モーツァルト「ドン・ジョバンニ」 [オペラ]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
今日は日曜日で診療所は休診です。
朝からいつものように、
駒沢公園まで走りに行って、
それから今PCに向かっています。
これから神奈川の実家に行く予定です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
新国立劇場の「ドン・ジョバンニ」が、
本日まで上演中です。
新国立劇場のオペラは、
最近はあまり聴きに行くことがありません。
ホールは大きさといい設備といい音響といい、
日本ではトップクラスなのですが、
色々な意味で中途半端で、
何やら権力闘争めいたものもあるらしく、
舞台の出来も安定しませんし、
ワクワクする感じがありません。
特に数年前からは予算が削られたらしく、
海外から招聘されるキャストも、
はっきり言えば2線級になりましたし、
セットや演出は元々好みではなかったのですが、
如何にも安普請な感じになりました。
おまけに震災の後からは、
海外招聘キャストのキャンセルや直前の変更が相次ぎ、
悲惨な状態になったので、
呆れて殆ど行くのは止めていました。
ただ、今回はキャストの直前の変更もなく、
初日の評判も良かったことと、
今回の上演は演出は再演ですが、
初演は聴いていて、
あまり好みではないのですが、
まあそう悪くもなかったので、
聴きに行くことにしました。
「ドン・ジョバンニ」はモーツァルトのオペラの中では、
僕はおそらく実演は最も多く聴いています。
ただ、あまり満足のゆく上演には、
出合ったことはありません。
モーツァルトのオペラ作品のうち、
専ら上演されるのは、
「魔笛」、「フィガロの結婚」、「ドン・ドンジョバンニ」、
「コジ・ファン・トゥッテ」の4作品で、
最近はそれ以外の作品も、
時々上演されるようになりましたが、
まだ頻度的には少ないと思います。
上演の多い4つのオペラは、
初演当時としては、
画期的な作品であったのですが、
今聴くとそれ以前のオペラより、
むしろ古めかしく感じる部分もあります。
作品の持つ画期的な部分が、
その後のオペラの主流になっていったので、
皮肉なことに、
新鮮さを感じ難くなっているのです。
1幕が1時間半を超える長尺なので、
たとえばヴェルディやプッチーニのオペラと比べると、
淡々とした演奏で内容は何か痴話げんかの続き物のようなのに、
長さだけダラダラ長い、
という気分できつくなります。
ワーグナーは勿論もっと長いのですが、
あちらは前奏から極めて仰々しく、
重厚で悠然たるタッチで、
内容も神話のような雄大な話なので、
聴く方も「これは長くても当然」という気分になるのですが、
モーツァルトは一見他愛のない話で、
音楽も軽いタッチなのに、
長さだけが長いので、
現代の感覚ではきつくなるのです。
僕の個人的な見解は、
モーツァルトのオペラは、
基本的にアンサンブルの妙味なので、
余程そのレベルが高くないと、
退屈の極みになるのは止むを得ない、
というものです。
その一方で、
アンサンブルが絶妙で、
声楽的なレベルと演奏のレベルが、
高いレベルで噛み合うと、
確かに天上の音楽、
と言って良いような至福の瞬間が、
訪れることは確かです。
「ドン・ジョバンニ」は、
東欧の田舎の歌劇場の来日公演で聴いたのが最初で、
その後新国立劇場でフリットリの旦那がジョバンニを歌ったのを聴き、
メトロポリタンの来日で、
ネトレプコやコジェナーなどが出た豪華版、
ベルリンオペラの来日で、
地味なキャストだけれど、
バランスの良かったバレンボイムの指揮版、
何処の来日公演か忘れましたが、
グルヴェローヴァがドンナ・アンナを歌ったヴァージョン。
大野和士がデンマークの歌劇場を指揮した、
他は良かったのにジョバンニ役の歌手が、
やる気ゼロでガッカリだったものなどを聴いています。
ただ、この作品はドン・ジョバンニ役に、
演技と歌の両面において、
稀代の女たらしという難役を、
説得力を持って演じられるだけのスターが出ないと、
作品として成立しない、
という難点があります。
僕は未だかつて、
その意味で納得のゆくドン・ジョバンニに、
生で出合ったことはなかったのですが、
今回のクヴィエチェンというバリトンは、
何より演技が上手く、
さほどハンサムということもないのですが、
「俺が本当に世界一の女たらし」
と実際に信じているような感じがあって、
非常に面白く感じましたし、
歌も抜群とまでは言えませんが、
少なくとも僕がこれまで生で接したどの歌手と比較しても、
遜色のないものだったと思います。
しかも、クヴィエチェンありがとう!
この没落の途上にある極東の放射能塗れの島国で、
本当に真面目に全力で歌っていました。
今回の上演はその意味で、
日本の「ドン・ジョバンニ」の上演史の中でも、
画期的なものだったと思います。
アンサンブルもまあまあでした。
他のキャストもその選択のセンスは悪くなく、
まあ二線級であることは否めないのですが、
声質は良いのです。
テノールも如何にもの柔らかい声ですし、
メゾもジュノーを思わせるような、
くぐもったビロードの声です。
ただ、歌の技量は今一つなので、
アリア1つで感動させる、
というところまではいきません。
オケもそれなりでしたし、
久しぶりに満足した思いで、
新国立劇場を後にすることが出来ました。
それではそろそろ出掛けます。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
六号通り診療所の石原です。
今日は日曜日で診療所は休診です。
朝からいつものように、
駒沢公園まで走りに行って、
それから今PCに向かっています。
これから神奈川の実家に行く予定です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
新国立劇場の「ドン・ジョバンニ」が、
本日まで上演中です。
新国立劇場のオペラは、
最近はあまり聴きに行くことがありません。
ホールは大きさといい設備といい音響といい、
日本ではトップクラスなのですが、
色々な意味で中途半端で、
何やら権力闘争めいたものもあるらしく、
舞台の出来も安定しませんし、
ワクワクする感じがありません。
特に数年前からは予算が削られたらしく、
海外から招聘されるキャストも、
はっきり言えば2線級になりましたし、
セットや演出は元々好みではなかったのですが、
如何にも安普請な感じになりました。
おまけに震災の後からは、
海外招聘キャストのキャンセルや直前の変更が相次ぎ、
悲惨な状態になったので、
呆れて殆ど行くのは止めていました。
ただ、今回はキャストの直前の変更もなく、
初日の評判も良かったことと、
今回の上演は演出は再演ですが、
初演は聴いていて、
あまり好みではないのですが、
まあそう悪くもなかったので、
聴きに行くことにしました。
「ドン・ジョバンニ」はモーツァルトのオペラの中では、
僕はおそらく実演は最も多く聴いています。
ただ、あまり満足のゆく上演には、
出合ったことはありません。
モーツァルトのオペラ作品のうち、
専ら上演されるのは、
「魔笛」、「フィガロの結婚」、「ドン・ドンジョバンニ」、
「コジ・ファン・トゥッテ」の4作品で、
最近はそれ以外の作品も、
時々上演されるようになりましたが、
まだ頻度的には少ないと思います。
上演の多い4つのオペラは、
初演当時としては、
画期的な作品であったのですが、
今聴くとそれ以前のオペラより、
むしろ古めかしく感じる部分もあります。
作品の持つ画期的な部分が、
その後のオペラの主流になっていったので、
皮肉なことに、
新鮮さを感じ難くなっているのです。
1幕が1時間半を超える長尺なので、
たとえばヴェルディやプッチーニのオペラと比べると、
淡々とした演奏で内容は何か痴話げんかの続き物のようなのに、
長さだけダラダラ長い、
という気分できつくなります。
ワーグナーは勿論もっと長いのですが、
あちらは前奏から極めて仰々しく、
重厚で悠然たるタッチで、
内容も神話のような雄大な話なので、
聴く方も「これは長くても当然」という気分になるのですが、
モーツァルトは一見他愛のない話で、
音楽も軽いタッチなのに、
長さだけが長いので、
現代の感覚ではきつくなるのです。
僕の個人的な見解は、
モーツァルトのオペラは、
基本的にアンサンブルの妙味なので、
余程そのレベルが高くないと、
退屈の極みになるのは止むを得ない、
というものです。
その一方で、
アンサンブルが絶妙で、
声楽的なレベルと演奏のレベルが、
高いレベルで噛み合うと、
確かに天上の音楽、
と言って良いような至福の瞬間が、
訪れることは確かです。
「ドン・ジョバンニ」は、
東欧の田舎の歌劇場の来日公演で聴いたのが最初で、
その後新国立劇場でフリットリの旦那がジョバンニを歌ったのを聴き、
メトロポリタンの来日で、
ネトレプコやコジェナーなどが出た豪華版、
ベルリンオペラの来日で、
地味なキャストだけれど、
バランスの良かったバレンボイムの指揮版、
何処の来日公演か忘れましたが、
グルヴェローヴァがドンナ・アンナを歌ったヴァージョン。
大野和士がデンマークの歌劇場を指揮した、
他は良かったのにジョバンニ役の歌手が、
やる気ゼロでガッカリだったものなどを聴いています。
ただ、この作品はドン・ジョバンニ役に、
演技と歌の両面において、
稀代の女たらしという難役を、
説得力を持って演じられるだけのスターが出ないと、
作品として成立しない、
という難点があります。
僕は未だかつて、
その意味で納得のゆくドン・ジョバンニに、
生で出合ったことはなかったのですが、
今回のクヴィエチェンというバリトンは、
何より演技が上手く、
さほどハンサムということもないのですが、
「俺が本当に世界一の女たらし」
と実際に信じているような感じがあって、
非常に面白く感じましたし、
歌も抜群とまでは言えませんが、
少なくとも僕がこれまで生で接したどの歌手と比較しても、
遜色のないものだったと思います。
しかも、クヴィエチェンありがとう!
この没落の途上にある極東の放射能塗れの島国で、
本当に真面目に全力で歌っていました。
今回の上演はその意味で、
日本の「ドン・ジョバンニ」の上演史の中でも、
画期的なものだったと思います。
アンサンブルもまあまあでした。
他のキャストもその選択のセンスは悪くなく、
まあ二線級であることは否めないのですが、
声質は良いのです。
テノールも如何にもの柔らかい声ですし、
メゾもジュノーを思わせるような、
くぐもったビロードの声です。
ただ、歌の技量は今一つなので、
アリア1つで感動させる、
というところまではいきません。
オケもそれなりでしたし、
久しぶりに満足した思いで、
新国立劇場を後にすることが出来ました。
それではそろそろ出掛けます。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
2012-04-29 07:34
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