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ロ字ック「荒川、神キラーチューン」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日ですが、
午前午後とも石原が外来を担当します。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
荒川神キラーチューン.jpg
2010年に山田佳奈さんを中心に結成された劇団、ロ字ックの、
第11回公演「荒川、神キラーチューン」を観て来ました。

これは2014年に好評だった作品の再演で、
劇場は東京芸術劇場シアターウエストと大きくなり、
町田マリーさんや澤田育子さんなど、
小劇場ではお馴染みの役者さんも多く参加しています。

面白いかも、と思って、
あまり予備知識なく鑑賞しました。

中学生の時に、
その後の人生を決定するような「失敗」をした少女が、
14年後に自分が中学の教師となって、
過去の自分と向き合う、という話で、
舞台の使い方を含めて、
作劇はそれほど上手いとは言えないのですが、
話はストレートに心に刺さるようなところがあり、
なかなか歯ごたえのある、
面白く心にささくれを残すようなお芝居でした。

クドカンやポツドールに近いような世界観なのですが、
あそこまで暴力やグロテスクに傾斜はせず、
少女と少女の心のままに年を重ねた女性の、
心の底からの真実の声が、
真摯であるだけに強く心を撃ちます。

今の人間はあたかも自分が神様のように、
上からの俯瞰的な視線で人生を見ていて、
それでいて神様としての責任は、
引き受けられない、というところが、
今の社会の一番の不幸である、
という洞察は鋭く、
本当に最低の男であることを知りながら、
その男に抱きついて慟哭するという、
凄みのあるラストにも感心しました。

キャストは主人公の少女時代を、
極めて身勝手で自己中心的で、
それでいて愛すべき人格として描いた、
劇団員の小野寺ずるさんの怪演がとても面白く、
対照的で屈折した少女を演じた、
客演のエリザベス・マリーさんと安川まりさんも、
とても良い感じです。

ただ、特に前半、
カラオケボックスで歌をがなるように歌いながら、
その合間に物語が進行するのが、
意図的ではあるのでしょうが、
とても見づらくて聞きづらく、
小野寺さんの奇怪な動き自体は面白いのですが、
歌の質も中途半端で、
せっかくのドラマが、
活きていない感じがしたのが残念でした。

舞台セットも、
多くの場面がカラオケボックスで演じられるのにも関わらず、
舞台奥の高台にカラオケボックスを設置し、
その位置関係が全然動かないので、
大事な場面が遠くで演じられるのが、
非常に残念に感じました。

ラストの部分で、
舞台の前に14年後、
後ろに14年前という対比があり、
そこから逆算でセットを組んでいることは分かるのですが、
それほど効果的でもなく、
舞台を遠く感じるセット構成は、
正直失敗であったと思います。

全ての場面を、
カラオケボックスのセットのみで演じても、
特に違和感はなかったと思いますし、
その方がずっと良かったのではないでしょうか?
ラストのみ、
舞台を前後や上下で2段にする、
ということも出来たのではないかと思います。

来年は本多劇場に進出のようですが、
舞台構成は是非中劇場向けに、
もうひと工夫して欲しいと思いました。

いずれにしても、
多分ある年代の作者にしか書けないような、
非常に切実で心を抉るような作品であることは間違いがなく、
観て良かったと思いました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ゆま

先生のこの演劇の要約の、以下の部分に鳥肌が立つような感動と共感を覚えました。↓

『今の人間はあたかも自分が神様のように、
上からの俯瞰的な視線で人生を見ていて、
それでいて神様としての責任は、
引き受けられない、というところが、
今の社会の一番の不幸である』

作者に注目したいと思います。ありがとうございました。
by ゆま (2016-07-02 08:20) 

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