SSブログ

2型糖尿病における降圧治療の効果 [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
2型糖尿病の血圧コントロールの効果.jpg
今月のJAMA誌に掲載された、
2型糖尿病における降圧治療の効果についての論文です。

昨年改訂されたアメリカの高血圧ガイドライン(JNC-8)では、
高血圧の治療目標値は、
その基礎疾患の有無には関わらず、
59歳までの年齢では上が140で下が90に設定されました。

この主な理由は、
降圧剤などを使用して血圧を下げる臨床試験において、
それより血圧を下げることによるメリットが確認されない、
という点にあります。

一般の人達を対象にした疫学研究では、
概ね上が115mmHg、下が75mmHgを越えると、
高くなるに従って、
心筋梗塞や心不全による死亡リスクは増加します。

この結果を見る限りは、
血圧の目標値は、
上を120位にした方が、
より患者さんのメリットになるのではないか、
と推察されます。

しかし、一方でリスクのある患者さんに対して、
血圧を上が140くらいを目標にコントロールする場合と、
それより低くコントロールする場合とで比較すると、
少なくとも精度の高い臨床試験のデータでは、
明確な予後の差は証明されていません。

糖尿病の患者さんの場合、
心血管疾患のリスクはそうでない人より高く、
そのためより厳格な血圧のコントロールが、
患者さんの予後を改善すると考えられました。

実際に臨床試験や疫学データでは、
そうした傾向を示唆するものが複数あり、
そのため現行の日本のガイドラインにおいては、
血圧の目標値は上が130以下、下が80以下に設定され、
アメリカのガイドラインにおいても、
昨年の改訂以前には、
上が130、下が85という、
日本とほぼ同様の基準値が設定されていました。

それが昨年基礎疾患に関わらず、
上が140で下が90に改められたのは、
上記のように一定の根拠はあるのですが、
これまでの糖尿病の患者さんにおける多くの知見が、
無視されたようにも思えます。

そこで今回の文献においては、
2014年までの2型糖尿病の患者さんを含む集団における、
大規模な介入試験のデータをまとめて解析し、
2型糖尿病の患者さんにおいての、
降圧治療の効果を検証しています。
40の介入試験が対象となり、
10万人余の患者さんが含まれています。

その結果…

2型糖尿病の患者さんにおいて、
血圧を低下させることは、
死亡リスクを低下させ、
心血管疾患などの発症リスクを低下させることが確認されました。

具体的には、
収縮期血圧を10mmHg低下させることにより、
死亡リスクを13%、
虚血性心疾患のリスクを12%、
脳卒中のリスクを27%、
微小アルブミン尿を17%、
糖尿病性網膜症のリスクを13%、
それぞれ有意に低下させる効果が認められました。

ただ、その効果は、
収縮期血圧が140未満においては、
かなり減弱することも確認されました。

そして、
収縮期血圧を130未満にすることにより、
有意なリスク低下が期待されるのは、
網膜症と微小アルブミン尿、
そして脳卒中においてのみでした。

つまり、
糖尿病の患者さんの生命予後をターゲットとして考えると、
血圧の目標値は上が140で良く、
網膜症や腎症、脳卒中のリスクを低下させる目的では、
上が130を切ることを目標とするコントロールにも、
一定の蓋然性がある、ということになるのです。

従って、どちらの目標値が誤り、ということではなく、
いつものことですが、
個々の患者さんの病態に合わせて、
血圧コントロールは検討するべきものなのだと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍引き続き発売中です。
よろしくお願いします。

健康で100歳を迎えるには医療常識を信じるな! ここ10年で変わった長生きの秘訣

健康で100歳を迎えるには医療常識を信じるな! ここ10年で変わった長生きの秘訣

  • 作者: 石原藤樹
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
  • 発売日: 2014/05/14
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)





nice!(28)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 28

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0