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輸血の血液の種別と生命予後について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
輸血のドナーと予後.jpg
今月のJAMA Internal Medicine誌にウェブ掲載された、
輸血の血液の性別や年齢と、
輸血を受けた患者さんの予後との関連についての論文です。

これはまだ実証されたような事項ではなく、
またその差も小さな物なので、
鵜呑みにはせず慎重にお読み頂くようにお願いします。

輸血というのは一種の臓器移植ですから、
その適応は慎重であるべきで、
特に他人からの輸血の適応は、
近年では非常に限定されたものとなっています。

ただ、矢張り応急的な場合には、
必要な救急処置であることは今でも違いはなく、
献血の血液が多くの命を救っていることもまた事実です。

献血の血液は病気のない不特定の方から集められる訳ですが、
その献血者の年齢や性別は、
輸血を受けた患者さんの予後に何等かの影響を与えるのでしょうか?

動物実験などにおいては、
若い血液と老人の血液を一緒にして還流すると、
老人の内臓疾患が改善した、
というような報告が存在しています。

こうしたデータからは、
ちょっと嫌な感じもする話になりますが、
若い人からもらった血液の方が、
高齢者の血液より健康的なのではないか、
というような推測も可能です。

それでは、
実際に献血者の年齢や性別と、
輸血を受けた患者さんの予後との間には、
何等かの関連や違いがあるのでしょうか?

今回の研究はアメリカの4か所の総合病院において、
赤血球の輸血を受けた患者さんの予後と、
その血液の由来との関連を検証しています。

2006年から2013年に掛けて、
30503名の患者さんが187960回の赤血球輸血を受け、
その血液は80755名の提供者から採取されています。

提供者の年齢との関連では、
40歳から49.9歳の提供者からの輸血を基準とした時に、
17歳から19.9歳の提供者からの輸血を受けた患者さんの死亡リスクは、
1.08倍(1.06から1.10)有意に増加していて、
20歳から29.9歳の提供者からの輸血でも、
1.06倍(1.04から1.09)死亡リスクが有意に増加していました。

また、男性からの輸血と比較して、
女性の提供者からの輸血でも、
その後の死亡リスクが1.08倍(1.06から1.09)有意に増加していました。

つまり、女性からの輸血と、
30歳未満の若年者からの輸血は、
そうでない場合と比較して、
若干ながら輸血後の死亡リスクが増加する、
という予想外の結果です。

これが何等かの意味を持つデータであるかどうかは、
まだ確かではありません。

1つの推論としては、
若年者は初回の輸血である可能性がより高く、
高齢者からの輸血は何回もしている方からのものが多いので、
結果として高齢者から提供された血液の方が、
病気のない人が多かったのでは、
という考えが記載されていますが、
いささか苦しい感じもあります。

いずれにしても、
従来あまり考慮されなかった、
献血者の年齢などの背景と、
輸血を受けた患者さんの予後との間に、
関連があるのではないかという指摘は興味深く、
今後より安全性の高い輸血のために、
こうした検証もまた必要なものではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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