆石症や胆嚢炎、
原発性硬化性胆管炎という原因不明の胆管の炎症、
胆管の先天的な異常、
職業に関連のある化学物質などが知られています。
また、ウイルス性肝炎や炎症性腸疾患、
肝硬変や肥満、糖尿病や喫煙も、
胆管癌のリスクを高めるという報告が存在していますが、
相反する報告もあり、
この辺りはまだ確定的ではありません。
胆管癌の発生する部位により、
そのリスク因子にも差があるという見解がありますが、
精度の高いデータは不足しています。
一部の癌、特に腺癌では、
消炎鎮痛剤で抗血小板剤でもあるアスピリンに、
その進行や転移の予防効果がある、
という報告が複数認められます。
アスピリンにはCOX2という酵素の阻害作用があり、
このCOX2に癌の進行を促進するような作用が、
あることが知られています。
それが癌の予防効果(主に転移などの予防)のメカニズムだと考えられています。
このCCOX2の過剰発現が、
胆管癌細胞の進行を促進する、という報告があり、
このことからはアスピリンの使用により、
胆管癌の発症も予防されるのではないか、
ということが示唆されるのです。
そこで今回の研究においては、
胆管癌の事例に条件をマッチングさせた対照を対比させる、
症例対照研究という手法により、
胆管癌の部位毎のリスクと、
アスピリンによるその予防効果を検証しています。
アメリカのメイヨークリニックで治療をされた、
トータル2395例の胆管癌(肝内胆管癌1169例、肝門部胆管癌995例、遠位胆管癌231例)
の患者さんを、それぞれ2倍の年齢などをマッチさせた対照と比較しました、
その結果、
胆管癌の3つのタイプ全てにおいて、
アスピリンは胆管癌のリスクを低下させていました。
肝内胆管癌のリスクを65%(0.29から0.42)、
肝門部領域胆管癌のリスクを66%(0.27から0.42)、
遠位胆管癌のリスクを71%(0.19から0.44)、
それぞれ有意に抑制していました。
一方で癌のリスク因子との関係には、
タイプによる差が存在していました。
原発性硬化性胆管炎は遠位型や肝内胆管癌より、
肝門部領域胆管癌とより関連が深く、
糖尿病は遠位型胆管癌と最も関連が深い、
という結果が得られました。
原発性硬化性単肝炎を合併していない炎症性腸疾患は、
どのタイプの胆管癌とも関連が認められませんでした。
このように、
胆管癌は出来る部位によっても異なる性質があり、
その一方でアスピリンには、
どのタイプの胆管癌に対しても、
一定の発症予防効果が存在している可能性があるようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍予約受付中です。
よろしくお願いします。
誰も教えてくれなかった くすりの始め方・やめ方: ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ
- 作者: 石原藤樹
- 出版社/メーカー: 総合医学社
- 発売日: 2016/10/28
- メディア: 単行本
2016-10-13 08:07
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