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メトホルミンと生活改善による糖尿病予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
朝の準備をしつつ、
今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
メトホルミンによる糖尿病予防効果.jpg
今年のLancet Diabetes Endocrinol誌に掲載された、
アメリカで行われた大規模で長期間の、
糖尿病予防プログラムの効果についての論文です。

2型糖尿病の発症をどのように予防するか、
というのは医療全体にとって、
非常に大きな問題です。

糖尿病は単独で動脈硬化性疾患の、
最も強力なリスクになるからです。

日本で行われているメタボ健診も、
糖尿病の予防が最も大きな目標です。

しかし、
最近報道された記事によると、
せっかくの世界に類を見ない、
大規模な予防への試みであるにも関わらず、
個々のデータの突き合わせが、
不可能な状態であるとのことです。

おやおやですね。

アメリカにおいて、
DPP(Diabetes Prevention Program)という試みが、
1996年より開始されました。

これは、アメリカの27の専門施設において登録された、
2型糖尿病リスクの高い成人3224名を、3つのグループに分け、
1つのグループは体重を7%減らすことを目標に、
低脂肪と低カロリーの食事を行ない、
週に150分の運動などの、
生活改善プログラムを実施します。
もう1つのグループはインスリン抵抗性を改善する薬剤である、
メトホルミンを毎日850ミリグラム内服。
そして、最後のグループは偽薬の内服を行ないます。

まず3年間の経過観察を行ない、
その結果は既に公表されています。
コントロールと比較して、
生活改善により糖尿病の発症リスクは58%低下し、
メトホルミンの使用により、31%低下していました。

それでは、より長期間の効果はどうでしょうか?

今回の研究ではDPPのより長期の観察を、
DPPOSとして継続し、
トータル15年の経過観察が実行されています。

その結果…

生活習慣の改善により、
糖尿病の発症リスクは15年で27%低下し、
メトホルミンの使用により、
18%低下していました。
15年経過した時点で、
生活習慣改善群の55%、
メトホルミン群の56%、
コントロール群の62%が糖尿病を発症していました。

観察期間中の糖尿病3大合併症の頻度は、
3つの群で有意な差は認められませんでしたが、
糖尿病を発症することにより、
当然ですがその発症リスクは増加しました。

この結果をどう見るかは難しいところです。

ただ、末端の医療者から見ると、
糖尿病のリスクの高い方に、
粘り強く生活改善をアドバイスすることは、
矢張り重要でその方の長期予後に直結することを、
改めて示した意義は大きいように思います。

メトホルミンの効果は、
それほど高くは見えないかも知れませんが、
こうして15年という長期の観察期間において、
有意な抑制効果が見られたことは、
これも意義は大きいと思います。

糖尿病予備群を含めて、
糖尿病の発症リスクが高いと想定される方は、
定期的な血糖やHbA1cの測定を行なうとともに、
生活習慣の改善を、
可能な範囲で継続し、
ケースによってはメトホルミンの使用を、
検討するのも、1つの選択肢のように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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