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月刊「根本宗子」バー公演『ご無沙汰してます。』 [演劇]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。

今日は土曜日なので趣味の話題です。
2本立てです。

まずこちら。
根本宗子バー公演.jpg
小劇場界でアイドル的人気を持ち、
物凄く精力的に公演を続けている、
根本宗子さんの劇団、
『月刊「根本宗子」』のバー公演に足を運びました。

僕は初見です。

根本さんは19歳で自分の劇団を旗揚げし、
作・演出・出演を基本的に全てでこなし、
1ヶ月に1回くらいのハイペースで演劇の上演を続けています。

自分の名前を劇団名にする辺りは、
「劇団本谷有希子」を彷彿とさせますが、
そのスタイルはかなり違います。

内容は小劇場の本公演と、
四谷三丁目の小さなバーでのバー公演、
そして客演や共同創作なども含まれます。

バー公演というのは、
その名の通り、小さなバーの場所を借りて、
そこをそのまま舞台にして、
ミニマルな演劇の上演をするものです。

かつて初期の状況劇場は、
ジャズ喫茶で深夜の公演を行ないました。
使用出来る劇場があまりなかった、
ということもあったのでしょうが、
バーや喫茶店などでの公演は、
上演場所のなかなか確保出来ないアーティストにとっては、
アングラの時代から重要な武器ともなりました。

ただ、
音楽のライブとは違って、
台詞で物語を体感させなければいけない演劇は、
そうした場所ではその真価を発揮し難い、
という面があることも事実です。

昔あった新宿モリエール(今のシアターモリエールとは違います)は、
バーと一体化したような小劇場で、
テーブルを横にどけたスペースに座布団を敷いて腰を下ろして、
横にはバーカウンターがありました。
舞台はちゃんとありましたが、
お酒を引っ掛けながら芝居を観るようなイメージです。

それから前川麻子さんという方が、
一時期六本木近くのバーで定期的に公演をしていました。

これは2回くらい行きましたが、
本当の小さなバーの片隅で、
バーの椅子に腰を掛けたりして、
お酒を飲みながらちょっとした芝居を観る、
というようなスタイルのものでした。

怪しげなバーの雰囲気は良かったのですが、
お芝居自体は朗読劇という感じで、
2人くらいの役者さんが、
ボソボソ自然体で語り合っているうちに、
30分くらいで終わってしまいます。

もっとバーならでは、という感じの趣向があっても良いのに、
と思いましたし、
僕は基本的に過剰な演劇が好きなので、
シンプルなそのスタイルは物足りなく感じました。
(前川さんのファンの方には失礼をお詫びします。
良くなかったのではなく、
僕の好みとは合わなかったのです)

今回の根本宗子さんのバー公演は、
前川さんの時と同じような、
本当に小さなバーをそのまま使い、
フロアに対面の小さな椅子を並べて、
その間の通路と、
奥のピアノの前だけを使って芝居をする、
というスタイルです。

チームA、チームB、チームCという3パターンの2人芝居の同時上演で、
今回はチームCのみを観劇しました。

上演時間は30分ちょっとですが、
かっちりとお芝居になっていて、
なかなか楽しく観ることが出来ました。

何より根本さんの人柄の良さが、
大変心地良いミニマルな空間を、
成立させているのが素敵なのです。

芝居は強烈な個性の感じられるものではないので、
物足りなさは残るのですが、
この素材の範囲で最善を目指そう、
という根本さんの姿勢が強く感じられるので、
ちょっと暖かいものをもらって、
バーを後にすることが出来ました。

一緒に行った妻も、
「これならもう一度見てもいい」
と言っていました。

以下、少しネタバレがあります。

根本さんとあやかさんによる女性の2人芝居で、
2人はお笑いコンビという設定です。

根本さんがピンでR1グランプリに優勝し、
地方の放送局の仕事をもらったので、
2人が離れ離れになる、という設定で、
その別れる当日のてんやわんやが、
それ自体長い漫才のようにして描かれます。

途中でカラオケで掛け合いの歌をデュエットするという仕掛けや、
一時期増殖した、
言葉と身振りを分離して芝居をするような、
劇団のパロディ的な趣向もあり、
ラストは意外に綺麗なオチが付きます。

小空間ですが、
しっかりと声を出して、
あまりリアルになり過ぎることなく、
かっちりと小劇場の演劇になっています。

それでいて、
本当に至近距離で、
向い合せの客席の中央で芝居をする時などは、
目の前10センチくらいで役者さんの演技が展開されるので、
きちんとした劇場では体感出来ない、
根本さんの頭の中の世界に、
そのまま身を委ねているような感じがあります。

こうした趣向が成立しているのは、
一にも二にも根本さんの人柄にあって、
彼女は客入れから前説、上演後のお見送りまで、
全てを自分でこなし、
演劇を本当に愛していることを、
観客の1人1人に体感させてくれます。

それが多分このバー公演の最も大きな魅力で、
それと比較すると、
作品の密度は今ひとつであることが、
今後の課題であるようにも思います。

毎年好きでR1グランプリの予選には足を運んでいるので、
とても今回の設定はリアルには感じられず、
お2人のキャラに芸人臭は希薄で、
その悲哀もなく、
会話部分のテンポは単調で繰り返しが多いので、
歌や音効で上手くカバーはされているのですが、
会話劇としての密度はそれほど高いものではありませんでした。

これからの根本さんの活躍に期待したいと思います。

それでは次の記事に続きます。
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