マイコプラズマの耐性化について [仕事のこと]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。
それでは今日の話題です。
今日は感染症の話です。
マイコプラズマ肺炎が流行っています。
マイコプラズマについては、
これまでにも何度か取り上げました。
一般の細菌と異なり、
細胞壁を持たない、
ちょっと特殊な病原体です。
そのために、
ペニシリンなどの抗生物質が、
効果がありません。
ペニシリンは細菌の細胞壁が、
作られるのを妨害するのが、
その作用であるからです。
使用されるのは教科書的には、
マクロライド系の薬剤です。
エリスロマイシン(商品名エリスロシン)や、
クラリスロマイシン(商品名クラリス、クラリシッドなど)、
アジスロマイシン(商品名ジスロマック)が、
その代表的な薬剤です。
ところが…
最近こうした抗生物質に、
耐性を示すマイコプラズマが増加しています。
診療所の事例をご紹介します。
まず1例目は30代の男性で、
高熱と乾いた咳が持続。
初診時にインフルエンザの簡易検査を行ない陰性で、
咳の状態からマイコプラズマの感染を疑い、
ジスロマックを使用しましたが、
使用後3日の時点で、
症状の改善がなく、
レントゲンで肺炎像を認めました。
そのため、商品名ジェニナックという、
ニューキノロン系の抗生物質に変更したところ、
使用翌日から症状は改善傾向を示し、
5日後には咳もほぼ止まりました。
2例目は中学生で、
矢張り高熱と乾いた咳が続き、
インフルエンザの簡易検査は陰性で、
初診時に矢張りジスロマックを使用するも改善せず、
発熱後4日にレントゲンを撮りました。
それがこちら。
赤い矢印の先に、
白く境界がぼんやりとした白い影が見えます。
これが比較的典型的な、
マイコプラズマ肺炎の画像です。
このお子さんは抗生物質を、
ミノマイシンに変更し、
その後症状は改善に向かいました。
お子さんは副作用の問題で、
ニューキノロン系の抗生物質は使い難いので、
その治療の選択肢は、
大人より限られたものになるのです。
マクロライド系の抗生物質は、
マイコプラズマに限らず、
日本人で非常に耐性菌が多いのです。
僕はその理由は、
日本ではマクロライド少量持続療法という、
ちょっと特殊な治療が広く行われていて、
副鼻腔炎(蓄膿)などを理由に、
数ヶ月から数年という長期に渡り、
同種の薬剤が使用されまくっている、
という現実があり、
それが主因ではないか、
という意見です。
勿論そうした治療を崇拝される先生の意見では、
こうした使用では耐性菌は誘導されない、
と言うのですが、
同じ抗生物質を、
長期間、しかも大して効かないような少量で、
使い続ければ耐性化しない筈はなく、
確かに特殊な病気では、
そうした治療が著効する事例もあるのでしょうが、
今のように垂れ流し的に使用されている実態は、
どう考えても誤っていると思います。
マイコプラズマは、
ベットサイドの簡易検査は存在するのですが、
その精度には現時点で問題があり、
培養も困難で診断が難しい、
という欠点があります。
従って、流行状況や咳や発熱で、
その可能性を疑ったら、
早期に抗生物質を使用せざるを得ず、
その第一選択をどうすべきかは、
非常に迷うところです。
今後そうした点を踏まえた、
診断と治療の進歩が得られ、
まっとうなガイドラインが作成されることを、
期待しつつ日々の診療に格闘したいと思います。
今日はマイコプラズマ肺炎の現状でした。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
六号通り診療所の石原です。
朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。
それでは今日の話題です。
今日は感染症の話です。
マイコプラズマ肺炎が流行っています。
マイコプラズマについては、
これまでにも何度か取り上げました。
一般の細菌と異なり、
細胞壁を持たない、
ちょっと特殊な病原体です。
そのために、
ペニシリンなどの抗生物質が、
効果がありません。
ペニシリンは細菌の細胞壁が、
作られるのを妨害するのが、
その作用であるからです。
使用されるのは教科書的には、
マクロライド系の薬剤です。
エリスロマイシン(商品名エリスロシン)や、
クラリスロマイシン(商品名クラリス、クラリシッドなど)、
アジスロマイシン(商品名ジスロマック)が、
その代表的な薬剤です。
ところが…
最近こうした抗生物質に、
耐性を示すマイコプラズマが増加しています。
診療所の事例をご紹介します。
まず1例目は30代の男性で、
高熱と乾いた咳が持続。
初診時にインフルエンザの簡易検査を行ない陰性で、
咳の状態からマイコプラズマの感染を疑い、
ジスロマックを使用しましたが、
使用後3日の時点で、
症状の改善がなく、
レントゲンで肺炎像を認めました。
そのため、商品名ジェニナックという、
ニューキノロン系の抗生物質に変更したところ、
使用翌日から症状は改善傾向を示し、
5日後には咳もほぼ止まりました。
2例目は中学生で、
矢張り高熱と乾いた咳が続き、
インフルエンザの簡易検査は陰性で、
初診時に矢張りジスロマックを使用するも改善せず、
発熱後4日にレントゲンを撮りました。
それがこちら。
赤い矢印の先に、
白く境界がぼんやりとした白い影が見えます。
これが比較的典型的な、
マイコプラズマ肺炎の画像です。
このお子さんは抗生物質を、
ミノマイシンに変更し、
その後症状は改善に向かいました。
お子さんは副作用の問題で、
ニューキノロン系の抗生物質は使い難いので、
その治療の選択肢は、
大人より限られたものになるのです。
マクロライド系の抗生物質は、
マイコプラズマに限らず、
日本人で非常に耐性菌が多いのです。
僕はその理由は、
日本ではマクロライド少量持続療法という、
ちょっと特殊な治療が広く行われていて、
副鼻腔炎(蓄膿)などを理由に、
数ヶ月から数年という長期に渡り、
同種の薬剤が使用されまくっている、
という現実があり、
それが主因ではないか、
という意見です。
勿論そうした治療を崇拝される先生の意見では、
こうした使用では耐性菌は誘導されない、
と言うのですが、
同じ抗生物質を、
長期間、しかも大して効かないような少量で、
使い続ければ耐性化しない筈はなく、
確かに特殊な病気では、
そうした治療が著効する事例もあるのでしょうが、
今のように垂れ流し的に使用されている実態は、
どう考えても誤っていると思います。
マイコプラズマは、
ベットサイドの簡易検査は存在するのですが、
その精度には現時点で問題があり、
培養も困難で診断が難しい、
という欠点があります。
従って、流行状況や咳や発熱で、
その可能性を疑ったら、
早期に抗生物質を使用せざるを得ず、
その第一選択をどうすべきかは、
非常に迷うところです。
今後そうした点を踏まえた、
診断と治療の進歩が得られ、
まっとうなガイドラインが作成されることを、
期待しつつ日々の診療に格闘したいと思います。
今日はマイコプラズマ肺炎の現状でした。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2011-02-21 08:07
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コメント(7)
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確かに副鼻腔炎には14員環をもったマクロライド系抗生剤が少量で使用されていて、本来確か2~3ヶ月間の使用に留めるのが定石だったと思うのですが、慢性の場合惰性で長期間使用されている気がします。。。
これは日本に限られた治療法なのですか?
因みに副鼻腔炎には海外ではどのような薬剤が使われているのでしょうか?
by iyashi (2011-02-21 09:34)
昨日書き込み後、10回ぐらいトイレに行きまして、少しだけ食べられるようになりました。まだ元気なときの4分の1ぐらいしか食べられないので、今日の夕方また病院に行って点滴してもらいます。昨日はアドバイスありがとうございました。今日もまだ下痢は続いてます。下痢はしつこいものですか?あと微熱は今のところおさまってます。
by シロ (2011-02-21 11:13)
iyashi さんへ
コメントありがとうございます。
これは元々はびまん性汎細気管支炎という、
日本に多いちょっと特殊な病気に限った治療で、
その範囲では意義のあるもののようなのですが、
それがいつの間にか、
蓄膿などに適応が拡大されています。
海外文献もない訳ではないのですが、
日本発の治療で、
日本以外では、
あまり行われていないのが実際だと思います。
抗菌作用ではなく、
マクロライドの持つ免疫調整作用を期待して、
使用する、ということのようなのですが、
仮にそうなら抗菌作用がある分、
無駄なことになる訳で、
本来は同種の作用で抗菌作用のない薬が、
開発されるべきだと思います。
海外の副鼻腔炎の治療については、
即答出来ないので、
もう少し勉強させて下さい。
by fujiki (2011-02-21 13:37)
シロさんへ
下痢は確かにしつこい場合もありますが、
お話を聞く限り、
回復に向かっていると思います。
by fujiki (2011-02-21 13:38)
先生のお言葉を聞いて安心いたしました。 いつもアドバイス下さってありがとうございます。
by シロ (2011-02-21 14:22)
僕も2ヶ月前にそのマクロライド少量投与治療(クラリス200mgX1)なるものを無理やりさせられてましたが、一向に調子が好転せずに転院することに。
転院先の先生がクラビット250mgX2って薬を処方してくださり一発で治りました。
前者は一体何だったんでしょうね(笑)
by さそり君 (2011-02-21 20:04)
さそり君さんへ
コメントありがとうございます。
確かに通常は炎症があれば、
短期間で強く押さえ込むのが鉄則で、
少量持続のような特殊なことをするのは、
余程症例を限定しないと、
弊害の方が大きいのではないか、
と僕は思います。
by fujiki (2011-02-22 06:39)