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子供の風邪はどのくらいで治るのか? [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
風邪の症状持続期間.jpg
今月のBritish Medical Journal誌に掲載された、
お子さんの風邪の症状が、
どのくらいで改善するのか、
という素朴な疑問を検討した文献です。

発熱や咽喉の痛みや咳などの、
お子さんの所謂「風邪症状」は、
もっとも身近な病気とも言えます。

「風邪症状」に対する考え方は様々で、
それは家庭で治すべきものであって、
薬も必要なければ、お医者さんに行く必要もない、
という考え方がある一方で、
風邪は万病の元で馬鹿にしたものではないので、
早めに医者に行って治した方が良い、
というポリシーの方もいます。
その中間と言うべきか、
医者には行かないけれど、
市販の風邪薬は山のように飲む、
というような考えもあります。

風邪では医者に掛かる必要はない、
という意見の医者が多い割には、
冬場の多くの初期診療の医療機関で、
最も多い患者さんは矢張り風邪症状です。

上記の文献の記載によれば、
アメリカやイギリスにおいても、
初期診療で掛かる小児科の患者さんの3分の1は風邪症状で、
現実的には極めて限定的な効果しかない、
抗生物質の処方が一般的に行なわれている、
ということですから、
こうした傾向は洋の東西を問わないもののようです。

「多くの風邪症状は時間が経てば自然に治る」
というのは、多くの方が認識している事実ですが、
それではより具体的に、
どのような風邪症状はどの程度の期間で回復するのが平均的なのか、
というような疑問に対する答えとなると、
意外に専門家でもその判断は一定していません。

これも上記の文献の中にある記載ですが、
2008年の英国国立医療技術評価機構のガイドラインによると、
急性中耳炎は4日、急性咽頭炎は1週間、
風邪症状は10日程度、急性の咳や気管支炎は3週間が、
平均的な症状の持続期間とされていますが、
アメリカのCDCの患者さんへの情報では、
咽喉の痛みは1から2週間、
風邪症状は2週間、咳症状は2から8週間が、
平均的な持続期間とされています。

つまり、こうした権威のある情報においても、
風邪症状の期間は一定していないのです。

こうした症状の持続期間の持つ意味は、
平均的な期間の範囲であれば、
お子さんの全身状態が良ければ、
そのまま家庭で様子を見ても、
問題のない可能性が高いけれど、
それを越えて症状が持続したり、
悪化の兆候を示したりすれば、
医療機関の受診が望ましい、
という1つの指針となる、
という意味合いがあります。

今回の検討はこれまでの主な臨床データをまとめて検討し、
より適切な個々の風邪症状の平均的な持続期間を、
割り出そうというものです。

その結果…

18歳以下のお子さんのデータの解析において、
9割のお子さんでは、
耳の痛みは7から8日以内に改善し、
咽喉の痛みは2から7日の間に改善し、
クループという咽喉の狭くなる症状は2日までに、
気管支炎は21日間までに、
急性の咳症状は25日間以内に、
鼻水などの風邪症状は15日以内に、
それ以外の気道感染症状は16日以内に改善していました。

これまでのガイドラインとかなり差があったのは、
耳の痛み(中耳炎など)と鼻水などの風邪症状の持続が、
これまでのガイドラインより長かったことで、
それ以外は概ね同等の結果となっていました。

こうしたデータは一般臨床に直結しているものなので、
意外に有益で馬鹿に出来ないのですが、
地域差もある可能性が高く、
日本においても同様の検討が有意義だと思いますが、
信頼のおけるまとまった報告は、
あまりないように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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