熱中症と糖尿病の話 [科学検証]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。
それでは今日の話題です。
昨日に引き続き、
熱中症予防の各論として、
糖尿病の患者さんの場合を考えます。
糖尿病の患者さんで、
特にその血糖のコントロールの悪い方では、
熱中症の危険性が高くなることは、
皆さんもご納得が行くかと思います。
糖尿病はインスリンの量が少ないか、
もしくはインスリンの効きが悪くなる何らかの原因があるために、
血液の中のブドウ糖が細胞で利用されずに、
血液中で上昇し、
そのために多くの身体の不調が現われる病気です。
血液に溜まった過剰の糖分は、
おしっこから排泄されることになるのですが、
その時に水分が同時に排泄されるために、
おしっこの量は増え、
身体は脱水に傾きます。
つまり、血糖値のコントロールの悪い糖尿病の患者さんは、
常に脱水状態にあるので、
そうした方が高温多湿の環境に置かれれば、
脱水は更に進行して、
熱中症の引き金になるのです。
昨日の心不全のケースもそうですが、
脱水傾向がある方は、
熱を身体から逃がすための汗を掻くことが充分に出来ず、
体温調節の「のりしろ」が少ないので、
それだけ短期間で簡単に熱中症に移行し易いのです。
従って、糖尿病の患者さんが、
高温多湿の環境でお仕事をされるような場合には、
より頻繁に水分補給が必要となります。
ただ、ここでちょっと問題があります。
汗を掻けば水分と同時に塩分も喪失します。
従って、通常熱中症の予防のためには、
ポカリスエットのようなイオン飲料が、
そのために使用されます。
しかし、こうした飲料には、
結構多い量の糖分が、
添加されています。
身体が消耗した時にはブドウ糖の補給も必要なので、
これは通常のケースでは合理的なことなのですが、
糖尿病の患者さんでは、
体調の悪化時にはストレスホルモンの上昇などから、
むしろ血液の糖分は普段より上がっていることが多いので、
糖分を補充すると血糖が更に上昇し、
それがおしっこの水分を増やすので、
更に脱水が進行する、
という悪循環になる可能性が高いのです。
従って、極軽症の方以外の糖尿病の患者さんでは、
高温多湿環境時の熱中症予防には、
糖質を含まないノンカロリーの飲料が望ましいのです。
しかし、問題はそんなものがあるのか、
ということです。
ただの塩水では飲料としては適しません。
そうすると、次善の策としては、
水やお茶などの水分補給と共に、
塩気のものを別個に補充する、
ということになります。
塩飴と称するものがありますが、
僕の見た範囲では、水飴が元なので、
糖質も含まれていて、
あまりこうした場合に適したものではありません。
梅干を乾燥させたような食品があり、
塩分は豊富ですが、カロリーは極めて低いので、
僕の見た範囲ではそれが一番、
こうした用途には適しているかな、と思いました。
それでは今日のまとめです。
糖尿病で治療中の患者さんは、
熱中症のリスクが高いと考えられ、
特に血糖コントロールが良くない状態では、
高温多湿時の作業や運動は、
極力控えるのが望ましいと思われます。
止むを得ずそうした状況になった場合には、
糖尿病でない方より、
水分の補充はより頻繁に行なう必要があります。
この場合、ポカリなどのカロリーのあるイオン飲料は、
あまり適してはいないので、
基本的には水やお茶などのノンカロリーの飲料を使用し、
塩分の補充は別個に乾燥梅干などを活用するのが、
合理的と考えられます。
勿論他の塩分主体でカロリーの少ない食品でも構いません。
高温多湿化の環境で慣れない人が作業をするような場合、
1時間で2から4グラム程度の塩分が喪失すると考えると、
その半量の1グラム程度を、
作業中に補充しておけば、
問題はないものと考えられます。
ただ、糖尿病の患者さんは脱水に移行し易いので、
750ml 程度の水分は、
同時に補充するのがその条件となります。
昔の仕事の合間にお茶と漬物を一緒に取る習慣は、
その意味で合理的なものであった訳です。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
六号通り診療所の石原です。
朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。
それでは今日の話題です。
昨日に引き続き、
熱中症予防の各論として、
糖尿病の患者さんの場合を考えます。
糖尿病の患者さんで、
特にその血糖のコントロールの悪い方では、
熱中症の危険性が高くなることは、
皆さんもご納得が行くかと思います。
糖尿病はインスリンの量が少ないか、
もしくはインスリンの効きが悪くなる何らかの原因があるために、
血液の中のブドウ糖が細胞で利用されずに、
血液中で上昇し、
そのために多くの身体の不調が現われる病気です。
血液に溜まった過剰の糖分は、
おしっこから排泄されることになるのですが、
その時に水分が同時に排泄されるために、
おしっこの量は増え、
身体は脱水に傾きます。
つまり、血糖値のコントロールの悪い糖尿病の患者さんは、
常に脱水状態にあるので、
そうした方が高温多湿の環境に置かれれば、
脱水は更に進行して、
熱中症の引き金になるのです。
昨日の心不全のケースもそうですが、
脱水傾向がある方は、
熱を身体から逃がすための汗を掻くことが充分に出来ず、
体温調節の「のりしろ」が少ないので、
それだけ短期間で簡単に熱中症に移行し易いのです。
従って、糖尿病の患者さんが、
高温多湿の環境でお仕事をされるような場合には、
より頻繁に水分補給が必要となります。
ただ、ここでちょっと問題があります。
汗を掻けば水分と同時に塩分も喪失します。
従って、通常熱中症の予防のためには、
ポカリスエットのようなイオン飲料が、
そのために使用されます。
しかし、こうした飲料には、
結構多い量の糖分が、
添加されています。
身体が消耗した時にはブドウ糖の補給も必要なので、
これは通常のケースでは合理的なことなのですが、
糖尿病の患者さんでは、
体調の悪化時にはストレスホルモンの上昇などから、
むしろ血液の糖分は普段より上がっていることが多いので、
糖分を補充すると血糖が更に上昇し、
それがおしっこの水分を増やすので、
更に脱水が進行する、
という悪循環になる可能性が高いのです。
従って、極軽症の方以外の糖尿病の患者さんでは、
高温多湿環境時の熱中症予防には、
糖質を含まないノンカロリーの飲料が望ましいのです。
しかし、問題はそんなものがあるのか、
ということです。
ただの塩水では飲料としては適しません。
そうすると、次善の策としては、
水やお茶などの水分補給と共に、
塩気のものを別個に補充する、
ということになります。
塩飴と称するものがありますが、
僕の見た範囲では、水飴が元なので、
糖質も含まれていて、
あまりこうした場合に適したものではありません。
梅干を乾燥させたような食品があり、
塩分は豊富ですが、カロリーは極めて低いので、
僕の見た範囲ではそれが一番、
こうした用途には適しているかな、と思いました。
それでは今日のまとめです。
糖尿病で治療中の患者さんは、
熱中症のリスクが高いと考えられ、
特に血糖コントロールが良くない状態では、
高温多湿時の作業や運動は、
極力控えるのが望ましいと思われます。
止むを得ずそうした状況になった場合には、
糖尿病でない方より、
水分の補充はより頻繁に行なう必要があります。
この場合、ポカリなどのカロリーのあるイオン飲料は、
あまり適してはいないので、
基本的には水やお茶などのノンカロリーの飲料を使用し、
塩分の補充は別個に乾燥梅干などを活用するのが、
合理的と考えられます。
勿論他の塩分主体でカロリーの少ない食品でも構いません。
高温多湿化の環境で慣れない人が作業をするような場合、
1時間で2から4グラム程度の塩分が喪失すると考えると、
その半量の1グラム程度を、
作業中に補充しておけば、
問題はないものと考えられます。
ただ、糖尿病の患者さんは脱水に移行し易いので、
750ml 程度の水分は、
同時に補充するのがその条件となります。
昔の仕事の合間にお茶と漬物を一緒に取る習慣は、
その意味で合理的なものであった訳です。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2010-08-07 08:15
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今日もガンガンに暑いですね。
私は、今日と明日の2連休です。
先生も、奥様は病院に任せてゆっくり休んでくださいね。
身体が資本ですから・・・
by yuuri37 (2010-08-07 10:54)
お茶と漬物ですか・・・昔からある「おばあちゃんの知恵袋」的なものは、侮れないということですね。
今はスポーツドリンクなどでもカロリーオフのものもいろいろ出ているので、買う時は成分表をチェックしてから買うようにしています。
先生も、奥さまもくれぐれもお気をつけて!
by まみしゃん (2010-08-07 11:01)
熱中症。・・・所さんの目が点で、本日放送していました。
でも、数日前に、夕方に農作業をしていて、熱中症になり、所さん御自身もが搬送されたと言うニュースが流れていました。
夕方になってからも、放射熱で、熱中症になると言う事に、驚きを感じました。
トマトジュース等も、カロリーが低く、塩分が入っているので、案外と緊急の際は、良いのかも知れませんね。 夏の散歩などには、携帯しやすいので、持ち歩こうかとも思いました。
昔、祖母の家では、お茶と言うと、必ず漬物が出たのは、農作業の後の知恵・・・の名残だったのかも知れませんね。
奥様のお早い回復を、お祈りしております。
by みぃ (2010-08-07 23:10)
残暑お見舞い申し上げます!暦の上では秋になりました。
残暑?いや猛暑が続きそうですが 奥様の早いご回復をお祈りしております。
by ゆうのすけ (2010-08-08 00:02)
yuuri37 さんへ
昨日は暴飲暴食して、
ちょっと今日は調子が悪いのです。
どうも、色々とうまく行きません。
yuuri さんは良いお休みをして下さい。
by fujiki (2010-08-08 09:50)
まみしゃんさんへ
コメントありがとうございます。
夏バテ気味ですが、
何とか踏ん張ります。
by fujiki (2010-08-08 09:51)
みぃさんへ
コメントありがとうございます。
お気遣いありがとうございます。
トマトジュースはカリウムが多いので、
その点は1つの問題にはなるかと思います。
ただ、ご病気のない方では、
勿論問題はありません。
by fujiki (2010-08-08 09:53)
ゆうのすけさんへ
コメントありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
by fujiki (2010-08-08 09:54)