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シタグリプチンの睡眠に対する効果?について [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
シダグリプチンとQOLの改善.jpg
今年のCardiovascular Diabetology という耳慣れない雑誌に発表された、
日本の某大学の研究グループによる、
シタグリプチンという糖尿病治療薬の、
効果についての論文です。

これは先日の話題でDPP-4を検索していたら、
「糖尿病の薬に睡眠改善効果」という、
ちょっと不思議な記事を見付けて、
その元ネタを辿って見付けたものです。

正直、読まなくても良かったね、
という内容でしたが、
こうした記事を事実と思う方もいるかも…
と考え一応内容をご紹介したいと思います。

DPP-4というのは、
多くの細胞に発現している酵素ですが、
その1つの働きとして、
インクレチンというインスリン刺激物質の、
分解を行なっているため、
この酵素の阻害剤が、
糖尿病の治療薬として使われています。

これをDPP-4阻害剤と呼んでいます。

このタイプの薬剤のうち、
日本で最初に発売されたのが、
シタグリプチン(商品名ジャヌビア、グラクティブ)で、
世界的にもDPP-4阻害剤の臨床データは、
このシタグリプチンが最も豊富だと思います。

一時期は糖尿病治療の救世主のように扱われましたが、
単独での血糖改善効果は弱く、
膵炎の発症や膵臓癌のリスク増加の危惧などもあって、
発売当初よりその注目度は低下しつつあります。

しかし、
日本の糖尿病治療をリードする、
多くの専門医の先生にとって、
「DPP-4阻害剤押し」は、
海外より強く残っていると思います。

上記の文献はこのシタグリプチンの効果が、
如何に素晴らしいかを実証するために計画されたもののようです。

対象は成人の2型糖尿病のトータル188名の患者さんで、
全例にそれまでの治療に上乗せする形で、
シタグリプチン1日50mgが使用され、
3カ月後には適宜増減されて、
12か月後までの効果と安全性などの経過観察が行なわれます。

その結果、
糖尿病のコントロールの指標である、HbA1cは、
1年で0.6%程度低下し、
生活の調査を行なったところ、
使用前より睡眠の質の指標が改善した、
とされています。

DPP-4は、
インクレチン以外にも、
多くの蛋白質の分解に関わっていますから、
その中に脳内ホルモンのようなものもあり、
睡眠に影響を与えるような可能性も、
勿論皆無とは言えません。

しかし、
そうしたことを検証するには、
患者さんの数が200人に満たない、
という規模の今回の試験では、
規模的にまず不充分であると思いますし、
試験のデザイン自体も厳密性に欠けます。

本来はシタグリプチンと、
偽薬を使用して、
患者さんにも医者にも分からないような形で、
両者を使用して比較するか、
偽薬がリスクが高いとすれば、
対照薬として他の糖尿病治療薬を用いて、
同様の比較を行なうべきですが、
今回はそうした対照群は設定されず、
通常の臨床そのままに、
全ての患者さんに対して、
患者さんにも医者にも分かる形で薬が処方され、
それも通常の治療への上乗せですから、
血糖の降下作用のみならともかく、
睡眠の質のようなかなり主観的な指標を、
患者さんにアンケートを取るのみで数値化し、
処方の前後で単純に比較しても、
大きな意味のあることのようには思えません。

更には睡眠のような現象は、
それに影響する多くの因子を、
統計的に考慮した上で薬の効果を見るべきですが、
そうした検討も上記の文献では、
全く行なわれてはいません。

そもそも睡眠の質以外に、
血糖値を含めて様々な指標が変動しているのですから、
仮に睡眠の質の改善が事実としても、
それがシタグリプチンの効果であるかどうかは、
何とも言えないのです。

勿論こうした一般臨床医レベルの治療効果の研究も、
決して意味のないものではなく、
患者さんを科学的に診る意味での、
重要な一助になるべきものですが、
少なくとも日本の医療の臨床研究を、
リードする立場であるべき大学の研究チームが、
このレベルの研究実績では矢張りまずいのではないか、
と個人的には思えてなりません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ポテト

本日、予約をしようと思い、お電話致しました。
受付された女性の方の対応が暗く、とても感じが悪かったです。
詳細を聞きたいにも関わらず、質問に答えず、名前と電話番号を聞かれ、混雑の程度を尋ねると、さらに年配の女性に電話をかわられました。
その方が今まで話したどの診療所の受付の方より、不親切でした。
「他へいくならどうぞ」や、「確実に来られるんですか?」「土曜の夕方はうちしかやってないんで混みますけど、まぁ運が良かったらみてもらえるんじゃないですか?」等、の言葉。
「うちは予約制じゃないし、来れないなら他の方にゆずるんで全然結構ですよ」と言われたにも関わらず、最後に「これない場合は電話してください」と言われ、言ってることが支離滅裂で、そしてとても感じが悪く、大声で怒られている気さえしたので、そこまで言われてはもう行くのはやめようとおもいました。
患者さんは不安な気持ちや体調不良で連絡してきているのに、電話の応対がそんなに悪くては、どんなにいい先生でも、予約電話の時点で患者さんは気を悪くされると思います。
まずは受付スタッフの対応、電話応対の方への指導をしてほしいと思いました。
by ポテト (2013-05-24 16:37) 

fujiki

ポテトさんへ
大変申し訳ありませんでした。
受付と看護師には事情を聞き、
私から指導をしました。

これはもう言い訳になってしまうのですが、
丁度受付が込み合っており、
最初に電話に出た受付の者は、
電話対応がぞんざいになってしまったようです。
あと、土曜日の外来の状況を、
お尋ねになったと思うのですが、
土曜日は他の曜日とは受付の担当者が違うため、
それで「分かりません」
というような答えになってしまったようです。
ただ、これは勿論ポテトさんには何の関わりもないことですから、
こちらの落ち度であることは間違いがありません。
大変申し訳ありませんでした。

電話を代わった看護師は、
私も非常に信頼している者ですが、
電話では特に声がきつく感じられる方が多く、
以前にもそのことでクレームを頂いたことがあります。

当該の看護師には、
私から直接話をしまして、
その後に簡単なミーティングをしました。

それでも不充分ではあると思うのですが、
ご指摘をスタッフ一同心に刻みまして、
少しでもより良い応接を目指したいと思いますので、
どうかご理解を頂ければと思います。

細かいご質問等ございましたら、
ホームページのアドレスに、
メールを頂ければと思いますし、
「石原と代われ」とお電話で言って頂いても構いません。
診療中であれば、
後で折り返させて頂きます。

土曜日の午後は勿論、
通常通りで受診して頂いて問題はありません。
混み具合は正直週によってかなりのムラがあり、
本当に何とも言えません。
そのため、
お待ち頂く場合のあることは、
どうかご了承下さい。

繰り返しになりますが、
ご気分を害するような対応を取り、
大変申し訳ありませんでした。
失礼致します。

六号通り診療所所長
石原藤樹
by fujiki (2013-05-24 18:01) 

ポテト

石原先生

大変お忙しい中、コメントへのお返事と、迅速に対処、改善していただき、ありがとうございます。
先生のこちらのブログの内容に全く関係のないことを書き込んだこと、お詫び致します。
今回の先生の対応や、ブログを拝見する限り、とても丁寧で誠実な方なようなので、先生を頼りにしている患者さんも多く、人気の診療所なのでしょう。
私も職場で、受付業務と電話応対の仕事をしていますので、人気の診療所でしたら受付の方が忙しくてバタバタしてしまうこと、土曜日は患者さんが多いということは少し考えれば分かるだろうと思ってしまい、毎回同じような質問をされることに対しても、イライラしてしまうことがあるというのは痛いほど分かります。
ただ、不安なこと、聞きたいことがあったり、体調や精神が不調の中、電話で問い合わせしてきている方々のことを考えて、電話口でも親身に説明していただける診療所が増え、相手が無意味に感情を害したり、悲しい気持ちになる方が少なくなれば、とも思っています。

今回は一旦キャンセルの電話をさせていただきましたが、一個人のコメントにも関わらず即対処してくださる先生だということを十分に認識しましたので、また機会があれば平日の午前中にでも時間を取って伺いたいと思います。
先ほどは悲しい気持ちでいっぱいでしたが、こちらのコメントのおかげでまた前向きになれました。
ありがとうございました。
by ポテト (2013-05-24 19:37) 

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