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高齢者の転倒リスクの簡単な予測法 [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
歩きながら話すこと.jpg
1997年のLancet誌のレターです。
古いものですが、
先日リハビリテーションの先生の講演の中で、
紹介されていたので、
興味を持って読んでみました。

高齢者の転倒は、
高頻度に骨折に結び付き、
寝たきりの原因となると共に、
その生命予後にも大きな影響を与えます。

しかし、そのリスクを予測することは、
そう簡単なことではありません。

今回の研究においては、
「歩きながら喋ることが出来るか?」
というシンプルな区分けにおいて、
それが不可能であることが、
その後の転倒を予測する因子として、
有用であるかを検証しています。

対象となっているのは、
スウェーデンの介護施設に入所している、
平均年齢80歳の高齢者58名で、
歩行してもらっている状態で呼び掛け、
会話の段階で歩行が停まってしまった12名と、
歩行したまま会話をすることが出来た46名とを比較したところ、
その後の半年の経過観察において、
歩きながら喋れなかった12名中10名が転倒したのに対して、
歩きながらの会話が可能であった46名中では、
転倒したのは11名でした。

従って、
この推測法の感度は83%で、
特異度は48%ということになります。

それを図示したものがこちらになります。
転倒の予測法の図.jpg
要するに、歩きながら喋ることの出来ない人は、
半年以内に転倒する確率が8割を超えるのですが、
歩きながら喋ることの出来る人でも、
2割は転倒するので、
それが出来るからと言って、
転倒しないとは言えない、
ということになる訳です。

何故歩きながら喋ることが出来るかどうかが、
転倒の推測に使えるかと言うと、
歩きながら喋るには、
歩行と会話というそれぞれ別箇の「仕事」を、
身体がバランスを取って行わないと成立しないので、
それだけ高度の身体と脳の機能が必要とされ、
それが出来る人は、
転倒の危険に対しても、
咄嗟の反応が起こり易いのですが、
それが出来ない人は、
1つの動作を行なうことで精一杯の能力しか持っていないので、
転倒のリスクに対しても、
対応が難しいと想定されるのです。

この方法はシンプルで、
いつでも出来、
お金も時間も掛からない割には感度が良いので、
勿論これだけで判定するのは無理があるのですが、
有用性の高いものだと思います。

皆さんは歩きながら途切れずに会話が出来ますか?
それとも歩いていて横で呼び掛けられると、
思わず停まってしまうでしょうか?

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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コメント 2

Silvermac

参考になるお話でした。
by Silvermac (2015-02-17 16:21) 

fujiki

Silvermacさんへ
コメントありがとうございます。
小ネタですが、
面白い話だと思いました。
by fujiki (2015-02-18 09:04) 

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