三浦大輔「ザ・シェイプ・オブ・シングス」 [演劇]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
今日は日曜日で診療所は休診です。
朝から駒沢公演まで走りに行って、
それから今PCに向かっています。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2001年のイギリスの戯曲を、
劇団「ポツドール」を率いる、
才能豊かな劇作家にして演出家の、
三浦大輔が演出し、
向井理が初舞台で主演した作品です。
先週観に行ったのですが、
翻訳劇という限界はあるものの、
非常に刺激的で先鋭な作品で、
思わぬ拾い物をした気分になりました。
「ポツドール」は現代の若者の風俗を、
生々しくイタい独特のタッチで、
やや扇情的に描き続ける劇団で、
劇団と言っても現在所属しているのは、
作演出の三浦大輔以外には、
今回も出演している米村亮太郎だけです。
僕が最初に観たのは「愛の渦」という作品の初演で、
これはちょっと衝撃を受けました。
乱交パーティーを行なう、
地下クラブが舞台なのですが、
男は皆ウジウジしていて、
乱交の筈なのに、
なかなかカップルが成立しないのです。
その状況が執拗に描き続けられるのですが、
その手際は際めて繊細で、
ラスト白々と朝の日差しが差し込む辺りは、
大袈裟に言えば人間の営みの虚しさが、
リアルに透過されたような趣きがありました。
三浦大輔の世界は、
その生々しさが売り物なので、
翻訳劇で相手をアダムとかフィリップとかと言い合うのは、
大きな武器を奪われた格好になり、
かなり不利な戦いと思われたのですが、
意外とそのことは大きな傷にはならず、
ちょっとよそ行きの青山円形劇場の客席の風景と、
舞台上のこれもちょっと現実と遊離した世界とが、
微妙にマッチしつつ展開していたのは、
非常に斬新に感じましたし、
それが元々の三浦大輔の狙いだとすれば、
彼の才覚には改めて感心します。
内容は要するに「ピグマリオン」で、
冴えない苦学生の向井理演じるアダムが、
バイト先の美術館で会った、
美波演じるイブリンから、
指南を受けてみるみる魅力的な男性に、
変貌してゆきます。
ところが…
という物語。
勿論結末は予想出来なくはないのですが、
それでもクライマックスからラストに掛けての、
カタストロフは衝撃的で、
アングロサクソンの残酷さに満ち溢れ、
人間の成長とは一体何なのか、
という本質的な懐疑を覚えます。
キャストは4人とも水準以上の出来ですが、
特に美波は見事で、
人間の理知の闇を怜悧に体現しています。
この作品が単なる翻訳劇に終わっていないのは、
変貌する男性に、
実際そうした変貌を遂げたであろう、
向井理を持って来ているからで、
その変貌を遂げさせた1つの力である、
無名の観客に囲まれた空間で、
彼が今この役を演じることに、
現実と虚構の世界とを、
細い一筋の糸で、
結び付ける意味合いがあるのです。
精緻な演出を含め、
チケットはやや法外ですが、
一見の価値はあると思います。
自分を変えたいと思っている人は、
多分多いと思うのですが、
生物とは環境に応じて、
その姿を如何様にも変えながら、
世代を超えて生き続ける存在なので、
日々変貌しているにも関わらず、
それを「変わらない」と思う、
自我同一性とか理性とかという、
得体の知れないものこそが、
人間の苦痛の一番の原因なのかも知れません。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
六号通り診療所の石原です。
今日は日曜日で診療所は休診です。
朝から駒沢公演まで走りに行って、
それから今PCに向かっています。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2001年のイギリスの戯曲を、
劇団「ポツドール」を率いる、
才能豊かな劇作家にして演出家の、
三浦大輔が演出し、
向井理が初舞台で主演した作品です。
先週観に行ったのですが、
翻訳劇という限界はあるものの、
非常に刺激的で先鋭な作品で、
思わぬ拾い物をした気分になりました。
「ポツドール」は現代の若者の風俗を、
生々しくイタい独特のタッチで、
やや扇情的に描き続ける劇団で、
劇団と言っても現在所属しているのは、
作演出の三浦大輔以外には、
今回も出演している米村亮太郎だけです。
僕が最初に観たのは「愛の渦」という作品の初演で、
これはちょっと衝撃を受けました。
乱交パーティーを行なう、
地下クラブが舞台なのですが、
男は皆ウジウジしていて、
乱交の筈なのに、
なかなかカップルが成立しないのです。
その状況が執拗に描き続けられるのですが、
その手際は際めて繊細で、
ラスト白々と朝の日差しが差し込む辺りは、
大袈裟に言えば人間の営みの虚しさが、
リアルに透過されたような趣きがありました。
三浦大輔の世界は、
その生々しさが売り物なので、
翻訳劇で相手をアダムとかフィリップとかと言い合うのは、
大きな武器を奪われた格好になり、
かなり不利な戦いと思われたのですが、
意外とそのことは大きな傷にはならず、
ちょっとよそ行きの青山円形劇場の客席の風景と、
舞台上のこれもちょっと現実と遊離した世界とが、
微妙にマッチしつつ展開していたのは、
非常に斬新に感じましたし、
それが元々の三浦大輔の狙いだとすれば、
彼の才覚には改めて感心します。
内容は要するに「ピグマリオン」で、
冴えない苦学生の向井理演じるアダムが、
バイト先の美術館で会った、
美波演じるイブリンから、
指南を受けてみるみる魅力的な男性に、
変貌してゆきます。
ところが…
という物語。
勿論結末は予想出来なくはないのですが、
それでもクライマックスからラストに掛けての、
カタストロフは衝撃的で、
アングロサクソンの残酷さに満ち溢れ、
人間の成長とは一体何なのか、
という本質的な懐疑を覚えます。
キャストは4人とも水準以上の出来ですが、
特に美波は見事で、
人間の理知の闇を怜悧に体現しています。
この作品が単なる翻訳劇に終わっていないのは、
変貌する男性に、
実際そうした変貌を遂げたであろう、
向井理を持って来ているからで、
その変貌を遂げさせた1つの力である、
無名の観客に囲まれた空間で、
彼が今この役を演じることに、
現実と虚構の世界とを、
細い一筋の糸で、
結び付ける意味合いがあるのです。
精緻な演出を含め、
チケットはやや法外ですが、
一見の価値はあると思います。
自分を変えたいと思っている人は、
多分多いと思うのですが、
生物とは環境に応じて、
その姿を如何様にも変えながら、
世代を超えて生き続ける存在なので、
日々変貌しているにも関わらず、
それを「変わらない」と思う、
自我同一性とか理性とかという、
得体の知れないものこそが、
人間の苦痛の一番の原因なのかも知れません。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
2011-02-20 12:32
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今日はお腹のゴロゴロがひどくて、朝以降気持ち悪くて全く食べる気が起こらないんですが、どうしたらいいですか? おかゆすら受け付けません。お湯はなんとか飲んでます。普通はどれくらいで治るものですか?
by シロ (2011-02-20 12:54)
先生の解説を読み終えて、今日は観たいと思いました。
時間がないよ~~
by yuuri37 (2011-02-20 18:55)
シロさんへ
ポカリやリンゴジュースはどうですか?
なるべく少しカロリーのある水分で、
今日は凌いで下さい。
ウイルス性ではそれほど長引かないことが多いので、
細菌性の可能性もあります。
明日はもう一度受診をお勧めします。
by fujiki (2011-02-20 19:53)
yuuri37 さんへ
ほぼ間違いなくDVDにはなると思います。
遊んでしまってすいません。
by fujiki (2011-02-20 20:07)
ポツドールは、「激情」が良かった。
ちょっとした「まぁ、いいか」が招く負の連鎖の描き方が
見事で、今もなお記憶に残っています。
今日は、胃と大腸の内視鏡検査でした。異常はなかったのですが、
胃カメラは、経鼻とはいえ、けっこうきつかったです。
大腸は検査前と後が辛いですね。
by HWK (2011-02-21 22:20)
HWK さんへ
コメントありがとうございます。
「激情」は僕も再演は観ました。
ちょっとテーマは際どいところのある問題作で、
ラストは衝撃的でしたね。
もう絶対に上演はされない性質の作品だと思います。
by fujiki (2011-02-22 06:36)