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ケラ「奥様お尻をどうぞ」 [演劇]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は日曜日で診療所は休診ですが、
義理の親が体調を崩したため、
長野まで出掛けます。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
奥様お尻をどうぞ.jpg
ケラリーノ・サンドロヴィッチの新作公演が、
東京の下北沢で公演中です。

ケラリーノ・サンドロヴィッチ(勿論芸名で日本人です)は、
自分の手勢のナイロン100℃を中心に、
多くのプロデュース公演や、
古典的な新劇の名作の演出なども手掛け、
バンド活動など音楽活動も行ない(バンドの方が元は本業でした)、
おそらく現在の小劇場演劇に、
最も影響を与えている劇作家です。

僕はナイロン100℃の旗揚げの頃の、
「ネクストミステリー」という作品が初見で、
その後は概ね2本に1本くらいのペースで、
観ています。

少なくとも3本、
多い年は5本以上の作品を、
コンスタントに発表し続けるのですから、
全部を観るのは相当の根性と暇な時間とが必要です。
それも平均的な上演時間は3時間を超えるという長時間で、
内容にはかなりの凹凸があるので、
それをめげずに観続けるのはかなり大変なのです。

僕は最初の頃は頑張って続けて見ていたのですが、
大倉孝二の実質的なデビュー作で、
3時間半立ちっぱなしという、
辛い作品でかなり懲りて、
それからは無理のないように作品を絞るようになりました。

その作品は多岐に渡り、
必ずしも1つの色では括れないのですが、
僕が一番好きなのは、
所謂「ナンセンス・コメディ」の系譜の作品で、
「ウチハソバヤジャナイ」とか、
「ビフテキと暴走」とか、
劇団健康名義の「トーキョーあたり」などは、
とても好きで、
特に「ウチハソバヤジャナイ」は、
あんなに笑った芝居はなかった、
という感想です。
モンティパイソンは大好きなので、
ツボに嵌まったのかも知れません。

今回の作品は一種のプロデュース公演で、
ナイロン100℃の公演ではありませんが、
古田新太が座長格で加わり、
八島智人が端役に近い扱いですから、
かなり豪華な布陣です。

以下、ちょっとネタバレがあります。

ナンセンスコメディの系譜の作品ですが、
原発事故の話を、
かなり本気で取り込んでいて、
ちょっと無理矢理で苦しい感じもあるのですが、
その勇気と意欲には、
本気で感心しました。

トンカツ屋の親父が、
原子力絶対安全協会の委員長に任命され、
悪の限りを尽くすのですが、
その娘は難病に侵され、
夢の中で中世魔女退治の映画の世界に迷いこむのです。
3重人格の探偵古田新太がブリーフ1枚の姿で大暴れし、
病院から少女を誘拐して映画の世界に逃走します。

悪の組織と探偵とが、
病気の少女の夢の中で戦うような話は、
一昔前の小劇場演劇の、
1つの定番の設定だったのですが、
そのショッカーのような悪の組織が、
原子力絶対安全協会だ、と言う辺りが、
単なる思い付きのようでいて、
そうではない、
という気がするのです。

アーヴィングは20世紀の終わり頃に、
この世界は危険で残酷な御伽噺の森なのだ、
と言ったのですが、
今のこの世界は、
実に安っぽいヒーロー物の世界そのもので、
しかし、その作者は物語を綴り結末を造ることに飽きて、
何処かに逃走してしまったので、
僕達は結末のない世界で、
誰が正義の味方で誰が悪のスパイなのかも分からないままに、
地球を滅ぼそうとする、
誰か間抜けな悪漢の陰謀に怯えているのです。

下らない映画の中で、
結末を見付けられずに喘いでいるのは、
僕達そのものです。

不出来な舞台になるのを承知の上で、
原発事故をナンセンスコメディ化したケラの勇気に、
僕は素直に拍手を送りたいと思いました。

昔の歌舞伎というのは、
こうしたものだったのだと思いますし、
演劇というものは、
こうでなくてはいけません。

勿論疵は多くありますが、
長さもケラにしては2時間半と手頃ですし、
今見ないと意味を失う芝居という意味で、
こうしたナンセンスの好きな方には、
是非にお勧めします。

それではそろそろ出掛けます。

皆さんは良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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コメント 2

midori

「有頂天」。。。
年代的に、このイメージが強いです。
(高校の時、1学年上の教室の壁に、大きなポスターが貼ってありました。
 あぁ自由な校風)
今は、演劇界に行っちゃって、
なんか大きな体になっちゃって、
緒川たまきをモノにした図々しいヤツ、
というイメージですね。
彼の演劇が比較的良い評判なのは、小耳に挟んではいました。
ナイロン100℃、1回観てみようかな。

親御様、お大事に。
by midori (2011-08-22 12:27) 

fujiki

midoriさんへ
コメントありがとうございます。
かなり出来に凹凸があるので、
へこんだ時に当たると、
長いだけにかなりきついです。
ただ、間違いなく今の演劇全般には、
そのスタイルの面では最も影響を与えていると思います。
演技指導などあまりしているようには思えないのに、
役者さんが非常に上手いのが、
また不思議です。
by fujiki (2011-08-23 08:48) 

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