睡眠時間と脳卒中リスクについて [医療のトピック]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
睡眠時間の長さが、
先月のNeurology誌に掲載された、
睡眠時間と脳卒中の起こり易さについての論文です。
脳卒中や心筋梗塞などの発症と、
一定の関連がある、
という疫学データは以前から複数存在しています。
不眠症は多くの病気のリスクと関連があるとされていますから、
普通に考えると、
睡眠時間が短い方が、
病気は増えるのではないかと想像されます。
しかし、
脳卒中に限って言うと、
実際には睡眠時間が短くても長くても、
それぞれリスクが高まるとする報告が多く、
それもどちらかと言えば、
睡眠時間が長い方が、
よりそのリスクが高まる、
というデータが多く見られるのです。
ただ、睡眠時間と脳卒中のリスクとの関連については、
まだ教科書に記載されるような、
はっきりとした知見が得られていません。
今回のデータはイギリスにおいて、
主に高齢者を対象として、
睡眠時間と脳卒中の発症との関連性を検証しています。
別箇の癌に関する長期の疫学データを活用したものですが、
登録の時点で脳卒中の既往のない、
42歳から81歳の9692名を対象とし、
9.5年間の経過観察を行なっています。
睡眠時間の聞き取りは、
4年の間隔を置いて2回行われています。
6時間未満の睡眠が短時間睡眠、
6から8時間の睡眠が平均的な睡眠、
そして8時間を超えるものが、
長時間睡眠として定義されています。
このほぼ10年の経過観察期間中に、
346例の脳卒中の発症が報告されました。
高血圧や年齢など、
他の脳卒中のリスクを平均化した上で、
平均睡眠と比較して、
8時間を超える長時間睡眠は、
脳卒中のリスクを1.46倍(1.08から1.98)、
有意に増加させました。
一方で6時間未満の短時間睡眠は、
脳卒中のリスクを1.18倍(0.91から1.53)増加させるのみで、
統計的には有意な上昇は認めませんでした。
睡眠時間は数年の間隔で2回測定されているので、
2回とも平均的であったグループを基準にして、
比較を行なうと、
2回とも長時間の睡眠であった場合には、
その脳卒中のリスクは2.01倍有意に増加し、
また初回の測定では短時間睡眠で、
2回目の測定で長時間であった場合には、
リスクは3.75倍と全ての組み合わせで最大になっていました。
この2つの組み合わせ以外は、
その差は有意にはなりませんでした。
脳卒中のリスクは性別では女性でより睡眠との影響が強く、
虚血性梗塞では長時間睡眠でのリスク増加が、
明瞭であったのに対して、
出血性梗塞はむしろ短時間睡眠で増加する傾向がありました。
年齢に関しては、
63歳以上で線を引いた時に、
長時間睡眠による卒中リスクの増加は有意となります。
一方で短時間睡眠で増加する出血性梗塞は、
若年層での解析で有意となります。
つまり、
8時間を超える睡眠時間が持続していると、
平均の最大で2倍、
脳卒中、特に虚血性梗塞のリスクは増加し、
何らかの理由で睡眠時間が延長すると、
その影響はより顕著になります。
睡眠時間が短いと、
今度は出血性梗塞のリスクが増加する傾向を示しますが、
そちらはより軽度で、
統計的には明瞭ではないレベルです。
これまでの同種の疫学データも、
大規模なものはほぼ同様の傾向を示していることから、
おそらくこの現象は事実と思われます。
それでは、何故長時間の睡眠が、
脳卒中のリスクを高めるのでしょうか?
若年層の出血性梗塞が、
睡眠不足で増えるというのは、
直感的には理解し易い現象です。
おそらく生まれつきの血管の脆弱性(弱さ)があり、
不眠による酸化ストレスの増加や、
交感神経の緊張、
血圧の上昇などが誘引となって、
出血を来たした可能性が想定されるからです。
一方で高齢者の長時間睡眠が、
虚血性梗塞を誘発する、というのは、
簡単には理解が出来ません。
こうした研究は聞き取りによるデータであって、
実際の睡眠の状態を観察したものではないので、
睡眠の質が低下している可能性や、
病的な状態で見かけ上睡眠時間が延長した、
というような可能性が指摘されていますが、
まだ決定的な説明には至っていないようです。
いずれにしても、
8時間以上の睡眠が、
特に高齢者においては、
決して健康のサインとは言えず、
中でも年齢と共に睡眠時間が長くなるようなケースでは、
健康状態に問題がないかどうかのチェックを、
慎重に進める必要があるのかも知れません。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍引き続き発売中です。
よろしくお願いします。
六号通り診療所の石原です。
今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
睡眠時間の長さが、
先月のNeurology誌に掲載された、
睡眠時間と脳卒中の起こり易さについての論文です。
脳卒中や心筋梗塞などの発症と、
一定の関連がある、
という疫学データは以前から複数存在しています。
不眠症は多くの病気のリスクと関連があるとされていますから、
普通に考えると、
睡眠時間が短い方が、
病気は増えるのではないかと想像されます。
しかし、
脳卒中に限って言うと、
実際には睡眠時間が短くても長くても、
それぞれリスクが高まるとする報告が多く、
それもどちらかと言えば、
睡眠時間が長い方が、
よりそのリスクが高まる、
というデータが多く見られるのです。
ただ、睡眠時間と脳卒中のリスクとの関連については、
まだ教科書に記載されるような、
はっきりとした知見が得られていません。
今回のデータはイギリスにおいて、
主に高齢者を対象として、
睡眠時間と脳卒中の発症との関連性を検証しています。
別箇の癌に関する長期の疫学データを活用したものですが、
登録の時点で脳卒中の既往のない、
42歳から81歳の9692名を対象とし、
9.5年間の経過観察を行なっています。
睡眠時間の聞き取りは、
4年の間隔を置いて2回行われています。
6時間未満の睡眠が短時間睡眠、
6から8時間の睡眠が平均的な睡眠、
そして8時間を超えるものが、
長時間睡眠として定義されています。
このほぼ10年の経過観察期間中に、
346例の脳卒中の発症が報告されました。
高血圧や年齢など、
他の脳卒中のリスクを平均化した上で、
平均睡眠と比較して、
8時間を超える長時間睡眠は、
脳卒中のリスクを1.46倍(1.08から1.98)、
有意に増加させました。
一方で6時間未満の短時間睡眠は、
脳卒中のリスクを1.18倍(0.91から1.53)増加させるのみで、
統計的には有意な上昇は認めませんでした。
睡眠時間は数年の間隔で2回測定されているので、
2回とも平均的であったグループを基準にして、
比較を行なうと、
2回とも長時間の睡眠であった場合には、
その脳卒中のリスクは2.01倍有意に増加し、
また初回の測定では短時間睡眠で、
2回目の測定で長時間であった場合には、
リスクは3.75倍と全ての組み合わせで最大になっていました。
この2つの組み合わせ以外は、
その差は有意にはなりませんでした。
脳卒中のリスクは性別では女性でより睡眠との影響が強く、
虚血性梗塞では長時間睡眠でのリスク増加が、
明瞭であったのに対して、
出血性梗塞はむしろ短時間睡眠で増加する傾向がありました。
年齢に関しては、
63歳以上で線を引いた時に、
長時間睡眠による卒中リスクの増加は有意となります。
一方で短時間睡眠で増加する出血性梗塞は、
若年層での解析で有意となります。
つまり、
8時間を超える睡眠時間が持続していると、
平均の最大で2倍、
脳卒中、特に虚血性梗塞のリスクは増加し、
何らかの理由で睡眠時間が延長すると、
その影響はより顕著になります。
睡眠時間が短いと、
今度は出血性梗塞のリスクが増加する傾向を示しますが、
そちらはより軽度で、
統計的には明瞭ではないレベルです。
これまでの同種の疫学データも、
大規模なものはほぼ同様の傾向を示していることから、
おそらくこの現象は事実と思われます。
それでは、何故長時間の睡眠が、
脳卒中のリスクを高めるのでしょうか?
若年層の出血性梗塞が、
睡眠不足で増えるというのは、
直感的には理解し易い現象です。
おそらく生まれつきの血管の脆弱性(弱さ)があり、
不眠による酸化ストレスの増加や、
交感神経の緊張、
血圧の上昇などが誘引となって、
出血を来たした可能性が想定されるからです。
一方で高齢者の長時間睡眠が、
虚血性梗塞を誘発する、というのは、
簡単には理解が出来ません。
こうした研究は聞き取りによるデータであって、
実際の睡眠の状態を観察したものではないので、
睡眠の質が低下している可能性や、
病的な状態で見かけ上睡眠時間が延長した、
というような可能性が指摘されていますが、
まだ決定的な説明には至っていないようです。
いずれにしても、
8時間以上の睡眠が、
特に高齢者においては、
決して健康のサインとは言えず、
中でも年齢と共に睡眠時間が長くなるようなケースでは、
健康状態に問題がないかどうかのチェックを、
慎重に進める必要があるのかも知れません。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍引き続き発売中です。
よろしくお願いします。
健康で100歳を迎えるには医療常識を信じるな! ここ10年で変わった長生きの秘訣
- 作者: 石原藤樹
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2014/05/14
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
健康で100歳を迎えるには医療常識を信じるな! [ 石原藤樹 ]
- ショップ: 楽天ブックス
- 価格: 1,296 円
2015-03-03 08:10
nice!(28)
コメント(0)
トラックバック(0)
コメント 0