葉酸の脳卒中予防効果 [医療のトピック]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今月のJAMA誌に掲載された、
葉酸のサプリメントによる脳卒中予防効果を検証した論文です。
葉酸はビタミンB群の一種で、
組織の形成には欠くことの出来ない働きをし、
その妊娠中の欠乏は、
胎児の二分脊椎などの、
先天性の異常の原因になることが知られています。
このため妊娠されている方では、
1日400マイクログラム以上の、
葉酸の摂取が必要です。、
葉酸は脳神経系の発育にも、
影響を与えるビタミンであるため、
認知症や脳卒中の予防になるのではないか、
という考えは以前から存在しています。
ただ、精度の高い臨床試験や大規模な疫学データで、
明確にその予防効果が確認された、
ということはありません。
小規模な研究で効果あり、とされたことはあるのですが、
大規模な研究やメタ解析の結果などでは、
概ね否定的な結果となっています。
今回のデータは中国のもので、
改めて葉酸のサプリメントの脳卒中に対する、
一次予防の効果を検証したものです。
これまでのデータと異なるところは、
二重盲検の介入試験という、
非常に厳密な手法を取りながら、
例数が2万例を超えるという大規模なものであることと、
葉酸は食事調査ではなく、
サプリメントを1日0.8ミリグラムという固定量で投与し、
葉酸代謝に影響を与える遺伝素因である、
MTHFRという葉酸代謝酵素の遺伝子変異を検査し、
その遺伝子型が均等に振り分けられるように、
調整がされている、ということです。
つまり、かなり大規模かつ厳密なものなのです。
対象は高血圧の成人患者で、
基礎薬としてACE阻害剤のエナラプリル(商品名レニベースなど)が使用され、
それに葉酸のサプリメントを0.8ミリグラム上乗せした群と、
偽サプリメントを上乗せした群とでそれぞれ比較しています。
その結果…
平均の治療期間4.5年において、
偽サプリ群ではトータルな初回の脳卒中が、
3.4%に発症したのに対して、
葉酸群では2.7%の発症となっていて、
葉酸群で21%脳卒中が有意に抑制された、
という結果になりました。
脳卒中の中身を見てみると、
虚血性梗塞は24%の低下になっていましたが、
出血性梗塞には有意差はありませんでした。
また総死亡や心筋梗塞についても、
両群で差は付いていません。
つまり、葉酸のサプリメントの使用により、
脳虚血性梗塞が、
4分の1程度予防された可能性が示唆されました。
ただ、データは物凄く綺麗に両群が揃っていて、
お叱りを受けるので、
憶測であまり突っ込んだことは言えませんが、
無作為で果たしてこうなるかしら、
と疑問に感じる点があるのは事実です。
脳卒中が2割以上減るという介入試験は、
EPAのものや地中海ダイエットによるものなど、
数えるほどでかつ、
複数の同種の試験で、
同じ結果が得られている、
というものはほぼ皆無なので、
今回の結果も上手く帳尻を合わせた感じになっているのが、
まだ信用するには早過ぎる、という思いがあります。
ただ、1日0.8ミリグラムの葉酸は、
ほぼ無害と言って間違いはなく、
その意味では習慣として摂って頂くことは、
ご親族が脳卒中を起こされていたり、
高血圧のあるような方では、
悪くない選択のように思います。
ちなみに医療用の葉酸の製剤は、
1錠が5ミリグラムという高用量で、
何か分量が間違っているのでは、とも思ったのですが、
実際に使用されている患者さんの血中濃度を測定すると、
基準上限の10倍以上ということがざらなので、
高用量であることは間違いがなさそうです。
この錠剤の使用は、
特殊な事例に限った方が良いように、
個人的には思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍引き続き発売中です。
よろしくお願いします。
六号通り診療所の石原です。
今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今月のJAMA誌に掲載された、
葉酸のサプリメントによる脳卒中予防効果を検証した論文です。
葉酸はビタミンB群の一種で、
組織の形成には欠くことの出来ない働きをし、
その妊娠中の欠乏は、
胎児の二分脊椎などの、
先天性の異常の原因になることが知られています。
このため妊娠されている方では、
1日400マイクログラム以上の、
葉酸の摂取が必要です。、
葉酸は脳神経系の発育にも、
影響を与えるビタミンであるため、
認知症や脳卒中の予防になるのではないか、
という考えは以前から存在しています。
ただ、精度の高い臨床試験や大規模な疫学データで、
明確にその予防効果が確認された、
ということはありません。
小規模な研究で効果あり、とされたことはあるのですが、
大規模な研究やメタ解析の結果などでは、
概ね否定的な結果となっています。
今回のデータは中国のもので、
改めて葉酸のサプリメントの脳卒中に対する、
一次予防の効果を検証したものです。
これまでのデータと異なるところは、
二重盲検の介入試験という、
非常に厳密な手法を取りながら、
例数が2万例を超えるという大規模なものであることと、
葉酸は食事調査ではなく、
サプリメントを1日0.8ミリグラムという固定量で投与し、
葉酸代謝に影響を与える遺伝素因である、
MTHFRという葉酸代謝酵素の遺伝子変異を検査し、
その遺伝子型が均等に振り分けられるように、
調整がされている、ということです。
つまり、かなり大規模かつ厳密なものなのです。
対象は高血圧の成人患者で、
基礎薬としてACE阻害剤のエナラプリル(商品名レニベースなど)が使用され、
それに葉酸のサプリメントを0.8ミリグラム上乗せした群と、
偽サプリメントを上乗せした群とでそれぞれ比較しています。
その結果…
平均の治療期間4.5年において、
偽サプリ群ではトータルな初回の脳卒中が、
3.4%に発症したのに対して、
葉酸群では2.7%の発症となっていて、
葉酸群で21%脳卒中が有意に抑制された、
という結果になりました。
脳卒中の中身を見てみると、
虚血性梗塞は24%の低下になっていましたが、
出血性梗塞には有意差はありませんでした。
また総死亡や心筋梗塞についても、
両群で差は付いていません。
つまり、葉酸のサプリメントの使用により、
脳虚血性梗塞が、
4分の1程度予防された可能性が示唆されました。
ただ、データは物凄く綺麗に両群が揃っていて、
お叱りを受けるので、
憶測であまり突っ込んだことは言えませんが、
無作為で果たしてこうなるかしら、
と疑問に感じる点があるのは事実です。
脳卒中が2割以上減るという介入試験は、
EPAのものや地中海ダイエットによるものなど、
数えるほどでかつ、
複数の同種の試験で、
同じ結果が得られている、
というものはほぼ皆無なので、
今回の結果も上手く帳尻を合わせた感じになっているのが、
まだ信用するには早過ぎる、という思いがあります。
ただ、1日0.8ミリグラムの葉酸は、
ほぼ無害と言って間違いはなく、
その意味では習慣として摂って頂くことは、
ご親族が脳卒中を起こされていたり、
高血圧のあるような方では、
悪くない選択のように思います。
ちなみに医療用の葉酸の製剤は、
1錠が5ミリグラムという高用量で、
何か分量が間違っているのでは、とも思ったのですが、
実際に使用されている患者さんの血中濃度を測定すると、
基準上限の10倍以上ということがざらなので、
高用量であることは間違いがなさそうです。
この錠剤の使用は、
特殊な事例に限った方が良いように、
個人的には思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍引き続き発売中です。
よろしくお願いします。
健康で100歳を迎えるには医療常識を信じるな! ここ10年で変わった長生きの秘訣
- 作者: 石原藤樹
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2014/05/14
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
健康で100歳を迎えるには医療常識を信じるな! [ 石原藤樹 ]
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2015-04-28 07:58
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